奥さまは魔王女

奏 隼人

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雨の中の美女

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…それは満天の星空から星が溢れ落ちそうなロマンティックな夜…


…などではなく…








ザアァァァァァァァ…



カタン…コトン…

フロントガラスにぶつかる雨水を掻き分けて左右に動くワイパーの音も耳に入らない程…僕は車を走らせながら考え込んでしまっていた…



ヘッドライトの光だけでは分からないし…
チラッと見ただけだから間違いかもしれないけど…

雨も降ってるし…もし…そうなら放っておく訳にはいかない…!!



会社の帰りの小高い丘の道でハンドルを右に切ると脇道に逸れてから車をUターンさせて今走ってきた道を引き返した…  


その数分後…僕は目の前の光景に思わず呟いた。


「やっぱり…戻ってきて良かった…」



田舎道の街灯に照らされていたのは降りしきる雨の粒と歩道から一歩中に入った芝生の上に雨に打たれながら横たわっている女性の姿だった。


僕は急いで車から降りて彼女に駆け寄った。

「おーい!もしもし…大丈夫ですか?」



呼び掛けに彼女からの返事は無かった。

「よいしょっと…」


華奢な細いその身体を抱き起こすと…温かい…!!

確かに体温が感じられた…

というか…額に手を当てると…あっつ⁉︎

凄い熱だ!!


辺りを見渡してもここは田舎道のド真ん中。
近くに病院は…ないなぁ…⁉︎

いや…待てよ…病院や警察に連れて行っても「お前は誰だ?このひとの家族は⁉︎」という話になるだけだ…




車のヘッドライトが雨に反射して映し出された彼女の姿は逆に幻想的な雰囲気で…


この世の者とは思えないほど…美しかった。




…うわっ!!な、なんて綺麗な人なんだろう…

最近テレビも見ないけど女優って言ってもおかしくないくらいの超美人である…

ハッキリとした顔立ちは日本人ではないのかな?それならいっそう難しい事に…


…でも…やっぱりこのまま放っておく事なんて出来ないよ…


僕はとりあえず車の後部座席に彼女を乗せて部屋に連れて帰ることにした…

ルームミラーで何度も彼女の様子に気を配りながら途中のドラッグストアに寄って水枕や色々な物を買い揃えた。



だけど一つだけ困った事があった。着替えである。髪の毛やビショビショの服はタオルで少し拭いたけど汗をかいた服を脱がせてパジャマを着せてあげたい…

どうしよう……


……そうだ!!!

僕はマンションの一階の管理人室に向かった。インターホンを鳴らすと初老の優しそうな女性がドアを開けてくれた。


「はいはい…どなた…?」

「夜分遅くにすみません…」

「おや?仙石さんじゃない…?どうしたの…?」


えーと…?

何て言おうかな…?



「え、ええっと…その…付き合ってる彼女が熱を出してしまって…
管理人さん!一生のお願いです。彼女の服を着替えさせてあげてもらえませんか?」

管理人さんは一瞬ビックリした様子だったが、

「そう…服を脱がせるのを私にわざわざ頼みに来るっていう事はあなたが無理矢理連れ込んだという事でもなさそうだし、いいわよ…分かりました」

と言って彼女を着替えさせてから雨や汗でビショビショだった髪や身体まで拭いてくださった。



部屋の外で待っていた僕に管理人さんが「もう入ってもいいわよ!!」と声をかけてくださった。

「この娘…服も…下着までビショビショじゃない!!
…どうしてこんな事になったの?」

「あの…その…」

「まあ…聞かなくても大体分かるけどね…

あなたね、彼女とケンカしたんでしょ!!

それでこの娘、ずっと雨の中であなたの帰りを待ってたんじゃないの…?

こんなに濡れて可愛そうに…

ダメよ…もっと大事にしてあげないと…」


「は、はい…」




「う、うう…ん…」 

彼女に一瞬だけ意識が戻る…女性がうっすら目を開けるとすぐ側で二人の話声が聞こえてきた…


「管理人さん…すみません。これからは彼女は絶対にこんな事にならないように自分が守ります。ずっと大切にすると誓います!」


「そうしてあげてね。もういいわよ…あなたも反省しているようだし…困った事があったら何でも私に言ってね。

服と下着は私が洗濯しておくから彼女が目を覚ましたら声をかけてね!!」



その会話をおぼろげに聞いていた女性は故郷の自分の父親を思い出した…




「シルヴァ…君は絶対に僕が守る!いつまでも大切にすると誓うよ!」



……お…とう…さ…ま…


しかし…疲れと熱が完全に取れていなかった彼女はまた眠りに落ちていった…
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