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チュートリアル①
しおりを挟むそこには『GOAL』と書いた旗を掲げた…誘導係のお姉さんが呆れ顔でこちらを見つめていた。
「コホン!!謹んで王女様と優也様に申し上げます…
その…大変仲が宜しいのは私もジュエラ国民として喜ばしい限りなのですが…
今は競技中なので…その…誘導係の私の指示に従って頂きたく…」
「あ…す、すいません!!」
「コホン!!私としたことが…じゃ、じゃあ後でね…ダーリン!!」
「う…うん…」
ワハハハハハハ……
その様子を一部始終観ていたスタンド席から笑いが起こる。
「ハァ……」
両の眼に右手を当てて項垂れる年配の男性と微笑みながら彼の背中に手を当てる上品そうな女性…
「あなた…良いではありませんか…フフ…」
「じゃが…シルヴァよ…
代理とは言えど現在のジュエラの国王はティナじゃぞ。
国民に笑われるとは…もっと威厳を持ってじゃな…」
「あら…『王女はこうあるべき』という私達の固定観念を破って…
本当はどう生きるべきなのか教えてくれたのはあの二人なんじゃありませんの……?」
「じいじ—!!」
「ばあばー!!」
「おお…リルくん!!」
「ミスちゃん!!」
「パパとママはね…うちのなかでもずっとああなんだよ…まったく…」
「バカね…あんた…いーい?
じんせいでパパとママみたいにこころからあいしあえるひとにめぐりあえるってことはほんとうにしあわせなことなのよ…」
「ワハハハ…そうじゃった!!
ミスちゃんの言うとおりじゃわい!!
ワシもシルヴァに巡り逢えたおかげで今があるしのう!!」
「あなた…」
そう…この二人こそティナのご両親…
ジュエラ王国の前国王夫妻…
『泣く子も黙る…ゴルド大魔王様』と
『魔界屈指の高僧…シルヴァ皇后様』…
…つまり、僕のお義父さんとお義母さんである。
今はこうして孫のミスとリルを可愛がってくださり、僕やティナの事を常々気にかけてくださる…正に『恩人』と呼ぶべき方々であるが…
お二人との出会いはそりゃ…もう…僕の人生の中でも二度と味わいたくない恐ろしい場面…
何故、魔界の王女のティナと僕が巡り逢えたのかというと…
実はお義父さん達は一人娘のティナに魔界の実力者の息子を婿に迎えて、自分達の跡を継がせようとしておられた…
しかし…
『自分の結婚相手は自分で決めます!!
私の人生はお父様達のものではありませんわ!!」
こうして魔界を飛び出したティナは人間界へと迷い込み…行くあても無くトボトボと歩いていたのだか…遂には雨の中倒れてしまった。
そこに会社帰りの僕が通りがかったのだった…
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