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遠方からの訪問者
456日目 外堀
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アルンを見送った後、まだ涙が止まらないコンカッセを工房に押し込みながら、一緒に彼女を見送っていたトーラスさんにも声を掛ける。
「お茶でもいかがですか?」
「ああ、有難いな。」
彼は嬉しそうに目を細めると、手を擦りながら一緒に入ってきた。
そろそろ、トーラスさんの方とも結論を出しておきたいんだよね。
妙な団体の事とか、妙な団体の事とか、妙な団体の事とか。
フィフィの言ってた、養女の事とか……!
アッシェ達に工房は任せて、2階に彼を案内するとお茶の用意をする。
外はまだまだ暑い季節だし、トーラスさんは温かいお茶は飲まないので予め冷やしておいたものを出して、飲みやすいようにストローを差しておく。
クマ獣人のトーラスさんは、ストローが無いとコップから飲めないからね。
2階は、本来ルナちゃん達のパーソナルスペースだから使う事は無いんだけど、今日は理由を話して特別に貸して貰う事になってたんだよね。
理由は……トーラスさんと二人きりで話す為、だ。
「2階は初めてだなぁ。」
「ルナちゃんとスルトの愛の巣ですからね。」
「上がらせて貰って良かったのか?」
「今日は、トーラスさんと、2人きりでゆっくり話したかったので。」
「俺と?」
キョトンとして目をしばたたいてからトーラスさんは、明後日の方向に誤解してくれた。
「いやいや、気持ちは嬉しいが、俺にはミーシャと言う妻が!」
「ナイナイ。」
即座に否定すると、分かりやすく落ち込んだ。
この人、体全体で喜怒哀楽を表現するから、獣人の割に感情が分かりやすいんだよね。
「まぁ、冗談は置いといて……」
「冗談だったんですか?」
「突っ込むなよ。」
ちょっと目を逸らしながら耳を伏せるのは、ちょっと落ち込んでるのかな?
だとしたら、ちょっとからかいすぎたかも。
少しして、ちょっとトーラスさんが落ち着いたところで改めて訊ねる。
聞くのは勿論、フィフィから聞いた養女の件だ。
「これは、うちのフィフィから聞いた話ですが、私がトーラスさんの養女になるってお話ですが……。
一体どうして、そんな話が出ているのかが分かりません。」
彼は頭をワシワシとひっかじると、頭を下げる。
「何度も言おうとしてたんだが……。言いそびれちまってなぁ……。」
「まず、私を養女にするというの自体も不思議なんですけど、ミーシャさんの子供を待つんじゃダメなんですか?」
「ああー……。俺とアイツの間じゃぁ、まず、子供はできないんだ。」
私の疑問に、トーラスさんは苦笑混じりに首を振りつつ答えた。
「獣人族はなぁ、同種族内で無いと子供は授からないんだよ。獣耳族ならごく稀になら可能性はあるんだが……。」
「そうなんですか。」
「意外と、獣人族以外のヤツは知らない話だから、その疑問は仕方ないけどな。」
確かに、他の種族と違って獣人族が同種族以外と……って言うのはあんまりみないかもしれない。
成程、納得。
と、心の中で呟きつつ、そうなるとこの村にトーラスさんの後継者となる人間が産まれる予定が無いのだと言う事に気が付いた。
「それじゃ、貴族としての立場を考えると……。」
「養子を取るしかない。」
「そういう場合の養子って、男性の方が良いんじゃないんですか?」
「実際、王都ではそういう目的で寄って来る貴族が沢山いたな。だが、『ただの貴族』にこの村を任せる気は無い。あいつらにくれてやる為にわざわざ危険を冒してこの村を作った訳じゃないからな。」
憎々しげに呟く彼の様子に、なんとなくその時の様子が目に浮かんだ。
エルドランでも、貴族街に近付いちゃったりすると『貴族に生まれたから偉い』って勘違いしてる人と遭遇する事があったけど、そういう人にしつこく付きまとわれでもしたんだろう。
「この村の創始者って、トーラスさんだけじゃないじゃないですか。」
彼等の子供たちを養子に貰うと言う事も出来るんじゃないかと思うんだけど……。
「俺もそうだが、あいつらも後ろ盾になるようなものが一切ないからなぁ……。」
「まぁ、普通はそうですよねぇ。」
トーラスさんが後ろ盾と言いだした事で、私に白羽の矢が立った理由が見えてきた気がする。
きっと、『リエラちゃんの恋を応援し隊』とか言うのの活動の一環とか言われそうな気もしてきて一瞬遠くを眺めてしまった。
「どうした?」
「いや……、『リエラちゃんの恋を応援し隊』の活動の一環なのかと……。」
「!? どどどどどどどどどどぉこでその話をぉ!?」
「特に怒ったり、解散しろって言ったりはしないから落ち着いて下さい。」
本心をいうなら妙な名称のファンクラブとやらは、出来れば止めてほしいけど……。
きっと、娯楽の一種として認識されちゃってるんだろうから、止めさせるのは難しい気がするしね……。
出来れば止めてほしいんだけど!
私の言葉に、少し挙動が不審なものの彼は落ち着いてから、なんとなく居心地悪そうに口を開いた。
そんなに微妙な気分になるんだったら、そんな団体やめちゃえばいいのに。
「確かに『リエラちゃんの恋を応援し隊』や『リエラちゃんを養女にし隊』や『リエラちゃんを甘やかし隊』の活動も無関係とは言えないんだが……。」
「え、最後の知りません。」
「え、もしかして藪蛇?!」
「一体いくつあるんですか……。というか、いっそ一つに纏めれたらどうですか?」
「おお、ナイスアイデアだな!」
いっそ消滅してくれたらもっといいです。
それにしても、養子を取るのに『後ろ盾』が欲しいなんて、直情型のトーラスさんだとは思えない発言で違和感しかない。まぁ、後ろ盾があっても、この村のコンセプトである『孤児に故郷を』って言うのを丸無視する様な相手は論外だって事で私が選ばれたのは理解したんだけど……。
まぁ、貴族から養子を取るとそのコンセプトはあっという間に消滅するよねぇ……。
下手すれば、初期のメンバーも追い出されん勢いで。
「それは置いとくとして、アスラーダとの結婚する場合にリエラの方でも貴族籍に入っていた方がいいらしいって聞いてなぁ……。」
「……それで『リエラちゃんの恋を応援し隊』の承認が降りたと……。」
「うん。まぁ、そういうのもあるんだがまぁ、ミーシャもお前さんの事を気に入ってるしなぁ。」
「でも、アスラーダさんと結婚する事になったら、結局私はここから出ていく事になりますよね?」
ソレを考えると、トーラスさん側が私を養子にするメリットは何もないと思うんだよね。
私が首を傾げていると、彼は嬉しそうに手を擦り合わせた。
「それがな、アイツと一緒にグラムナード公に相談して見たら、お前さん達の最初の子をここの後継者にすればいいって言ってくれてなぁ。」
そして、こんなこと言いだしたのだ。
いつの間にそんな人と話してるんですか?!
ついでに、『アイツ』ってアスラーダさんですか?!
あまりの驚きに私は声も出せず、口をパクパクさせた。
って言うか、何故か外堀が埋まってる?!
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☆プチ情報☆ 貴族街について
各町が、国家であったころの名残で、当時の貴族階級の人間もそれぞれの町の中では貴族階級を名乗っている事が多く、その当時の貴族街が今も残っている。
彼等は現在は貴族ではないものの、町中では今もそれなりの権力が持つ者も多い。
国からの扱いは平民あるが、町の行政を担っている事が多い。
最近は教育機関の充実に伴い、優秀な町人が増えて来ており一部の元貴族達は焦りを感じているようである。権力を笠に着る言動をする元貴族は、大概能力が足らず行政に関われていない傾向にある。
「お茶でもいかがですか?」
「ああ、有難いな。」
彼は嬉しそうに目を細めると、手を擦りながら一緒に入ってきた。
そろそろ、トーラスさんの方とも結論を出しておきたいんだよね。
妙な団体の事とか、妙な団体の事とか、妙な団体の事とか。
フィフィの言ってた、養女の事とか……!
アッシェ達に工房は任せて、2階に彼を案内するとお茶の用意をする。
外はまだまだ暑い季節だし、トーラスさんは温かいお茶は飲まないので予め冷やしておいたものを出して、飲みやすいようにストローを差しておく。
クマ獣人のトーラスさんは、ストローが無いとコップから飲めないからね。
2階は、本来ルナちゃん達のパーソナルスペースだから使う事は無いんだけど、今日は理由を話して特別に貸して貰う事になってたんだよね。
理由は……トーラスさんと二人きりで話す為、だ。
「2階は初めてだなぁ。」
「ルナちゃんとスルトの愛の巣ですからね。」
「上がらせて貰って良かったのか?」
「今日は、トーラスさんと、2人きりでゆっくり話したかったので。」
「俺と?」
キョトンとして目をしばたたいてからトーラスさんは、明後日の方向に誤解してくれた。
「いやいや、気持ちは嬉しいが、俺にはミーシャと言う妻が!」
「ナイナイ。」
即座に否定すると、分かりやすく落ち込んだ。
この人、体全体で喜怒哀楽を表現するから、獣人の割に感情が分かりやすいんだよね。
「まぁ、冗談は置いといて……」
「冗談だったんですか?」
「突っ込むなよ。」
ちょっと目を逸らしながら耳を伏せるのは、ちょっと落ち込んでるのかな?
だとしたら、ちょっとからかいすぎたかも。
少しして、ちょっとトーラスさんが落ち着いたところで改めて訊ねる。
聞くのは勿論、フィフィから聞いた養女の件だ。
「これは、うちのフィフィから聞いた話ですが、私がトーラスさんの養女になるってお話ですが……。
一体どうして、そんな話が出ているのかが分かりません。」
彼は頭をワシワシとひっかじると、頭を下げる。
「何度も言おうとしてたんだが……。言いそびれちまってなぁ……。」
「まず、私を養女にするというの自体も不思議なんですけど、ミーシャさんの子供を待つんじゃダメなんですか?」
「ああー……。俺とアイツの間じゃぁ、まず、子供はできないんだ。」
私の疑問に、トーラスさんは苦笑混じりに首を振りつつ答えた。
「獣人族はなぁ、同種族内で無いと子供は授からないんだよ。獣耳族ならごく稀になら可能性はあるんだが……。」
「そうなんですか。」
「意外と、獣人族以外のヤツは知らない話だから、その疑問は仕方ないけどな。」
確かに、他の種族と違って獣人族が同種族以外と……って言うのはあんまりみないかもしれない。
成程、納得。
と、心の中で呟きつつ、そうなるとこの村にトーラスさんの後継者となる人間が産まれる予定が無いのだと言う事に気が付いた。
「それじゃ、貴族としての立場を考えると……。」
「養子を取るしかない。」
「そういう場合の養子って、男性の方が良いんじゃないんですか?」
「実際、王都ではそういう目的で寄って来る貴族が沢山いたな。だが、『ただの貴族』にこの村を任せる気は無い。あいつらにくれてやる為にわざわざ危険を冒してこの村を作った訳じゃないからな。」
憎々しげに呟く彼の様子に、なんとなくその時の様子が目に浮かんだ。
エルドランでも、貴族街に近付いちゃったりすると『貴族に生まれたから偉い』って勘違いしてる人と遭遇する事があったけど、そういう人にしつこく付きまとわれでもしたんだろう。
「この村の創始者って、トーラスさんだけじゃないじゃないですか。」
彼等の子供たちを養子に貰うと言う事も出来るんじゃないかと思うんだけど……。
「俺もそうだが、あいつらも後ろ盾になるようなものが一切ないからなぁ……。」
「まぁ、普通はそうですよねぇ。」
トーラスさんが後ろ盾と言いだした事で、私に白羽の矢が立った理由が見えてきた気がする。
きっと、『リエラちゃんの恋を応援し隊』とか言うのの活動の一環とか言われそうな気もしてきて一瞬遠くを眺めてしまった。
「どうした?」
「いや……、『リエラちゃんの恋を応援し隊』の活動の一環なのかと……。」
「!? どどどどどどどどどどぉこでその話をぉ!?」
「特に怒ったり、解散しろって言ったりはしないから落ち着いて下さい。」
本心をいうなら妙な名称のファンクラブとやらは、出来れば止めてほしいけど……。
きっと、娯楽の一種として認識されちゃってるんだろうから、止めさせるのは難しい気がするしね……。
出来れば止めてほしいんだけど!
私の言葉に、少し挙動が不審なものの彼は落ち着いてから、なんとなく居心地悪そうに口を開いた。
そんなに微妙な気分になるんだったら、そんな団体やめちゃえばいいのに。
「確かに『リエラちゃんの恋を応援し隊』や『リエラちゃんを養女にし隊』や『リエラちゃんを甘やかし隊』の活動も無関係とは言えないんだが……。」
「え、最後の知りません。」
「え、もしかして藪蛇?!」
「一体いくつあるんですか……。というか、いっそ一つに纏めれたらどうですか?」
「おお、ナイスアイデアだな!」
いっそ消滅してくれたらもっといいです。
それにしても、養子を取るのに『後ろ盾』が欲しいなんて、直情型のトーラスさんだとは思えない発言で違和感しかない。まぁ、後ろ盾があっても、この村のコンセプトである『孤児に故郷を』って言うのを丸無視する様な相手は論外だって事で私が選ばれたのは理解したんだけど……。
まぁ、貴族から養子を取るとそのコンセプトはあっという間に消滅するよねぇ……。
下手すれば、初期のメンバーも追い出されん勢いで。
「それは置いとくとして、アスラーダとの結婚する場合にリエラの方でも貴族籍に入っていた方がいいらしいって聞いてなぁ……。」
「……それで『リエラちゃんの恋を応援し隊』の承認が降りたと……。」
「うん。まぁ、そういうのもあるんだがまぁ、ミーシャもお前さんの事を気に入ってるしなぁ。」
「でも、アスラーダさんと結婚する事になったら、結局私はここから出ていく事になりますよね?」
ソレを考えると、トーラスさん側が私を養子にするメリットは何もないと思うんだよね。
私が首を傾げていると、彼は嬉しそうに手を擦り合わせた。
「それがな、アイツと一緒にグラムナード公に相談して見たら、お前さん達の最初の子をここの後継者にすればいいって言ってくれてなぁ。」
そして、こんなこと言いだしたのだ。
いつの間にそんな人と話してるんですか?!
ついでに、『アイツ』ってアスラーダさんですか?!
あまりの驚きに私は声も出せず、口をパクパクさせた。
って言うか、何故か外堀が埋まってる?!
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☆プチ情報☆ 貴族街について
各町が、国家であったころの名残で、当時の貴族階級の人間もそれぞれの町の中では貴族階級を名乗っている事が多く、その当時の貴族街が今も残っている。
彼等は現在は貴族ではないものの、町中では今もそれなりの権力が持つ者も多い。
国からの扱いは平民あるが、町の行政を担っている事が多い。
最近は教育機関の充実に伴い、優秀な町人が増えて来ており一部の元貴族達は焦りを感じているようである。権力を笠に着る言動をする元貴族は、大概能力が足らず行政に関われていない傾向にある。
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