上 下
23 / 55

赤い残像

しおりを挟む

「チッ!!」

舌打ちをしたネザーはサブリナから目を離さずに運転席へと駆け出す…


サブリナに背を向けた状態の弓は勢いよくスライドドアを閉め…助手席へ…



「逃すかぁ!!」


サブリナ達は自分達に近い弓へと襲いかかった。


弓が素早く助手席のドアを開けるのが先か…

二人が彼女を取り押さえるのが先か…



スピード勝負だと思われたこの勝負…

弓は意外な方法で切り抜けようとしてきた。



バキィィィィィィン!!!




「アァァァァ……フン!!」




何と…助手席側のサイドミラーを右手で引きちぎってサブリナ達に投げつけてきたのだ。



………シュン!!


「危ない!!」


一瞬のことにサブリナもマーブルも構えながら身を左右へとかわした…


その一瞬をついて車に乗り込もうとするネザーと弓。




……バタン!!!


ネザーが車に乗り込み…弓も助手席のドアハンドルに手をかけた。





「くそっ!!」




……シュン!!




サブリナはやぶれかぶれ気味にもう一度左手のバングルをナイフに変えて弓に投げつけた。


迫り来るナイフを何とかしなければと弓は半身をひるがえしたその時…



……ブチィィィン!!!



弓の胸のペンダントの鎖が千切れて宙に舞った…



「やぁっ!!」


バキィィィィィィン!!



右手でナイフを叩き落とした弓…


それでも彼女の表情は『しまった』というような…決して明るいものではなかった。



そんな弓に構わずネザーは猛スピードで車を発進させた…


ギャギャギャギャギャ!!!


夜の街に響くアスファルトとタイヤの擦れる音と赤いブレーキランプの残像を残してワゴン車は闇の中に消えて行ってしまった…



なす術も無く…見送る二人…




「仕方ないわね……とりあえずオジさんの介抱が先ね。

警察沙汰にならないようにしないと、私達まで根掘り葉掘り聞かれちゃうわ。」



マーブルの言葉に対して無言で弓が落として行ったペンダントを拾って見つめるサブリナ……










「ふう……何とか撒けたわね…ん⁉︎」


窓の外を見つめて、放心状態の弓にネザーは…


「ちょっと!!そんな顔しないでよ!!

帰ったら代わりのモノを見繕うから……」



彼女はバツが悪そうに車を走らせて例の湖畔のアジトへと向かった。








ワゴン車が残して行ったタイヤ痕……

その側に付着した微量の青い燐が街灯の光を反射してキラキラと輝いていた…
しおりを挟む

処理中です...