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謎の空間
婚約中は気付かなかったが、結婚してから不思議に思っている事がある。
私達夫婦の寝室を挟んで右側にあるドアの一つはお風呂場へのドア、もう一つは私の私室へのドア。
左側は私の夫、シルビオの私室のドア。
シルビオの私室の隣りは書斎。
その隣りは執務室。全て続いている。
だが、嫁いできてから毎日散歩する広い庭園から私達の部屋を見上げた時、あら?と思った。
シルビオの私室の部屋の窓と書斎の窓の間が他より広い。
私室のあの場所には本棚、書斎のあの位置にも本棚。
寝室からシルビオの私室へ行った事は何回もあるが、違和感を感じた事はない。
あの謎の空間はなんだろう・・・。
窓から見える部屋の様子は確かにシルビオの私室、書斎、執務室だ。
お風呂?お風呂があるのは廊下側だから庭側ではない。
自分の部屋側を見てみた。
夫婦の寝室、私室、書き物や刺繍をしている
書斎、窓の間隔は他と同じだ。
じっと屋敷見つめている私が気になり、専属侍女のパールが、
「奥様、どうされました?」と声をかけた。
パールは私が嫁いだ時に実家から付いてきてくれた私の頼れる“姉”だ。
「ねえパール、あそこ変じゃない?」
「あそこ?何処ですか?」
「あそこよ、シルビオの私室と書斎の間の謎の空間。窓の間隔おかしいでしょ?」
「あ、ホントだ!エルザ様、あそこは何でした?」とパールは少し興奮気味だ。
「シルビオの私室に入って庭を向いて立ったとして…あの位置は…暖炉と飾り棚があったわね。書斎は…本棚ね。」
「暖炉・・本棚・・事件の香りがしますよ、エルザ様!」
「パール・・・香りじゃないわよ、匂いよ。」
パールはミステリーが大好きだ。
何でも事件にしてしまう。
廊下にハンカチが落ちているだけで、
「これは⁉︎犯人が落とした物・・なのか・・⁉︎」と呟き、私も思わず、何の?と突っ込まずにはいられないほど、おとぼけミステリー好き人間なのだ。
「シルビオに聞いてみるからパールは推理しなくて良いから!」
「エルザ様!もし、秘密の隠し部屋ならば危険やもしれません・・・」
眉間に皺を寄せて話すパール。
「あ───そう…かもね。うん、もう部屋に戻りましょう。」
面倒になり私室に戻る途中、執事のジョバンニが声をかけてきた。
「奥様、庭で上を見上げて何を見ていたのですか?」
「鳥がいたのよ。巣でも作ってるのかしらと思って見ていたのだけど、違ったみたい。
飛んでいってしまったもの。」
「そうですか。巣など作られては大変ですから、見回っておきます。」
「そうね、お願いね。ジョバンニ、シルビオは執務室?」
「少し休憩を取ると私室に戻って休んでおります。」
「そう。じゃあ起きたら教えてくれる?ちょっとシルビオと話したいの。」
「かしこまりました。」
そう言うとジョバンニは姿勢も顔も崩す事なく去っていった。
「あの方って、愛想もクソもないですね。私、苦手です。それに怪しい感じですし。」
「パール、クソって…。ここは実家のサバーナ家ではないのですよ、言葉に気をつけてね。」
「はい、善処します!」
「そこは“はい”で良いのよ。」
二人でそんな話しをしているのを、隠れて聞いていたジョバンニは、
「エルザは相変わらず・・・・・・な。」最後の言葉は聞こえないほど小さく、誰に聞かれる事もない呟きをはいて、静かにその場を離れた。
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