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夢の片鱗
しおりを挟む結衣と一緒に部屋に帰る。
入る前に結衣のコートの雪を少し払ってあげるほど、それを降らせるリズムは速度を増している。
部屋に入ると僕らは荷物を置いて、夕食の支度をする。僕はパスタを茹でて、小さなステーキを焼き始めた。
結衣はテーブルにキャンドルを灯して、ジンジャーエールをグラスに注ぐ。
キャンドルに火を灯して二人で乾杯した後、僕らは料理を食べ始めた。
…結衣と色んなことを話しているとこのまま、時間が過ぎていくのが怖くなる。
ずっと一緒にいたいと思う自分がそこにいる。
食事を終えてケーキを食べようとして準備していた時、突然部屋のインターホンが鳴る。
僕らは顔を見合わせて、
「はーい!どなたですか?」
「メリークリスマス。翔ちゃん。ウチやで。
アンタの女の優花ですわ。
翔ちゃんに会いに来ましたー!
一年を通して今日は二人が結ばれる日に
最も相応しい日やで。さあベッドに入ろうか。ウチが温めるさかい…」
そう言うと優花さんは僕にギュッと抱きついてきた。
優花さんの肩越しに結真の姿が見える。「よう。」
「こんな時間に二人でどうしたの?」
肩の雪を払いながら結真は、「これから音合わせなんだ。その前に一緒にケーキ食べようと思ってさ。」
「そうか…どうぞ。上がってよ…」
二人を中に招き入れると結真は、
「実は食事まだなんだ。何処かで食べる予定だったけど、雪が強くて駅からここまで来るだけでも大変だったよ。」
「そう…じゃあ何か作るよ。」
「無理しないで。ケーキもあるから。」
僕は冷蔵庫を見ると大したものはなく、もやし、ニラ、朝食用のベーコン…
結衣とテーブルを片付けて、ガラステーブルを出して三人に座ってもらう。
ホットプレートに切ったもやし、ニラ、ベーコンを乗せて蓋をして蒸し焼きにする。
数分で温かいもやし蒸し鍋が完成した。
ポン酢をみんなに配って食べてもらう。
結真が、「あー温まるよ。コレって大阪でライブしてる人たちが集まる店の人気料理だよ。手軽で、それでいて美味しい。」
優花さんも「キャー、翔ちゃん。またウチのためにこんなん作ってくれたんやね。将来のダンナ様は料理が上手。うふふ。」
あれれ?さっきもだけど優花さんに結衣が怒らないなぁ。結真と一緒に楽しく話している様子だ。
そして僕は、「よければこれをどうぞ。」
みんなのポン酢の器の中にエクストラバージンオイルを少し入れる…それをつけて料理を口に運ぶ…
「わあぁぁぁ…」
結衣はその美味しさに笑顔の花を咲かせた…
そして、結真と優花は顔を見合わせる…
「ホ…ホンマに美味しいわ…」
「…すごい…本当に美味しいよ。
アンタさぁ…料理の才能あるんじゃないの?」
何げなく結真が言ったその一言が僕の人生の指標になるとはまだ誰も…自分自身でも予想もしなかった。
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