レイとアイラの異世界雪山生活

霧ちゃん→霧聖羅

文字の大きさ
18 / 104

オニオンフラワーのピリ辛炒め

しおりを挟む
 アイラはもう少し寝かせておくことにして、”土魔法”の練習をしてみる。
練習方法は、魔力で土を動かすことなんだけど、利点はあまり音がしないことだ。
だってほら、うるさくしてアイラを起こしてしまうのは申し訳ないし。
”土魔法”の練習は昨日の寝る前にも少しやったけど、缶の中に入った砂鉄を下から磁石で動かすのとよく似ていて地味に楽しい。
こう、童心に帰るっていうのかな?
そんな感じ。



 一時間もするとアイラも起きてきたので、お喋りをしながらご飯を作る。
私が料理をしている間に、アイラは穴の拡張工事。
地味にじわじわと、居住空間が広がっていきます。
本当は経って移動できる程度の高さも欲しいけど、今は広さの方を優先している。
この狭い穴の中に二人でいると、やっぱり窮屈なんだよね。

「お夕飯のご予定は?」
「んー……。今回は、おにぎり握る予定」

 そう言いながら、荷物の中からふりかけを取り出す。
足りない塩分はコレで補えばいいし、塩味続きなところに変化もつく。
とは言え、これじゃあちょっと味気がないからもう一品欲しいところだ。
ただ、限りあるタンパク源のジャーキー類やスルメは節約したい。
現地食材を優先して使うとなると――炒めもの一択かな。

「後は、アイラが午前中に拾ってきてくれたコレを使ってオニオンフラワーのピリ辛炒め!」

 宣言しつつ、取り出したるは真っ赤なリンゴ――っぽい実。
その名は、ポットベリーだ。

「あー、果物だと思ったら調味料に使われてるってやつよね」
「うん。これ一つで、三役こなせる素敵な子です」

 なんと、このホットベリー。
果皮はトウガラシ、果汁は酢、種はコショウの代わりになるという素敵植物だ。
普通にリンゴでも嬉しかったけど、調味料のバリエーションが増えたのが私としてはとても嬉しい。
今日は、果皮を使って炒めもの。

 朝のうちに作っていたまな板と包丁モドキを用意して、まずはホットベリーの皮むきから。
――利便性を考えて足をつけたまな板の使い心地は悪くないけど、包丁の使い勝手はイマイチ。
”錬金術”の『融合』を使って、形だけ整えているからかな?
とにかく切れない。まあ、刃がついてないから当然といえば当然か……
仕方がないので、諦めてホットベリーは実を縦に割ったところで、思わぬ中身に手が止まる。

「見た目はリンゴなのに、中はミカンみたいなのね」
「私もびっくり」

 ちなみに、丸のままだと手で皮を剥くには皮が硬すぎるので半分に割る必要はあったんだけど。縦に割れば皮をベリベリと剥がせるだなんて思わなかった。
しかも、実は房になってるし!
見た目がリンゴにそっくりなだけに、違和感がすごすぎる。
必要ない分は小さな土鍋に放り込む。

 次は、お米を炊く準備。
おにぎりって、普段よりもいっぱいご飯を食べてしまいがちだし、思い切って四号炊いてしまおう。
雪原草は籾摺が終わってないからまだ食べられない。それでも、手元にそれなりの量があるから気が大きくなっているのです。

 お米を炊き始めたら、オニオンフラワーをオイルウッドを削り入れた中華鍋でしんなりするまで炒める。
やっぱりがあると、料理がしやすい。
欲を言えば、木製だともっといいんだけど。
現状は、手に入るものでやっていくしかないし仕方ないか。
最後に用意しておいたホットベリーの皮と塩を適量振り入れれば、『オニオンフラワーのピリ辛炒め』の出来上がり。
真っ白なオニオンフラワーに、ホットベリーの赤が差し色になってていい感じ。
アイラが頑張って集めてきてくれたから、量だけはたっぷりです。
少しして炊きあがったご飯でおにぎりを握ったら、お夕飯の準備が完了。
そわそわしながらこっちを気にしているアイラが戻ってきたら、二人揃って――

「「いっただっきまーす!」」

 うん、美味し。
炒めたオニオンフラワーの甘みを、ホットベリーのピリッと来る刺激が飽きさせない。おにぎりと交互に、いくらでも食べられちゃいそうだ。

「まずいわ……」
「アイラ、辛いの駄目だった?」
「違くて、運動量の割に食べすぎてる気がヒシヒシと……」

 ……雪原草を刈り取ってきたり、穴の拡張工事をしたりしてるのに?
私としてはアレも、十分な運動だと思うんだけどなぁ……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
 異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。  億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。  彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。  四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?  道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!  気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?    ※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

処理中です...