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新たな収穫物 上

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 ”検索”先生にお伺いを立てる方法を確認した後は、早速、新しい収穫物の確認作業に取り掛かる。
まずは、スモモによく似た黒っぽい紫色の実から。
果物っぽい形だから、アイラがとっても期待していたやつだ。
ちょっと気になったのは、この美が落ちていた場所の側にあったと思われる雪原草が軒並み変な場所でバッサリと切れていたこと。
危ない果物じゃないといいなぁ……

・スモモによく似た黒っぽい紫色の実 → ゲイルベリー
 実に触れると、風の刃で攻撃してくる
 熟していないものは食用に適さない
 熟したものは地面におちる

 うわぁ……
やっぱりちょっと危険な植物だったらしい。触ると攻撃って、随分と物騒だよね?
食用に適さないのは、触ると危険な木になっている状態の実だけなんだろうか。
留保条件がついてる上に、熟した実についてちんまりと説明が付いてるのがちょっと怪しい感じがする。
……と言う訳で、『食用利用』が可能かどうかも確認してみよう!

・ゲイルベリー 食用利用
 熟したものの果汁と種の仁は食用利用が可能。
 塩気が強く匂いで好悪が分かれる。
 果汁から塩分のみを抽出して利用するのが一般的。
 対応スキル:”調理” ”錬金術”

 残念。果物じゃなく、ホットベリーと同じで調味料の材料だったらしい。
私としては大歓迎なんだけど、異世界の調味料ってなんだろう?
クンクンと実の匂いを嗅いでみても、皮がついた状態では良く分からない。
後で確認してみよう。
念の為確認してみたけど、薬にも道具にもならないと言う結果だった。

 次に確認するのは、オオイヌフグリによく似た形の赤くて小さな花の株。
この花は、私達が暮らしている穴の近くにホットベリーと一緒に群生していたヤツだ。なんか、この花のある辺りは雪が少し薄くて、気持ち暖かい。
なので、最初に出た”検索”結果には素直に納得できた。

・赤い花 → 暖気草
 暖かい空気をまとう花。
 部屋を温めるために鉢に植えて部屋に置くことが多い。

 その上、氷室草の正反対と言ってもいい説明に、期待感が高まるのも仕方がないところじゃないかと思う。
そして、期待通りの説明が得られた時には思わずガッツポーズをとっちゃった。

・暖気草 薬用利用
 暖かい空気をまとう花。
 体を暖める効果があるため、根を煎じたものは『耐寒薬』として利用される。
 対応スキル:”魔法薬調合” ”錬金術”

 名前からして寒さ避けっぽいし、是非とも作りたい。
ちなみに、食用や道具としての利用は不可だった。

 三つ目は、人の頭ほどの大きさがあるフワフワの白い花。
これはアイラが刈り取りをした場所に、一つだけぽつんと落っこちていたやつだ。
どこから落ちてきたのかとあたりを見回してみたけど、パッと身では出どころは分からなかったんだよね。


・フワフワの白い花 → ライスウッド
 温暖な土地にしか育たない植物だったが、寒冷地に適応を果たした。
 水を通さない硬い節で複数に仕切られたかんを持ち、
 乾燥させたものは強靭で細工が容易である。
 また、他の木材にはない弾力性に富んでいる。

 ――ちょっとビックリするくらい、最初の”検索”の内容が詳しい。ただ、ちょっとどんな植物なのかは想像がしづらいかも。
細工が容易ってことは、”工芸”的なスキルがあれば利用できるのかな?
とりあえず、改めて細かく確認してみよう。
食べるのは難しそうだけど、一応、食用にできるかどうかから。

・ライスウッド 食用利用
 地面から顔を出す直前に掘り出された芽は、アクを抜いて食用とされる。
 また、花粉が食用に適しているが生食には向かず、一般的には認知されていない。
 異世界の米と同じようにすれば美味しい。
 対応スキル:”調理” ”錬金術”

 最初の説明で山菜的な立ち位置なのかと納得しかけて、続く説明に、慌ててすぼまっている花びらを掻き分け、中の花粉を確認する。
むき出しになった雄しべに残っているのは、多分、最初に付いていた量の半分くらい。それでも、私の手をお椀状にした中に入り切らないほどに大量だ。
花粉のイメージ通りに黄色いけど……大きさも形も、なんだかお米に似てる。
ドキドキしながら一粒だけ口に含む。

「ふふ……」

 嬉しすぎて、思わず声が出た。
お米、お米、お米ですよ!
生米と同じような味がする!!
気にしないように、気付かないように目を逸らしていたけど、手持ちのお米がもう半分を切ってしまっていたから実は不安で仕方がなかった、我らが主食!
まさか、手持ちが無くなる前に代用品が見つかるなんて……!
あー、もう。
嬉しすぎて涙が出そう。
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