秘密の異世界交流

霧ちゃん→霧聖羅

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動き出す運命

☆常識ってどこだろう

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 アルのお弟子ちゃんは、それから月に1度位の頻度でやってきては、1日1時間ほど遊んで帰って行く様になった。
遊ぶと言っても、あちらにない物を探したり、少しずつ増えていく単語を使いながらわたしとお喋りをしたりというかんじ。
勉強目的なんじゃないかと思う位に遊び部分が少なく見えるけど、彼女なりに充実しているようだから、きっとこれはこれで有りだろうと思う。
何より、カタコトであれこれ話しかけてくる彼女が可愛くて仕方がない。


ああ、もう!!!!
絶対リエラちゃんは、年上キラーだ!


 そう思って、アルに聞いて見たら「長老方には孫の様に、年長者には娘や妹の様に扱われている。」との返事が返ってきた。
やっぱりか。





 ところで、最近になってリアルの方で変な視線を感じるようになった。
常時……って言う訳じゃないんだけど、人ごみに居ようが、個室に居ようがお構いなしに左後ろの方から視線を感じるのだ。
自分にストーカー的な何かが付くとは思えないから、お化けかなんかだろうかと戦々恐々としている。
なんせ、異世界なんてもんがあるんだから、お化けが居てもおかしくないよね?
誰かおかしいって言って下さい。

「まりあは、おねーさんの自意識かじょーだとおもうぅ~!」
「ああ。まりあちゃんは、やっぱりまりあちゃんだ。」

 すっぱりはっきり言い切ってくれた、犬耳娘をギュウっと抱きしめる。
君ならきっと、そう言ってくれると信じてた!

「でも、リリンさんは自分で思っているよりモテそうですけどね。」
「えー? ナイナイ。」
「ガードが堅過ぎて、近付けないですが。」
「ガードってなんやねん。」

 思わず関西風のツッコミを入れた。
サイ君、ガードって意味分からんよ?
ジト目で見ると、クスクスとおかしそうに笑いながら教えてくれる。

「まず、アスタールさん以外の人との距離の取り方。」
「あー。おねーさん、確かに無意識に距離取るねぇ。」
「なんというか、『異性』から『生物』になると距離が途端に近くなりますけど。」
「あぁ……。それ、人見知り的なヤツじゃ……。」
「無意識に避けたりもしてるねぇ。」
「マジか。わたしってば、超能力者?!」
「ないない。」
「代わりに別の人にぶつかってますね。」
「おおう。」

 そう言われると、ちょっと思い当たる節がある。
アレだ、アルの巨乳スキーなお友達と会うと良くある感じだ。

「気付かんかった。それでよく、人にぶつかるのか。」


成程納得。


「まぁ、アル以外に興味ないからどうでもいいけど。」
「婚活なさるんじゃ無かったんですか?」
「アルが居るのに?」
「なら、心にもない事を言わないで上げて下さい。兄さんが泣きますから。」
「……実現、可能な事にやっぱり思えなくって……。」
「あー。『異世界』かぁ~。リエラちゃんと話してると、信じざるを得ないよねぇ。」
「信じて無かったん?」
「んー? 元々、あってもいいけど、なくても困らないよねぇ? って言う程度の情熱ぅ。」
「成程。そう言う認識ね。」

 ぶっちゃけるなら、どうでもいいと言う事だ。
ソコに居ると言う人がいるのなら、あれば良いと。
今回の場合は、アルやリエラちゃんが居るんだから在れば良いということらしい。
ラノベ万歳とでも言えば良いんだろうか……?
ゲーム好き・ラノベ好きならではの言葉の様な気がして仕方がない。

「大体さ、アルがこっちにくると色々不便しそうじゃない?」
「例えば?」

 そんなものがあるの?
とでも言いたげな顔で、彼が訊ねる。

「戸籍とか、お仕事とか、基本的な決まり事とか。なんかこっちの方がややこしそうな気がする。」
「兄さんの住んでる町だと、『兄さんが絶対!』みたいなかんじでしたっけ。」
「……って言ってたねぇ。」
「まぁ、その辺はともかく。戸籍にしろお仕事にしろ、何とでもなるモノですよ。」
「いやいやいやいや。普通は無理でしょ。」
「大丈夫ですよ。」

 やけに自信たっぷりなその様子に、一瞬納得しかかった。
思わず、まりあちゃんに目を向ける。
彼女ならきっと、常識的な事を言うに違いない。

「おねーさん。世の中、結構いろいろと何とでもなるもんだよ。」


駄目だった。


 思わず、遠い目になるのは仕方ないだろうと思う。
それってどんな不正行為だ。
とりあえず、わたしには想像もつかないモノだと言うのは確かだと思う。

「常識って、どこにあるんだろう……」
「それはねぇー」
「移ろいゆくモノですよ。」


ああ。
そう言うもんですか。


 もう突っ込むのは止めよう。
なんだか、知りたくない扉を開く事になりそうだ。

「なにはともあれ、その視線の正体は十中八九アスタールさんでしょうね。」
「確かにししょー、ねーさんが視線を感じ始めたって言う辺りから浮かれてるねぇ~。」
「兄さんなら、なにしてもおかしくないでしょう?」
「その認識が既におかしいと思う。」

 反射的に2人に突っ込みながらも、わたしはなんとなく『そうかも』と思ってた。
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