フィギュアな彼女

奏 隼人

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私には無くて彼女が持っているもの

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白いリンクの上に明るい照明の上でミヤは演技をスタートさせた…

彼女はオベロン王から悪い企みを聞いて頷く妖精パック…そして羽根を広げて窓から森を抜けて夜の街へと飛び出して行った…

しかし…それは演出ではなかった…

城もオベロン王も森も街も…パックの背中に見える羽根さえも実際には無く会場中の人々が個々にイメージしているものであった。


白い照明のステージでミヤは衣装を着て演技をしているだけ…

アクアブルーのオーラを纏った彼女の所作、表情、立ち居振る舞いが真っ白なキャンバスに全ての観客が勝手にイメージを浮かばせているのだ…


ミヤはいたずら妖精パックになりきって、今から行うであろう悪業に胸を弾ませる…


そして彼女は最初のジャンプを翔んだ…


四回転ルッツ…三回転トゥループのコンビネーションジャンプが決まる…


しかし会場中の人々はミヤが楽しそうに向かっている方を釘付けになって追いかけていた…


彼女は真夜中の森でロバと戯れている…そしてニヤリと含み顔をする…これからタイターニアにこのロバを愛するように仕向けるのだ…


リカはミヤの演技を見て愕然とした…


「な、なんで見えるの…?ロバが…そして
…彼女の企みさえが…理解できるの…?

照明もリンクも真っ白…

私達のようにダイスケさんのコーディネート無しで…」




隣にいるミキが一つため息をついてリカの肩に手を置いた…



「リカさん…あなたの技術やボディバランス…正直、私も脱帽するほど素晴らしいわ。

でも、彼女…ミヤさんはあなたが持っていないものを持っているわ…」



「な、何ですか…それは…」


「彼女を見ていれば理解るわ…」


二人はモニターに向き直った…



妖精パックは惚れ薬を手にタイターニアの目に楽しそうに塗っている… 

そして朝を迎えたのだろうか…眩しそうに窓の外を見て妖精…いや、小悪魔はタイターニアがロバを愛してしまうのを見てクスクスと笑っている…

そして踵を返してパックは森の方に向かって飛んでいく…

その姿は早くイタズラの結果をオベロン王に知らせたい小悪魔は思い出し笑いをして…森の中を駆けて行く…


彼女は四回転ルッツ…三回転フリップ…三回転トゥループのコンビネーションジャンプを翔んだ…

それは水面に波紋を残しながら王の元へ向かう妖精特有のマーキングのように見えた。



「すごい…真っ白なキャンバスにミヤさんが描いた情景が目に鮮やかに浮かんできます…どうやったらこんな…」


リカが目を丸くして言うとミキは逆に目を細めてモニターを見つめながら答えた。



「あれだけ…一目で情景が脳裏に浮かぶ演技は一体…何度さらったら身につくのでしょうね…?」


ミキのその言葉にリカは衝撃を受けた…



「私には無くてミヤさんが持っているもの…
そうか…何となく理解りました…」



真っ白なキャンバスを自分の演技で塗り替えながらミヤはフィニッシュへと向かって滑っていく…



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