【2部まで完結!】使い捨てっ子世にはばかる!?~妹が最強の魔王になるかもしれない~

うろたんけ

文字の大きさ
6 / 117
第一部 無駄な魔力と使い捨て魔法使い

「それよりちょっとダンジョン壊してくる」

しおりを挟む
翌朝。

夜が明ける頃に勇者様は家を訪ねてきました。

私たちは起きて顔を洗い、荷物の準備も済ませています。

兄は
「ソイル、お兄ちゃんに任せて。安心して待っててね」

と、とても真面目な顔で言っています。

私はそんな兄に少し申し訳無さを感じながらも意を決して声を出しました。

「ゆ、ゆうしゃ、さま。わた、私も連れて、ください」

なんとか絞り出した声は勇者様に届いたんでしょうか、それ以上は声を出せず、俯いてしまいました。

なんだか体が震えます。

顔をあげるのが怖いです。

どうか勇者様聞き入れてください。

兄もきっとたくさん驚いて、もしかしたら怒っているかもしれません。

ですがそんな兄より先に答えたのは勇者様でした。


「ん?もとよりそのつもりだよ」

「ど、どういうことですか!」

勇者様の答えに「よかった」そう思うよりも先にすごい声の兄が勇者様に食ってかかりました。

ハッと顔をあげると今にも掴みかかりそうです。

「俺は妹を助けるためなら何でもすると言いました!

それは妹を助けるためだ!多分勇者様の旅は多忙なだけじゃなく危険も伴うはずです。

そんな場所に妹も初めから連れていくつもりだった?そんなのだめに決まってます!」
   
声を荒げる兄に勇者様は困ったように頬を掻いています。

「でもソイルちゃんが体調崩したときに助けられるのは僕だけだよ?」

ごもっともな意見に私は大賛成ですが、兄は引き下がりません。

「ぅ、そ、それはそうですが、でも旅は危険では?」

「うーん、自分で言うのも何だけど世界最強の一角、赤塔の勇者である僕のそばより安全なところはないと思うけどなぁ」

勇者というのは世界最強の称号ですから、確かに説得力はあります。

「で、でも。相手が百人の盗賊だったとしたら勇者様といえど妹を守りながら戦うなんて難しいのでは」

 うっ、その状況はさすがに危なそうです。ってそんな大盗賊と対峙するんですか?もはや苦し紛れの反論になってきている気がします。

「うーん、それを言っちゃうとこの町にいても魔物とかに襲われるかもしれないよ。

かもしれないを膨らませてもいいことなんてないと思うな」


屁理屈になってきた兄にたしなめるように答えました。

勇者様が大人でよかったです。

兄が怒られるかもしれない、そのことだけが心配でしたから。

そして当たり前のことのように付け足します。

「ま、百人程度の盗賊に後れを取るなんてことは有りえないけどね。

僕といい勝負をしたきゃ同じ勇者三人くらいつれてこなきゃ」


勇者様三人分の力?!その言葉にある、謎の迫力に兄も負けたようです。

勇者様のおかげで兄と一緒にいられます。

ということで村長にも挨拶を済ませ、村を離れて道を歩いています。

少しのあいだは徒歩での移動のようです。
と言っても二日もあれば町にはつくから大丈夫だよと言っていました。

兄は私を心配して二日も野宿は危険だと騒いでいましたが。

そして村を出てすぐ勇者様は向かうところがあると言って道をそれて森に入っていきました。

いきなり冒険が始まりそうな雰囲気に私は内心ドキドキです。

「勇者様、俺だけならともかくソイルもいるのにいきなり森だなんて危険です!」

「この先のダンジョンに用があってね。実は僕勇者だから世界平和のためにしなきゃいけないこともあるんだ」

ダンジョンに行って何をするんでしょう?

ギャーギャー騒ぐ兄の横で私は大人しく歩きます。

ところで会話ですが、さっきはなんとか声を絞り出しましたがやっぱりあんまり知らない人が近くにいると声が出ません。

そんな私の思考を読み取ったかのように勇者様はときどきこちらを向いて答えてくれます。

「ダンジョンは危険だからね。乱立しているとはいえ僕たち勇者や冒険者はダンジョンを破壊するのも仕事の内なんだよ」

なるほど、だからダンジョンにいくんですね。そしてそのダンジョンは恐らく身投げの穴と呼ばれているダンジョンです。

なんでも入口から少し歩くと大穴があって、どこまで続いているかもわからないほど深い穴だそうです。

落ちればまず死んでしまうからついた名前が「身投げの穴」。

想像するだけで足がすくみますね。

村長さんが以前言っていましたが、死ぬために飛び降りてしまう人もいるから、毎年行方不明者が出て困るって言っていたような気がします。

しかしどうしてダンジョンを破壊することが世界平和につながるんでしょうか?

強い人のことはわかりません。

兄はそんなところは気にしていないようで、ダンジョンという響きに張り切っています。

まさか、ダンジョンに潜るつもりでしょうか?

兄は少し丈夫な服と手足の防具、そしてマントを纏い、腰に剣術で使う兄用に作られた少しこぶりなロングソードを持った、旅を始めた男の子のような格好なんですけど。

もちろん私も兄と似たような格好なので初心者丸出しの格好に少し恥ずかしいところではあります。

私は当然ダンジョンの前とかで待つものかと思っていましたが、実際のところどうなんでしょうか。

「心配かい?」

気遣ってくれているのか、心を読んでいるのかわかりませんが勇者様がまた私の気持ちを見透かしたように声をかけてくれます。

どうにか頷くと、足を止め何やら考え込んでいます。

「ロット!」

森から何が飛び出してきてもやっつけるぞと意気込んでいた兄に何かを投げました。

え、剣!しかも抜身ですよ!?

「わっ!!……短剣、ですか?」

兄も驚いたようですがなんとか持ち手をキャッチしました。ナイスプレー!

そしてその後勇者様から短剣をしまうホルダーのようなものを渡されます。ん?ホルダーあるならそれにしまって渡しましょうよ!

しかし兄はそんなことには気づいていないようで、渡された短剣をまじまじと眺めていました。

兄の手にはちょうど良く、とても似合っています。

特に刃の部分に埋め込まれている宝石のようなものがとてもきれいです。

「それあげるよ」

それだけいうとまた歩みを始めました。
全く悪気なさそうなところが質悪いですね。

仕方なく私も兄もそれに続く形で歩き出しました。
兄は私に近寄るとこっそりと言います。

「ソイル、お兄ちゃんには剣があるからとりあえずこれは護身用として持っててくれ。勇者様には内緒だよ」

勇者様に少し悪い気はしましたが、普段危ないからと武器を持たせてもらえない私はなんだかドキドキして、大事に懐にしまい込んでしまいました。


それが後に後悔することとは知らず。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

処理中です...