転生鍛治師の再起〜武器で世界を乗り越える〜

南雲オウタロウ

文字の大きさ
5 / 11
第一章 おわってはじまる

第四話 「主人公交代?」

しおりを挟む

 10日後、俺はイーリッチ村の付近にある森に来ていた。
 何をしにきたのかというと、俺が初めて作った武器の試し斬りだ。

 俺はラバンに武器作りの基礎を教えてもらって、ショートソードを作ってみた。
 ラバンの言う通り、せっかく神様から能力もらったし、一回製造してみようっていう気持ちになったのだ。
 ラバンは俺が教えてほしいと頼むと心底嬉しそうな顔をしていた。その顔をちょっとだけ殴りたくなった俺は、もうちょっと気を楽にして生活した方がいいのかもしれない。

 武器を作るには相当苦労するものだと思ったが、あまり苦ではなかった。作業工程は難しいが、逆に少し楽しさを感じたような気がした。

 俺が初めて作ったにしてはまあまあな出来だと、ラバンは褒めてくれた。
 なんでも、武器に能力が付与されていたらしい。それは珍しいことで、ラバンが作っても付与されることは滅多にないとのこと。
 俺のスキル、武器生成技術B-と能力付与E+が補正してくれたおかげだろうが。
 鍛冶師として不覚にも優れているのかな。

 この武器能力を使ってみたいが為に、森へとわざわざ出向いていたのだ。

 俺は少し開けた場所に出ると、ショートソードを 異次元武器庫 から取り出すイメージを描いた。
 すると、約1秒で俺の右手に剣が微少な光を纏って出現した。

「手ぶらで移動できるのは便利だよなぁ」

 割とこの能力はゲームみたいなストレージに似ている。ランクはまだDなので、小さめの物置ほどの広さだ。
 凡人にとってはこのスキルはチートスキルだと思う。今は最大3本まで同時に取り出すことができる。でも俺が求めていたチートの方向性が違うよな。

 それはさておき、さっそく使ってみるか。
 この剣には 風刃 という武器能力がある。名前の通りならば、風を刃にして前方に飛ばせることができるが…!

「ふっ…!」

 俺は剣を思いっきり斜めに振った。その瞬間、剣の刃が薄い緑色に光り、目の前の木に風刃が繰り出された。 ……ものすごく弱めの。

「…思ったより威力無さすぎないか?木の表面が少し削れただけかよ。これなら直接剣で斬りつけたほうがいいじゃん」

 武器能力付与E+ならこんなものなのか。これなら俺もワンチャンあると期待してた俺がバカだったかもな。
 EからSまで上り詰めるにはどれだけ鍛錬すれば良いのだろうか。きっと膨大な労力と時間がいる。
 何回か振ってみたが、武器能力の上限はないらしい。ただ武器が壊れるまで能力は働き続けるようだ。

 俺は剣を気づけば1時間ほど振り続けていた。流石に疲れたな、試し斬りはここまでにしよう。

 「あなた、こんなところで何やってるの?」

 俺が立ち去ろうとした時、不意に後ろから声がかけられた。

「えっと…、ヨナ?」

「ユナよ!!もう3回目でしょ!?いい加減覚えなさいよ!!それともわざとなの?」

 …ああ、そうだった。
 こいつは村の村長の娘のユナ・ラムレイ、神授の儀式で俺の前にいたやつだ。
 美しい紅色で染まった艶やかな髪、切れ長で大きな紫紺の瞳、まだ幼いのに凛々しさを感じさせる顔立ち、将来は絶対美人になると思わせる美少女だ。
 ただ…

「ユナこそ何で森に…」

「何で鍛治師見習いなのに剣なんて振ってるの?剣術の練習なんてしても無駄よ!どうせあたしの方が才能あるんだからその剣寄越しなさい!!」

 態度がとてもデカい。なんだこのガキ、素直に貸してって頼めねえのか。質問にも答えなさい。

 そういえば、俺が鍛治師になるかもって言ったとき、俺を一気に下に見るようになったっけ。

「ただ自分の作った武器を試しに使ってただけだよ、練習してなんかしちゃいない。剣が欲しいなら自分のお小遣いから引っ張り出して買うんだな」

「え~?いいじゃない!いっぱい作れるんでしょ?だったら一本くらいくれたって問題ないわ!」

「問題ある。材料はそんなにたくさんは用意されてないんだよ、俺みたいな駆け出しが思う存分鍛錬できる量の鉄はこの村にはない。」

「ラバンのおじさんに作ってもらえばいいじゃない」

「お前じゃ使えないと思うぞ」

 ラバンが持つ武器生成技術の熟練度はA+。扱うには、武術系スキルのA相当は欲しいところだ。

 「そもそもユナは魔術師向きじゃないか、剣より杖じゃないか?」

「剣術もできればカッコイイじゃない!!」

 そんな理由かよ。まあわからんでもない、俺もちょっと前までは魔法剣士にも憧れてたわけだし。

 「でも、いいのか?ユナ。お前16歳になったら王国の魔法学園に入学する気なんだろ?魔法の稽古なんて怠ってたら…」

「大丈夫よ、あたしを誰だと思ってるの?森に来たのは魔法の威力の確認、正真正銘の天才、ユナ・ラムレイよ?もうこのくらいには成長できたわ!!」

 彼女は手を俺が斬りつけた木に向かって手を突き出し、

『ファイアボール』

と言って手のひらに球体の炎を生成した。

「おい!流石に魔法だからって森に火は…」

 魔法の成分は基本的に実物とは違うので、燃え広がることはないだろうが…

 火属性初級魔法 ファイアボール

 それは、異世界に大抵存在するテンプレ魔法。なのだが、
 そのファイアボールらしきものは キュィイイイイン という音と共に高速で放たれ、目の前の木々を豪快にバキバキに焼き払った。


「どう?エバン!?私ほんとうに天才かもしれないわ!!」

 …うん、いや紛れもなく天才だよ。

 あれ?初級魔法だよね?ファイアボールって確かに言ってたよな?威力が明らかに知ってるものと違う。


主人公は俺ではなく、目の前に自慢げに佇む彼女なのかもしれない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...