秘密の異世界交流

霧ちゃん→霧聖羅

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第一夜

☆解体所はなんとなく怖いんだ

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 魔法弾での狩りは、1階の休憩を挟んだ物のあっという間に終わった。
アルには、こっちの方がやっぱり向いてるっぽい。
元々、彼の居る世界には魔法が存在していて、その世界の中でも結構な使い手らしいから当然かも。
それに、現実では魔法なんてないわたしですら簡単だと思うんだから、彼にとっては欠伸が出る位かも。
そう思いながら様子を見て居たら、拍子抜けした様な雰囲気から段々と楽しそうになって行った。


アレだ。
1周回って楽しくなったってヤツかも。


「最後は商売人のクエだね。」
「うむ。『行商をしてみよう』だったかね?」
「うんうん。行商広場で、さっき拾ったアイテムを売るんだけど……。」
「拾った枝はウサギ相手に折ってしまったから、少し数が足りないのだが……。」
「おおう……。」
「ウサギの死体は売れると思うかね?」

 クエスト終了の小竜を見送りながら、町へと戻る。
勿論、手を繋いでね。
この辺の生き物は、武器を向けなければ襲ってこないから回りを警戒する必要は無い。
安心してのんびり歩けるからね。
折角、アルに触れられるんだったら少しでも触れ合っていたい……なーんて、キャラじゃないなぁ。

「死体の状態だとどうだろう……?先に、解体所ってとこに行ってみよっか?」
「うむ。異論は無い。」

 町に入ると、のんびりと歩きながら解体所のあった方へと足を進める。
このゲーム内にある西洋風の石造りの家々は大体3階建てになっていた。
変わり映えしない同じ様な形の建物ばっかりなんだけど、その代わりと言うか何と言うか、区画毎に壁の色が塗り分けられていて自分がどこに居るのか判り易いようになっている。
海外旅行はした事が無いから、実際の西洋の建物がどうなってるのかは知らないけど、その辺のリアリティを私は求めてないのでコレはこれで有りだ。
方向音痴スキルを披露しなくて済むしね!
 アルを伴って歩く事10分位。
私と彼は、解体所の前に辿り着いていた。
解体所は大きな倉庫みたいな建物で、事務所っぽい小さな平屋の建物が併設されている。
倉庫っぽい方は、大きな扉が開かれていてちょこちょこ荷車に乗った動物(生きてる)や、動物の死骸が運び込まれて行くのが見えた。


……あれ。
出入りしてるの、同じ人……??


 暫くその出入りを見て居たら、その業者っぽいNPCは使い回しなのか、はたまた出入りが沢山あるんだよと言う演出の為なのか良く分からないものの、荷物から人物に至るまで同じにしか見えないものが幾つかおきにうろついているって事に気が付いてしまった。
アルを見ると、同じ事に気が付いたらしい。
ピョコンと耳を揺らすと、併設されている小部屋の方に視線を移した。


おーけぃ。
見なかった事にしよう。
ゲームだからね、そう言うもんなんでしょう。


 アルに視線で促されたのもあって、渋々、事務所っぽい建物に足を踏み入れる。
『御用の方はお気軽にどうぞ』
なんて張り紙が無かったら、クルリと後ろを向いて引き返すところなんだけどね。
やっぱり、怖い。
だって、動物の毛皮とか剥いだりするんだよ??
目の前で、そんな事やられたら絶対卒倒する!

「リリン……? 私もいる。」

 ぐずぐずしている私を振りかえったアルが、ぎゅっと抱きしめてくれて少し怖い想像が飛んで行った。
それに、ゲームだし!
きっとそういう表現は抑えられてる筈。
ゲームだしね!!!
 そう自分に言い聞かせて、受付にあるベルを鳴らすとすぐに係の人がやってきた。
係の人、係の人はまぁ、すぐそばに待機してたんだけどね。
私がぐずぐずしてても、アルにぎゅーされてても全くの無反応!
ゲームだから?ゲームだからだね!
NPCは、こちらから働きかけない限り無反応って事でいいんだよね?きっと。

「解体のご依頼でしょうか?」

 係の人は、おっきなメガネを掛けたひょろっとしたおじさんだった。
ヒョロヒョロ加減だったらアルも負けてないけど、まぁ、そこは置いておく。
解体の依頼って事は、お金を払えば解体して貰えるらしい。
早速システムについて説明を求めてみると、料金表が出てきた。
こう言うところは近代的ですね。

「解体所では、お客様が狩ってらした動物の買取から解体まで請け負っております。」

 そう言いながら詳しく説明してくれたんだけど、要はウサギの死体を持ってくるとソレをそのまま買う事もするし、解体だけもするよとそんな感じだった。

取り敢えず、手持ちのシュタールラビットの解体料金は1羽あたり4G。
安い。
そのまま買取だと、20Gなんだって。
 解体手数料が思いの外安かったのもあって、手持ちのウサギの死体は早速全部解体して貰う事にした。
アルと一緒に狩ったウサギが20羽で、その前に60羽狩っていたから80羽分の320Gのお支払。
それと交換で手に入った素材はウサギ肉2kgx80羽分で160kgと、ウサギ皮が80枚。
アルの方は、ウサギ肉2kgx20羽分の40kgと、ウサギ皮が20枚。
ウサギ皮は30センチ角位でちょっと歪な形をしたもので、まだ毛皮状態。
ナメシたりはされてないから、このままでは使えないらしい。
確か、『紡績』スキルでそういった事が出来るみたいだから試してみよう。

「沢山の素材に化けたね~♪」
「うむ。これを売ればいいのかね?」
「うん。行商の時は、品物ごとに最低価格が表示されるから、面倒だったらその値段で出しても良いし、他の行商の人の値段を参考にしてもいいよ。」
「ふむ。逆に、最高額というのもあるのかね?」
「う。試して……にゃい!」
「では、試してみる事にしよう。」

 お、少し目を細めたのはどうも笑ったっぽい。
なんだ、あるじゃん表情筋!
今度は是非、正面からその笑顔を拝見させて貰いましょうか♪
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