上 下
82 / 103

アンタねぇ〜!!

しおりを挟む

そこは何も無い…巨大ながらんとした空間だった…

「どういう事だろう…?水が引いてこの空間が現れたのだろうか…?」

僕の疑問に愛ちゃんが応えた…

「そういう事じゃない?ほら…」

彼女は巨大な空間の向こうの端を指差した。

なるほど…緩やかだがこちら側から向こう側に向かって傾斜がついている…

そして向こう側の壁には排水溝のような二つの穴が見える…

「あの穴から水が外に…」

「そうか!…分かったわ…この丘陵の北側に山岳地帯があるでしょ…

きっとそこにこのバビロナに流れ出る母なる川…バビロナ川の源流があるのよ…

その源流へ溜まっていた水が流れ出たんだわ…」

「なるほど…流石は愛ちゃん!高校生の時、その頭の回転の速さで僕はよく勉強を教えてもらったよね…

お陰で僕は大学受験に成功して…
今の僕があるのは君のおかげだよ…」


「な、何よ…優也くん…古い話を持ち出したりして…それはあ、あなたが頑張ったからじゃないの…」


クールな愛ちゃんの照れた顔は本当に可愛いなぁ…

そんな優也の背後で


メラメラメラメラ…


ジーナの嫉妬の炎が燃え上がった…




…ワァオ!出たで出たで!地味キャラその二…

殿にくっついて何処でも来ると思ってたら…
学校の同級生やったんかい!

これはアカンで!!
アカンでしかし…!!

殿は…パッと見やのうて中身を評価してはるみたいやしな…胸はイマイチやけどスタイルは抜群やしな…
ひょっとしてコイツもプロなんか?…
何人プロがおんねん…くそっ…!



ジーナは横にあったレバーのようなものを思いっきり蹴っ飛ばした…レバーは勢いよく反対側に倒れた。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

「ま、またか…?今度は…?」

チャポン…

「チャポン…?」

よく見ると足元に水が…

空間の向こう側に視線を上げると天井からシャッターのような壁が降りてきて二つの排水溝を塞いだ。

そして…今度は床のあちこちから凄い勢いで水が湧き出してきた…



「み、みんな…階段を上るんだ…急いで!」

「きゃあ…ダーリン!」「逃げろ!ティナ…」

僕は近くにいたジーナの手を取って走り出す…

「ま、まさか…またウチが…わー!殿…すんまへん!」

「ア、アンタねぇ~!!何でもかんでも殴ったり蹴ったりするんじゃないわよ…!」

全速力で走りながら怒るプラティナ…

「すんまへ~ん!」

後に続くジーナは申し訳無さそうに叫んだ…






「はあ…はあ…はあ…」

僕達は洗礼のプールの上の踊り場まで戻ってきた…

「みんな…無事ですか?」

「な、何とか…」「わ、私も…」

その時…僕は地上の方から差し込んでくる光に
気付いた…

…何だろう…あの光は…

僕がずらした鉄板の蓋の隙間から地上へと上がると…その眩しさに僕達は目を疑った…


「こ、これは…」
しおりを挟む

処理中です...