74 / 117
第二部 最大級の使い捨てパンチ
「奴隷商人に売っちゃった」
しおりを挟む結局山賊の中で奴隷商人に誑かされた三人が人攫いに手を染めてし待ったということだった。三人は腫れた頬や頭のコブが痛々しい。しかしレナの眼光は鋭く、ひたすらに土下座をしていた。
「というわけで、ルミナリアとかいう女は、うちのバカどもが売り飛ばしちまったらしい。そのときの代金はしっかりここにあるから、返してもらいに行くぞ。
もちろん、あたしも一緒に行って事情を説明する。まあ、心配するなって」
「って、言ってるけど?」
ケイトは、視線を倒れたままのパンチに向け、彼の反応を伺った。パンチは、まだ疲れた様子で大の字に寝転がりながらも、しっかりとした声で応えた。
「まあ、お嬢を助けられるなら、それでいいさ。でも奴隷商だなんて、厄介な相手に売られちまったな」
「そんなにヤバいの?」
何も知らないロットが聞くと、パンチはようやく体を起こし、説明を始める。
「ああ、奴はここらじゃヤバい連中と繋がってるって噂だ。だから、簡単に片付く話じゃないかもしれないぜ」
レナは、そんな彼らのやり取りを聞きながら、腕を組んで同意を示す。
「あたいも今回は馬鹿どもの尻拭いで行くけど、普通なら関わるのもゴメンだね」
彼女の口調には、先ほどの怒りはすっかり消えている。しかしパンチもレナも関わりにはなりたくない相手であることがわかり、ケイトにも不安が募っていた。
「そんな相手が、すんなり返してくれるのかしら?」
「なあに、心配すんなって。あたいと互角の嬢ちゃんの魔法がありゃ、大抵なんとかなるもんさ!」
その言葉にケイトはムッとした表情を浮かべ、フンッと鼻を鳴らして向こうを向いた。
「私はケイトよ。それに、あんなのまだまだウォーミングアップだったんだからね!」
ケイトの少し拗ねた様子に、レナは冗談だと決めつけて笑い声を上げた。ケイトの言葉は真実だったが、その実力を知らない者にとっては年の割に魔法が得意な女の子程度にしか映っていない。
「はいはい、頼もしいね!ところであんたたち、名前はなんだい?あたいはレナでいいよ」
ロットが代表して紹介することにした。
「俺はロット、こっちのエルフがエレナ、そして大きいのがパンチだよ」
レナはエレナを見つめ、少し驚いた様子で微笑んだ。
「へぇ!エルフなんて初めて見たよ。可愛いじゃないか!」
彼女は興味津々でエレナをまじまじと眺めたが、エレナはその視線を全く気にする様子もなく、堂々と胸を張って答えた。
「まあ、それほどでもあるっすね」
「謙遜しないのもあたいは好きだねぇ」
互いの名を知った5人は奴隷商人のもとへ向かった。他の山賊は頭であるレナの帰りを待つらしい。これ以上問題を起こさないようにと念押しされていた。
レナを先頭に、パンチたちは街の石畳の道を歩いていた。日が傾きかけた夕方の街並みは、活気を帯びつつもどこか陰を帯びていた。レナの背中を追いながら、パンチは不満げに呟く。
「けっ、どうでもいいが、なんで奴隷商に会いに行くのに武器屋なんだよ?」
彼がそう言うのも無理はない。レナが足を止めたのは、まったく普通の武器屋だった。小さく、外見もどこにでもあるような店で、とても奴隷を売っているとは思えない。
「まあいいから、あんたたちはあたいの後ろについてきな」
レナは軽く手を振りながら、そう言って店の中へ入っていく。ロットたちは顔を見合わせ、彼女の後を追った。店内に入ると、年季の入った棚に剣や盾が並び、店主らしき人の良さそうな中年男性が立っていた。
「いらっしゃいませ!」
店主は朗らかに挨拶をし、商売人らしい笑顔を浮かべる。レナは店内を軽く見渡した後、何気なく尋ねた。
「盾を見せてほしいんだが」
その瞬間、ロットは思わず口を挟んだ。
「ちょ、なに言ってるの?」
彼の疑問はもっともで、武器屋の店内にいるのに奴隷商人の話なんて出るはずがない。店主も少し困惑した様子で返事をした。
「ここは武器屋ですが……?」
ロットは、やっぱり違うじゃないかと、顔を赤くして恥ずかしそうにしていた。しかし、レナは平然とした表情で謝罪し、さらに別の質問を投げかけた。
「じゃあ、盾を貫く矛はある?」
その言葉に、店主の朗らかな表情が一瞬で変わった。目が鋭くなり、店内の雰囲気が一変する。
「素材は?」
店主の問いに、レナは間髪入れずに答えた。
「スライムの牙」
その言葉を聞くと、店主はにやりと悪い笑みを浮かべ、カウンターを開いて奥へと通じる扉を示した。
「どうぞ、こちらへ」
パンチは戸惑い、思わず声を上げた。
「お、おい、どういうことだよ?」
ケイトが冷静に答えた。
「合言葉よ。闇市とかでもよく使われる手法ね」
レナは満足げに頷き、ケイトに答える。
「そのとおり。んで、この地下をくぐれば奴隷市さ」
レナに従い、一行は暗い階段を降りていった。階段の先には、まるで異世界のような地下の部屋が広がっていた。
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!
たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。
新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。
※※※※※
1億年の試練。
そして、神をもしのぐ力。
それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。
すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。
だが、もはや生きることに飽きていた。
『違う選択肢もあるぞ?』
創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、
その“策略”にまんまと引っかかる。
――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。
確かに神は嘘をついていない。
けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!!
そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、
神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。
記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。
それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。
だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。
くどいようだが、俺の望みはスローライフ。
……のはずだったのに。
呪いのような“女難の相”が炸裂し、
気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。
どうしてこうなった!?
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる