秘密の異世界交流

霧ちゃん→霧聖羅

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昔がたり

☆会いたい

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 彼の事を、きちんと実体のある存在だと思い始めた事によって、わたしはそれまで後回しにしていた事を突き詰めていく事にした。
 それまでは、正直に言うのなら彼の事を、妄想壁の激しい厨二病を拗らせつつある男の子かなと思っていたんだけど、それを機に、その『設定』を深く掘り下げる。
彼の言う様な『異世界』じゃなく、『地球』に暮らしていてくれたなら、彼を閉じ込めている『祖父』の元から彼を救いだせるかもしれないと思ったのだ。
気分は、王子様を助け出すお姫様と言うヤツ?
私も十分、厨二病をこじらせてると思う。
そーゆーゲームもあったなぁ……。
 なにはともあれ、まずは質問から。
メールだとまどろっこしいので、ネトゲの中で質問させて貰う。
ネトゲと言っても、今やっているセカンドワールドみたいなVR系じゃなくて、10年近く前の2Dゲーム。可愛いアバターに色んな仕草をさせられるのが売りだったヤツのような気がする。



Q.賢者の石ってなぁに?

A.君の世界の伝承にあるものとは違っていて、『魔力石』と言う物を合成して行くと出来る物で、その中に小型の別世界を作ることが出来たり、物を複製したり、物を保存したりすることが出来る。
どこまで大きくなるのかと興味があったので育て続けてみたら、こうやって私の居る世界とは別の世界に繋がる道まで作ることが出来た。

Q.貴方の世界ってどんな世界?

A.君の世界と違って魔法が存在する、『キトゥンガーデン』と言う世界だ。
『創造主』と呼ばれる1柱の神が、妻である『猫神』の為に作ったモノらしい。

Q.『キトゥンガーデン』って、子猫の庭?

A.君の世界の言葉に直してみたのだが……。
本来、該当する発音の表記の仕方が分からなかった。

Q.神様は2柱だけなの?

A.正確には、上位神2柱の下に8柱の下位神がいるらしい。
上位神は『創造主』『猫神ミルル』
下位神は称号のみしか知らないのだが、
『輝影の支配者』『運命の紡ぎ手』『生命の創造主』『魂の護り手』
『地霊の主』『水霊の主』『火霊の主』『風霊の主』らしい。

Q.神様ってなにするの?

A.猫神はその時の気分で厄を為したり、害為すものを祓ったりと色々やるらしい。
創造主は主に、猫神が厄を為した際の尻ぬぐい。
下位神は、上位神2柱の下働きだと思われる。

Q.不確定情報?

A.称号すら、一般には知られていない神々がなにをしているかなど知る訳がなかろう……。
何らかの逸話が残っている訳でもないのに、無茶を言わないで欲しい。

Q.知ってる事と知らない事を教えて?

A.正直に言うのなら、知らない事の方が多い。
例えば、私の住む地の名は知っている。『グラムナード』だ。
人口も1万人だと聞いているが、その人々を私は見たことがないのだ。
従姉弟が5人居るのも知っているが、1人は会った事もない。
接触をしたことがある人間は、祖父と兄上を含めて11人。
住居の外に出た事がないから、どのような建造物に住んでいるのかも分からない。

Q.アルの暮らしている国の名前ってなぁに?

A.イニティ王国。
100年近く前に建国された若い国らしい。
叔母がイニティ王国の王に嫁いでいなかったら、『グラムナード神国』だった。

Q.グラムナード神国って言う事は、猫神様信仰的な?

A.表向きは猫神信仰と言う事になっているが、
実際に信仰しているのは『輝影の支配者』を名乗る『祖父』だ。

Q.お祖父さんって、下位神の1柱なの?

A.私から見ると、ただの気が狂いかけている人間だ。
もし本当に神の1柱だったとしても、ただただ魔力が強すぎるだけの人間に過ぎない様に見える。
アレを信仰しているのだとしたら、私の住む地の人間は頭がおかしいのだろう。
もしくは、外では正気を装っているのかもしれない。


「ところで……。」
「にょ?」
「急にこんな事を聞きだして、一体どうしたのかね?」

 アスタールのアバターがピョコンと不思議そうな顔をして首を傾げる。

「本当に、アスタールの住んでるのが異世界なのかと思って……。」

 正直にそう答えながら、アバターを泣かせる。
慌てふためくジェスチャーを返してきた彼のアバターを見ていると、再び同じ質問が繰り返される。

「同じ世界に住んでるなら、アスタールの事を閉じ込めてるお祖父さんの元から助けに行きたいと思ったの。」
「リリン……。」

 アスタールのアバターが、わたしのアバターに抱きついてハートマークを撒き散らす。

「そんな風に思ってくれただけでも、十分嬉しい。」
「思ってるだけじゃ、助けらんない。」

 今度は、アバターを大泣きさせた。リアルでも涙が出る。

「アルに、会いたいよ。」
「……アル……?」
「アスタールの愛称。いつも、心の中ではそう呼んでるの。」
「あいしょう……。」

 アスタールのアバターが満面に笑顔を浮かべた。

「これからは、私の事をそう呼んでくれると嬉しい。」
「……アル。」
「うむ。」
「あのねぇ、わたし、アルの事が凄く好きみたい?」
「私はずっとずっと、君の事が好きだ。」
「うん。自覚したのさっきなんだけど、なんかわたしも好きみたいなんだ。」

 アルのアバターが照れた動作をはじめる。
わたしも、自分のアバターに同じ動作をさせた。

「君が、私を助けに来る必要はない。」
「でも、逃げ出せないんでしょう?」
「いつか、きっと君の世界に行く。私も、君に会いたい。」
「そしたら……リアルでも結婚する?」
「うむ。私の、家族になって欲しい。」

 即答か。
でも、その方がアルらしい。

「リアルで会えたなら。」
「必ず?」
「約束。それまでは、ネトゲの結婚式で我慢してね?」

 返事は、アルの笑顔。
アバターと実物は絶対に違うって分かってるのに、胸がキュンとした。
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