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宇宙へ

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ジーニャの表情を見たアイは一瞬クールげに微笑んでから一つ溜息を吐いた…


「ジーニャさん…あなた…強いわね…

あーあ。私が一番最初に手を出したのに…

本当…釣り逃した魚は大きいわね…」


ガッカリした様子のアイにジーニャは笑って


「大丈夫ですよ…アイ王女…

私達は確かに恋のライバルかも知れませんが…

それ故に私は皆を心から素晴らしい女性だと認めています。


勿論…あなたも…」


「そうだったわね…

あなたとジーナさんならきっとこの先、どんなことがあっても真実に向き合っていけると私は思うわ…


じゃあ…最大の難問…

何故…優也くんを奪っていったのか…?


これだけはもういくら考えても推測の域を出ることは無いわ…張本人達とコンタクトを取る以外に無さそうね…」



アイの言葉に皆が頷く…



「よっしゃ!!そしたらウチらも爺ちゃんに月まで送って貰って…」



ジーナはいつもの明るくて軽い口調で右手を突き上げて飛び跳ねた…


「待って!!ジー…」




「この…バッカモンがぁぁぁ!!!」



姉のジーニャがジーナを制する前に…ナイト老師の怒りが爆発した。


ジーーーン……!!!


全員の鼓膜を突き破らんとする勢いの叱責の言葉が洞窟内に反射する…



「これだからノーテンキ娘は困るのじゃ…

良いか…お主は何の用意も無く優也を拐って行った敵の本丸に話し合いを求めるのか…?


しかも宇宙空間は酸素の無い氷点下の世界…

お前のようなヘソ出し娘が簡単に行ける所では無いわ…


ジーニャと双子なのは本当なのか…⁉︎

ワシには同じ血が流れてるとはとても思えんがのう……」



「ううっ……」



さすがの元気印も老師にはタジタジである…



「お前は何か勘違いしておるから言っておくがの……


確かに我々の種族……

エルフ族は大きな力を神から授かっておる…


しかしのう…

ここにおるマザーハーロットから懇願され…

多くの同志なかま達が一方は地上から…

もう一方は宇宙へと上ったバビロナ神殿から…


何十人…何百人が力を合わせて彼らを月へと導いたのじゃ…


それ程…宇宙へ上がるのは容易ではないぞ…



準備と覚悟が必要だということじゃ…」



「うう…爺ちゃん…すんまへん!!!」




しょげるジーナの背中にそっとジーニャは手を添えた…


「でも…本当にこれからどうしましょうか…」







……シュン!!



その時、彼女達の元に一人の人物が瞬間移動して来た…
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