フィギュアな彼女

奏 隼人

文字の大きさ
39 / 92

あなたの笑顔でみんなが笑顔に

しおりを挟む
次の朝、病院から連絡を貰ったジュンはミヤの病室へと向かった…

ノックしたドアの向こうから「どうぞ…」の声がした…

ドアを開けるとベッドの上にはいつものクールな表情の彼女がこちらを見つめていた…

「ミヤ…」

「コーチ…ご迷惑をかけてごめんなさい…」

「今はただ…あなたが無事で良かったわ…
でも貴方ほどの人がやるミスじゃ無い筈よ…」

「…はい…あの…コーチ!私が壁にぶつかりそうになった時、なぜリンクにマットが…?」

「アルタイルの男子部員の人が助けてくれたのよ…あなたのブレードから漏電しているのが見えて…機転を利かせてくれたみたいね…」

「そうですか…」

ミヤはミキと話していた男の子を思い出した…

「確か…前の遠征の時、道を教えてくれた子だわ…あの子が…」



その後、ミヤはメディカルチェックを受けて
異常なしと診断されたので退院する事になった。

ミヤの希望により、その足でジュンと二人でアルタイルスクールのリンクへと向かう…

彼女が第一室内リンクのシャッタードアを通り過ぎたその時…

「はっ!」

ミヤの目に飛び込んできたのは眼下に広がるリンクでとても美しいフォームでトリプルアクセルを跳ぶリカの姿だった。

…踏み切り、高さ、回転、着地と文句の付けようがない3Aだった…しかしミヤの目を惹きつけたのはリカのその表情だった…

…幸せそう…なんて嬉しそうな表情なんだろう…



「よっしゃよっしゃ…もうマグレなんて言われへんで!ウチのアドバイス聞いてから見違えるようやで!」

「はい!ありがとうございます!」

昨日の事故で協力した事もあってアルタイルチームとヴェガチームはフレンドリーな雰囲気に包まれている…ミキ以外は…

「フン…!」

彼女はそっぽを向いた。

「あっ!ミヤちゃんや!」

カオリの一言でみんなからの視線がミヤに向かって注がれる…

ミヤはリンクの側に来てそして深々と頭を下げた。


「皆さん…すみませんでしたぁ…!」




練習は再開され、準備を終えたミヤはリンクに一礼してから入った。

ふと視線を左にやると一人の男子部員が昨日自分がぶつかりかけた壁とリンクの床を掃除していた…

新設のリンクは広く邪魔になる訳では無いのだが…ミヤはその男子部員の所へ向かった。

「あの…」

「はい…?あっ!どうも…」

「昨日助けて下さったのはあなたですよね?お礼のご挨拶が遅れてすみませんでした…あの…お怪我をされたと伺いました…なんとお詫びをしたら良いか…」

申し訳無さそうに目を伏せたミヤにダイスケは

「大丈夫です。気にしないで下さい…それよりあなたはお体の具合はいかがですか?」

「私ももう大丈夫です。せっかくアルタイルに来たのだから少しでも練習したくて…今日は無理言って練習に参加させて貰いました…」

「そうですか…良かった…無理しないで頑張って下さいね!」



そう言ったダイスケの笑顔を見たミヤはホッとしたのと同時に年下とは思えないダイスケの大きな包容の器にあまり抱いたことのない感情を覚えた…

その感情が彼女らしからぬ発言を現実のものとした…




「あの…一つ教えて下さい…私はヴェガのスクール生です。事故は自分の責任で起こった事でした。あなた達アルタイルスクールには何の落ち度もない…なのに…何故あなたは私を助けて下さったのですか?自分を危険に晒してまで…」

「そうですね…僕も自分の安全を考えなかった事をコーチや皆さんに謝罪しました…ただ…」

「ただ…?」
 

「自分の夢の為に舞うあなた達が怪我してもう翔べなくなるなんて耐えられないです…
 
あなたの翔んでいるところ…あの時はあまりゆっくりと見られなかったけど…

きっとあなたの笑顔にヴェガのみんなも笑顔になるんだろうな…あなたの夢に自分の夢を重ねて…ってそう思って…

あっ!何言ってるんだろう…?ごめんなさい!練習…頑張って下さい!」

そう言うとダイスケは掃除道具を持って用具室の方に走って行った…


ミヤはダイスケの言葉に立ち尽くすばかりだった…

そして何故か…翔んでいるリカの幸せそうな笑顔が頭の中に蘇って来た…

「私のスケートで…みんなを笑顔に…」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら

瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。  タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。  しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。  剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

N -Revolution

フロイライン
ライト文芸
プロレスラーを目指す桐生珀は、何度も入門試験をクリアできず、ひょんな事からニューハーフプロレスの団体への参加を持ちかけられるが…

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...