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お籠り決定

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 目が覚めたら、十一時!?
寝坊なんて生易しいレベルで眠りすぎ!
思わず飛び起きたせいで、アイラの掛け布団が外れて「さむぃ」という呟きが上がり、慌てて掛け直す。
アイラもずっと寝ていたのかと首を傾げつつ明かりをつけてみると、今日もたくさんの収穫物が片隅に積み上げられていた。
すでに、一働きしていらっしゃるとは……。
グースカ寝コケていたことに、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
かくなる上は、せめて多少なりとも美味しい、温まるものを作らねば。

 とは言え、用意できるのはいつもどおり。
日本人はみんな大好き、お米さん。
毎日美味しくいただいている、オニオンフラワーさん。
昨日からのニューフェイス、ピリッとした辛さが魅力のホットベリーさん……の皮。
そして、特別ゲストはこちら☆
お酒のお供に大人気のビーフジャーキーさん!
以上のメンバーでお送りするのは……
チャンチャラーン♪
特製オニオンフラワーの冒険者風スープでございます♪

 ……と、アホなお遊びはやめて、さっさと作ってしまおう。
まあ、作り方なんて単純なんだけど。
ビーフジャーキーを細かくしたものをお湯で戻しつつ、 油を引いたフライパンでオニオンフラワーを炒める。
オニオンフラワーが飴色になったところで、ビーフジャーキーの戻し汁の中に投入!
ホットベリーの皮を細かくしたものを入れつつ、塩で味を整えれば出来上がりだ。
材料も少ないし、手順も難しくない。
それなのに、美味しいんだよねぇ……
トロットロのオニオンフラワーが汁に溶け出して、ピリッとした中に絶妙の甘みとともにコクがあるのを感じる。
ご飯と一緒に食べても、ご飯にかけて食べても素敵だと思います。

 料理を終えて後ろを振り返ると、アイラがスプーンを持ってスタンバイ。
なんか、デジャヴュ。
着々とアイラの餌付けが進んでる予感がする、今日この頃です。

「もうね。あたしが食材調達係で、レイちゃんが専属料理人がいいんじゃないかと思うの」

 朝昼兼用になってしまったご飯を食べ終わると、アイラは突然そう言い出す。

「突然、どうしたの?」
「役割分担よ」
「まあ、”ファーム”で野菜育ててもらってるし、既に現状そうなっちゃってるね。本当は、私も食材探しに行きたいんだけど……」

 私がそう言うと、アイラは困った顔になる。

「正直なところ、防寒装備を強化しないと今以上の遠出は厳しいと思う」

 詳しく聞いてみると、足元の保温が特に厳しいらしい。
靴には防水対策のしようもないから仕方ない部分もあるけど、それでは済まない問題だよね。言われて初めて、靴と靴下が隅の方に干してあったのに気付く。
言われてから気付くんじゃ、遅いんだよ、私!
もっとしっかりしなきゃ。

「なら、アイラもしばらくは靴も乾かないだろうし、おトイレ以外で外に出るのはやめておこう?」

 むしろ、おトイレを中に作ったほうがいいかも。
匂いは気になるかもしれないけど、”ディグ”を使えばすぐに作れる。

「今日採ってきたやつなら、三十分もかからないから平気よ」

 まずはトイレをどうしようかと思っていたら、アイラは突然、採集に行くのに積極性を見せる。

「え? だって、防寒対策を強化しないとまずいでしょう」
「そうなんだけど……」
「だったら、凍傷も怖いし対策を先に考えよう。バリエーションは少ないけど、アイラが二日間頑張ってくれたお陰で、食べ物の在庫はあるし……」
「でも、収穫できるのって十日も後になっちゃう」

 アイラが不安そうな表情で、隅に積まれた食料に視線を向けた。
昨日と今日で、彼女が集めてくれた雪原草にオニオンフラワー。
それからオイルウッドとホットベリー。
後は、私が日本から持ってきていたお米やジャーキー類とアイラのお菓子。
……まあ、確かにあの食材だけだと三日か四日保つかどうかってところ。
とてもじゃないけど、十日は保たない。

「それじゃ、足りなくなる前に一緒に取りに行こう?」
「……それなら」

 最終的に、これで手打ちになったんだけど……
昨日までは割と楽しそうな様子だったのが急に切羽詰まっちゃったのって、もしかして、私が食べすぎてるせい?
だとしたら、ごめん。
夜からはお粥生活にさせていただいてもよろしいでしょうか。
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