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三十八万キロメートル

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「私にも分かったわ…」

アイがマザーハーロットの方を向いてニヤリと笑った…


「とてつもない方法だけど…

先日のサブリナさんの力…そして…

この地形を見てピンと来たわ……

あの階段を降りてる時から変だなとは思ってたのよ…」



「ど、どういうこと……⁉︎」

「な、なぁ…教えてーな!!姉ちゃん!!」



混乱しているサブリナとジーナにアイは例のペンダントを取り出し…


「その前に…このペンダントを調べた結果…

思った通りだったわ……





あの二人は月の住人なのよ…」





アイの言葉に反論する者は誰も無く…



むしろ…馬鹿な仮説だと何度も自問自答し、胸の奥に押し込んできた考えを今、初めてアイが明らかにしたのであった…




「そして…こんな事が可能なのは…」


アイはナイト老師の方に向き直り…



「あなた方ですよね…

前のバビロナ神殿ごと月へと導いたのは…」




「ああ…そうじゃ…

前の神殿は平坦な土地に建っておった…


あの穴はワシら…エルフ族の力で月へと飛ばした時に出来たモノじゃよ…」




「ええっ!!」


その場に飛び上がって驚く…サブリナとジーナ。


「ちょっと待ってーな!!

あ、あそこまでどんだけあると思うとるんや!!」


「そ、そうですよ…ひーふーみぃー…」


サブリナが指を折りはじめる…



アイは腕組みをした…そして顎に指を当てる。


「私は人間界に留学していた頃に太陽系に関する勉強をしていたわ…地球の唯一の衛星である月の事もね…

人間界の距離で言うと…ざっと三十八万キロってところかしら…」



「さ、さんじゅう…」

「はちまんきろ…」


…ガクッ!!!


その場に倒れ込んだ二人……だが……




「なぁ…⁉︎それってどれくらいなの⁉︎」

「ウチもピンと来んなぁ……」


「アハハハハ……」

「アハハハハ……」




アイは溜息を吐く…


「ダメだわ……ハァ…」







チョンチョン…!!!


「えっ…⁉︎」


よく見るとケイティがアイの袖を摘んで引っ張っていた…




「お、お父様は…月という場所におられるのですの…⁉︎」



アイは今にも泣きそうな表情のケイティに…


「ケイティ…ケイティのお父様は素晴らしい頭脳を持った科学者だったと伺っているわ…

でもね…残念だけど、彼は私達…魔法使いと変わらない普通の人間だわ。

きっともうこの世にはおられないでしょう…

だけどね、ケイティ…彼はあなたをこの世に遺してくださったわ。

あなたが彼の気持ちを汲んで一生懸命に生きることでお父様の一生はとても意義のあったモノになるの…」



「ううっ……」


ケイティは我慢出来ずにアイの胸に飛び込む。


アイはそんなケイティを受け止め、彼女の栗色の綺麗な髪を繰り返し撫でてあげた。







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