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第二部 最大級の使い捨てパンチ
「ケイトの胸の大きさは?」
しおりを挟む「え? 嘘なの?」
ケイトの発言を受けてロットは信じられないような顔でパンチを見つめた。
パンチはその視線に少し動揺しながらも、力強く言い返す。
「嘘じゃねえ! 俺は馬鹿だし、考えなしだが、嘘だけはつかねえ!」
その瞳は真剣そのものだ。嘘をつくような男には見えない。必死さが滲み出ていた。そもそも嘘をつける人間が自分より幅の狭い木に隠れようとしないだろう。
「そうだよ。それにもし本当にルミナリアさんって人が魔力種なら、助けてあげなくちゃ」
ロットは元来田舎育ちであまり人を疑うことをしていない。なので目の前のパンチを信じたいと思っていた。ケイトもその気持はわかるし、嘘をついているようには見えなかったがやはり冒険者をやっている身としては慎重にならざるを得ない。
「そうねぇ、でも信頼に足る何かがあればいいんだけど……」
その言葉にエレナが閃いたようにニヤリと笑い、皆の注目を集めた。大抵その思いつきはよいものではないことが多い。
「パンチ君!」
「ん、なんだ?」
パンチはエレナの突然の宣言に戸惑いながらも、彼女の目を見つめた。今から何が始まるのか、身構えるように待つ。
「今から質問するので、嘘偽りなく正直に答えてくださいっす。もし嘘だとわかれば、この話はなかったことにして、次の街では衛兵に突き出すっすよ!」
質問で嘘かどうか見抜けると言うエレナにケイトは疑いの目を向けるがひとまず黙って成り行きを見守る。しかし、ロットはこの状況に嫌な予感を覚えた。エレナが考えた策は、以前自分がイタズラに嵌められてケイトにこってり怒られたときのことを思い出されてとても不安にさせる。
そんなロットをよそにエレナは自信満々に話し出す。それでは問題です。と人差し指を立てた。そしてそのままあるものを指差す。
「では、姐さんのお胸の大きさは?」
あるものとはケイトの胸部のことだが、エレナの質問と指が放たれた瞬間、場が凍りついた。パンチがゆっくりとケイトを見やる。
「はっ? エレナ何いってんのよ!」
ケイトは慌てて胸をさっと隠す。咄嗟に胸の話をされて頬を染めているがキッとエレナを睨みつけた。
ロットは意識してしまい一人で赤面して、その後の展開を予想してすぐに青ざめた。
「さあ、答えるっすよ、パンチ君。ただ、嘘だけは許さないっすからね」
エレナはニヤッといやらしい笑みを浮かべる。まるで、餌を前にした悪戯好きの猫のように。エレナの計算外としては、その質問に対する矛先がパンチにのみむくという謎の考えを持っていたことだった。
しかし当然そんな質問を考えたモノを普通は咎めるもので
「ほぉ、どう答えるか楽しみね。そしてエレナ、あなたも覚悟なさいよ」
ケイトは怒りに燃えた拳を握りしめ、今にもエレナに飛びかかりそうな勢いでそう言った。
「ひっ、マズったっす。浅はかだったっす。」
エレナは冷や汗が吹き出るのを感じ、焦り始め、必死でパンチが答えを言おうとするのを止めようとするが、すでに遅かった。
「お、大きさは……な、ない……」
パンチがボソリと答えた。その言葉は、まるで鎌を持った死神の一撃のように場を凍りつかせた。現実、ケイトはよく言えばスリムな体型をしており、悪く言えば、胸は成長の兆しが見られない平らな状態だったのだ?
ロットはあまりに正直な答えに思わず口元を押さえた。笑いが漏れそうになるの我慢していたのだが「っふ……」しかし、結局耐えきれず、笑いが少し漏れてしまう。
「ほぉ。ない。ないと言ったわね?」
「いや。すこしは、あの」
凄まじい形相のケイト唸るような声で言う。パンチは自身が発言したことによって踏み抜いた虎の尾はあまりにも凶悪であることを悟り目の前がチカチカし始める。
パンチにとっては幸運なことに、ロットにとっては不幸なことにその矛先は次にロットへも向けられた。
「そしてロット、あなたも笑ったわね?」
「ち、違う、誤解だよ、俺はちょっとむせただけで!」
ロットは慌てて言い訳をするが、ケイトの怒りが収まる様子はなかった。その間にエレナは徐々に後退し、距離を取ろうとする。気がつけばエレナはケイトからすでに数メートル遠ざかっていた。そして逃げられると確信を持った距離になってようやく話し出す。
「ふぅ、パンチ君。あたしの負けっす。あんたは超が付くほどの正直者っす」
それだけ言い残し、エレナはケイトの怒りから逃れるように猛ダッシュで走り去った。
「待てごらぁエレナぁぁぁあ!」
もちろんケイトはすごい勢いで彼女を追いかける。ロットは自身とパンチはどうにか難を逃れたことを確信し、冷静にパンチに向き直る。そして手際よく縄を解き始めた。
「パンチさん、とりあえずこの縄、解きますね。」
「お、おう、助かった」
時折魔法の破裂音のようなものが森に響き渡りながらパンチは呆気に取られた様子で、縄から解放された手を見つめた。
「ケイトが落ち着くまで、俺たちは隠れてましょう。エレナが悪いんですから」
ロットは安堵の表情でそう言うと、パンチを連れてケイトの怒りが収まるまで待つことにした。
「さ、さんきゅな」
パンチもロットの提案に従い、エレナが一人でケイトの矛先を引き受けていることに内心ほっとしていた。しばらくして、エレナをとっ捕まえたケイトが怒り心頭で戻ってきたが、彼女の怒りが鎮まるには、まだしばらく時間がかかりそうだった。
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