奥さまは魔王女 2nd season 〜ジーナは可愛い魔女〜

瞳の色

彼女は頰を赤らめながらもう一度まじまじと優也の顔を見る…



「あの…」

優也が声をかけると黒髪の女性はハッと我に返った。そして悲しげに目を伏せた…


「姉ちゃん…やっぱりまだあのお方を…」
ジーナも姉と同じような表情を浮かべた…



「申し遅れました…私はジーナの双子の姉…
ジーニャと申します。」


「ジーニャ…さん…」


名前までソックリだ…


僕が不思議そうにしていると彼女は「バビロナでは兄弟や姉妹に同じ名前を付けるのはそんな珍しい事ではありません…ジーナも私もジーナとジーニャ…どちらを名乗っても良いのです。

それでは皆さんにとって分かりにくいので私の事はジーニャとお呼びになってください…」と説明してくださった。


「ではジーニャさん…」

「はい…」


何故か伏し目がちな彼女だったが…僕は遠慮なく「ここは間違いなくバビロナ王朝の神殿ですよね…」

「そうです…」

「じゃあここはバビロナ王朝の王宮に当たる場所ですよね…
今しがた通ってきた城下町もそうでしたが何故この国には誰もおられないのですか？

ひょっとしてジーナが言っていた…ジュエラ王と何か関係が…」


「ナニヲシテイル…ハヤク…オイカエセ！」


その時だった…彼女の頭の中に男性の不気味な暗い声が流れた…


「ううっ！！」


声を上げて苦しそうに頭を抱えるジーニャ…
そのままその場にしゃがみ込んでしまった…


僕は彼女に駆け寄り具合を伺った…


「だ、大丈夫ですか？」


すると彼女はゆっくりと立ち上がって…


「大丈夫です…ウフフフフ…」


本当に何も無かったように笑った…
しかし…僕達はジーニャの目を見てギョッと驚いた…


落ち着いたフォレスト・グリーンの瞳がワインのよう…そう、まるで血を連想させるような赤に変わっていた…



「おや…不思議そうな表情ですね…
どうされました…？」


「い、いえ…ジーニャさんが大丈夫ならそれで良いのです…」


彼女は玉座に座り直して僕達全員の表情を眺めた…


そして口をゆっくりと開いた…


「皆様…こんな遠くまで我が妹ジーナを連れてきてくださって本当に感謝致しております。

今後は姉妹で力を合わせて王朝を再建していきます…それに運良く私達に協力すると手を上げてくださる方もおられますので…」


「ジーニャさん…先程のお話なのですが…」



「ああ…あの件でしたらご安心ください…
妹は間に受けたようですがジュエラ王というのはあの方のご冗談ですわ…私達と力を合わせてこの国を更に盛り上げてくださると仰いました。とても信頼できる方です。」

ジーニャは笑顔を見せた…


「でも…」


僕が続けると彼女は顔色を変えた…

「貴方方は恩人ですが…各国の王族の方々ですから失礼ながら申し上げます。これ以上はバビロナへの内政干渉になりますわ…

お気持ちは本当に感謝致しております。
もし褒美をと仰るのなら何なりとお申し付けください…ご用意させて頂きます。ですがこれ以上はバビロナへのお気遣いは無用です。どうぞお引き取りを…」



ジーニャの言葉に僕達は顔を見合わせた…


「姉ちゃん…」



不安そうな表情でジーナは姉を見つめていた…