奥様は魔王女 4th season 〜fly me to the moonな件〜

平穏な毎日

「お…美味しいですわ…」

「うん！！香ばしくて丁度良いです…

また次のうどんが食べたくなりますね。」


「あはは…ゆっくり味わってね…

ささやかだけど…僕からのお礼だから・・・・・・・・・…」


「……⁉︎」

「……⁉︎」


優也の言葉に箸を止める二人…


「ゆ、優也様……」

「私達のこと…気付いておられたのですか…⁉︎」


「何となく…ね…

あっ…でもサブリナさんとマーブルさんだって分かったのはついさっきだよ…」




「あの女性……」

「魔界の者なのですか……⁉︎」



「そうみたいだ…ね…」

優也は一瞬宙を眺めて…悲しそうな表情をしたが…

両手の中にある丼を見直して残りのうどんをすすった…」


……ズルズルズルズル……



ガタタッ！！！


「ゆ、優也様…そうみたいって…⁉︎」

「し、失礼ですが…それはあまりにも悠長なお考えではありませんか…⁉︎」



二人は凄い剣幕で優也に迫るが……


「あははは…そうかな……でも…」


優也は丼を両手で持ち…うどんの汁つゆを飲み干した。


「ああ…美味かった…


お二人の言わんとされてることは分かります…

確かに…僕の妻は魔界の王女…


その夫で…

非力な人間の僕なんか狙われて当然だと思います。


でも…

魔界の人々に昔の人間の行いを許してもらわないと…いつまで経っても二つの種族は理解わかり合えない…


それには警戒心を捨てないと…


信じてもらいたいのに相手を信じないなんて本末転倒でしょ…⁉︎


それにどんな手を使って僕に近づいて来ようとも…

僕は愛する妻をでティナを…子供達を…

そして…仲間を信じているから…


ただ…この…平穏な毎日が…


それがあるだけで僕は幸せだから……


………あれ…⁉︎」



目の前のサブリナとマーブルは今にも溢れ落ちそうな大粒の涙を浮かべて優也を真っ直ぐ見つめていた。


「グスッ…

ああ…優也様…

プラティナ王女様を愛する…その一点の曇りもない御心…

各国の王女様や生きる伝説と呼ばれる方々がお認めになるのも分かりますわ…」


「こんな素敵な殿方を狙うなどと不届千万でございますわ…

私達が絶対に手出しなどさせませんわよ…」





……じーっ！！！


マーブルの顔を横目で見つめるサブリナ……



「な、何ですの……」



「オバさん……どの口が言ってんの…⁉︎

最初のうちは事もあろうに…

恐れ多くも優也様にスキャンダルを狙って近づいた輩が…」


「わ、私は……その……

…弟…！！

そ、そうですわ…あの時は…弟の居場所がどうしても知りたくて…

優也様とお近づきになれたなら王女様も弟の捜索に一肌脱いでくださるかと……


いいえ…そんな事より……


あなたはこんなに私達のことを大切に思ってくださる殿方を命をかけてでも護まもろうとは思いませんの…⁉︎」


「あ…あなたに言われるまでも無いわよ！！

私はね、優也様をそっと陰かげからお護りするのが使命だと思ってるんだから…

オバサンに指図されたからじゃないわよ！！」


「あら…奇遇だわ…

私も全く同じ気持ちなの…

じゃあ…どちらが優也様に相応しいか…

勝負だわね…」


「の、望むところよ！！

魔界探偵のプライドにかけて！！

そこらのオバサンに負けるもんですか！！」



「あの……」


優也が口を挟もうとした瞬間、二人の魔女は急にうっとりとした表情を見せて…


「優也様…大丈夫ですわ…

このマーブルが全力でお護りします…」


「いいえ…プラティナ様と貴方様に一生お仕えする所存でございます。

このサブリナにドーンと…」


「お二人とも…」


「は…はい…何でしょう…⁉︎」


ハモった二人に優也はニッコリと笑いながら…





「うどん…のびちゃいますよ…」



「あ…！！！」




…ズルズルズルズル………