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ユミルとネザー

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皆の前で先生と呼ばれた弓は顔を赤らめて恥ずかしそうに…

「ゆ、優也様…

その『輝夜 弓』という名前は私が人間界で活動する時のものですので…


こちらでは私の事を『ユミル』とお呼び頂けますでしょうか…?」


優也はニコッと笑って軽く頷いた。


「分かりました…ユミルさんですね。」


「はい……こちらは私と一緒に優也様と王妃様をお迎えにあがったネザーでございます。」


弓……いや、ユミルは隣に座っている女性を優也達に紹介した。


女性はもう一度軽く会釈した。


優也も慌てて頭を下げる…

そして改めてネザーを見た。



外側にはねた強い癖っ毛の長い髪…

中でも特徴的なのは片目が隠れてしまう程、長く伸びた前髪…



バニーガールの格好をしているからとても女性の色気を感じるが…


ユミルと比べると少し表情に幼さが残っている。


そう、二人は丁度…

ジーニャとジーナのような…





その時…ゆっくりとユミルが語り出した。




「優也様…この車は私達の故郷…

ヴァルハラへと向かっております。」



「ヴァルハラ……⁉︎」



「はい……月の都でございます。」



「月……僕達は月へ行くのですか…⁉︎

一体……何のために…」



「……誠に勝手なお願いなのは重々承知しておりますが…

優也様にどうしても御協力頂きたいことがあるのです…

貴方様でないと…ダメなのです…」


「ぼ、僕でないと…⁉︎」



そう言われて優也は困ったような顔で隣のヴァルプルギスの顔を覗きこむ…


すると…彼女はあっけらかんとした様子で、




「優也…何じゃ…その顔は…

お主にとってこのような事…

日常茶飯事では無いか…⁉︎


こやつら…お主とわらわのことを『王と王妃』と呼んでおる。

お主…仮にも王と言われておるなら…


『俺に任せておけ!!』ぐらいのことを申して皆を安心させてやらぬか…!!」



「ヴァル…また…そんな無責任な…⁉︎

僕には仕事もあるし、家庭もあるんだ…

何の用意も無しに月に向かうだなんて…」


「ウフッ…」

ユミルは自分の手の甲で口を隠しながら微笑んだ。


「お仕事の方は問題ないかと…

私が手を回しておきましたから…」



「そ、そうですか……⁉︎

で、でも…ティナが……

妻に何も言わずになんて……」



心配する優也の姿を見てユミルとネザーは不思議そうに顔を見合わせていた……



そしてユミルが少し重々しい口調で口を開いた。


「あの…優也様と…王妃様は…本当にご夫婦で在らせられないのですか…⁉︎」



「えっ…僕とヴァルが…⁉︎」


「照れぬでも良いではないか…⁉︎

あー確かに婚姻関係という体はとってはおらぬがわらわと優也は夫婦より固い絆で結ばれておるぞよ…

間違ってはおらぬじゃろ……⁉︎」


「うーん…

確かに固い絆で結ばれて…って所は嬉しいけどさ…

史上最強の魔女として…凄く尊敬しているし、女性としても魅力的だと思うけど…」



「こら、優也!!『けど』を付けるでない!!

お主とわらわは全てを超越した愛で…」



「わ、わかったよ……で、ユミルさん…

何故、僕とヴァルが夫婦だと…⁉︎」







「…失礼致しました……

実は優也様……貴方様は前世では…

我々、月の民の王だったのです…」







「ええっ!!僕が…⁉︎」









「そして……王妃様…

今生のお名前はヴァルプルギス様でしたね…」




「そうじゃ!!

わらわは史上最強の魔女…

ワルプルギスじゃ…!!」







「貴方様は…前世で…

古来からの月の女王セレーネ


アルテミス様でした…」




「ほう……わらわが女王セレーネ…⁉︎」







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