秘密の異世界交流

霧ちゃん→霧聖羅

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第三夜

☆内緒話

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 王都グーベルクは、石造りの町だった。
真ん中に大きな堀に囲まれた王城があり、ソレを中心に町並みが広がっているらしい。
一直線に王城に行けない様に建物が配置されているらしくて、門からではみる事が出来ないけど門兵さんに聞いたらそういう答えが返ってきた。
 それにしても建物も、道路も、みんな綺麗に切り出した石で作られていて、これで装飾過多でなかったらちょっぴり現代チックに見えなくもなかったかもしれない。
街路樹があちこちに植えられていて、それによってかろうじて色彩を補強してる感じ。
建物が灰色ばっかりだから、それが無かったら物凄く殺風景な町になっていそうだ。

「お二人さんはこの後どうする?」
「私達は、町の探検かな。イカ下足君は~?」
「生産施設を見付けたら、屋台だしてみようかと。」

 イカ下足君は、もう屋台をゲットしたらしい。
何と羨ましい……。

「屋台、いいなぁ……。」
「リリンちゃんは、手を広げすぎなんだわ。」
「むぅ~! ばんがるからいいもん。」

 そのままイカ下足君とはお別れだ。
ピコーン
と電子音が鳴って、≪イカ下足君がパーティから抜けました≫というアナウンスが頭に閃く。
手を振って遠ざかっていくイカ下足君に手を振り返すと、アルの腕をとる。

「では、どちらへ?」
「んー♪ イカ下足君と反対方向から!」

 片耳をピコンと下げて問うアルに、進む方向を示すと、町並みを眺めながらゆっくりと歩き始めた。
一通りの施設を発見・確認しながら歩き回って行くうちに、中央に噴水を擁する広場をみつけたので、そこに設置されていたベンチに腰掛けて一服する。
ただ歩いているだけでも、地味に体力が減るんだよね。
休憩の気分って事で、お弁当代わりに作ってあったクレープを出して2人でパクつきながら、ハーブティを口にする。

「ん~♪ 食べ物や飲み物が美味しいのは凄くいいね~♪」
「確かに。このクレープと言うのも中々美味しいものだ。」

 新作のクレープも、アルに好評だ。
薄ーく伸ばして焼いた生地に、サルナシを煮詰めて作ったジャムを塗っただけなんだけど、確かに結構美味しく出来ている。

「ところで、このゲームでは家かルームの所有は出来ないのかね?」
「ほえ?」

 お茶を飲みながら、何か考えてたアルが不意にそんな事を言い出した。
家やらルームは、最近のゲームなら結構導入されてる要素ではあるけれど、公式ではそういった要素があるともないとも告知はされてない。
とはいえ、何らかの形でそういうのがあるか、後日追加されるかするとは思うんだけど……。

「今のところ、公式では告知されてないけど……。調べてみる?」
「うむ。」
「プレイヤーの情報は後でネットで調べるとして、まずはNPCに聞き込みしてみるかぁ……。」

 思い立ったが吉日!
早速情報を集める為に、あちこちでNPCっぽい人に声を掛けていく事にする。

「家? 新しく建てるのはこの国じゃ無理だなぁ。」

 新しく建てるのはダメ。どうも、詳しく聞いた感じだと国の許可が必要らしい。
国の許可ってどうやってもらうねん?

「最近、空き部屋はなかなか無くてねぇ……。」

 アパート的な物は、空き部屋が無いらしい。値段高いのはあるんじゃないのかと思ったんだけど、そういうのはやっぱりお国の偉い人の紹介が必要らしい。
偉い人とのコネって、なにすればできるん?

「借家なんてあったら、うちの息子夫婦に引っ越して貰うんだけどね。狭くってかなわないよ。」

 借家はどうだろうと思ったものの、そっちもアカンとか。
逆に、どんなに家が狭くて、息子夫婦がイチャイチャするのがうざったいかを語られまくったよ。
NPCに。いや、本当にNPC?GMだったりとかしないの??
って思う位、人間臭かった。
やっぱり、中身が居たかも知れない。

 なにはともあれ、結果はイマイチ。
途方に暮れてイカ下足君の屋台を発見したので、そこの裏でイカ下足君に愚痴ってみた。

「家って、また急にどうして?」

 そういや、アルが家を欲しがった理由を聞いてなかったなと、彼を見る。

「そういや、何で?」

 何故か聞かれた彼の目が泳ぐ。
およよ?
ソレを見て、イカ下足君がアルをちょいちょいと手招きしてこそこそと話し始めた。
わたしは除け者らしい。
ちょっぴりいじけていると、アルの返事を聞いたイカ下足君が爆笑しだした。

「何々? アルってば、なんか面白い事言ったの??」
「ああ~。アスタール君も男の子だってだけだわ。」

 なんだそりゃ?と、アルを見ると視線を逸らした。
イカ下足君には話せて、わたしに言えない理由って、なんじゃいそりゃ。
面白い話なら、わたしも聞きたいんだけど……?
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