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準備
しおりを挟む「やっぱりね。ああいう女って、狡賢いのよ。ホッとさせといて実は、ってやり方が好きなのよ。
ふん、おばさん舐めんな!
麻美、スマホ!」
お母さんは、スマホで写真を撮った。
そして、警察に電話した。
「家の前にずっと家の中を伺っている怪しい女がいるんです。…はい、はい、ずっとです。午前中からずっとです。
ウチの娘を追いかけ回しているんです。
怖いので追い払ってもらえます?
・・・はい、はい、よろしくお願いします。
住所は・・・・・です、はい、はい、失礼しますぅ。
来てくれるって。」
やっぱりまだいたんだ。
10分もかからず、警察の方が来てくれた。
パトカーの音に驚いたのか、あの人はいなくなっていた。
警察の方に、お母さんが写真を見せて、私の事情を説明してくれた。
私と同じ位の年齢のその警察の方は、
「少し悪質ですね、しばらくパトロールさせますので、抑制にはなると思いますが、外出の際は気をつけて下さい。
何かありましたら、こちらに連絡して下さい。交番に直接繋がりますから。」
そう言って、近くの交番の電話番号が書かれた名刺を渡された。
「ありがとうございます。」
そう言って、帰っていった。
「意外と良い男だったね。」
「もう!お母さん、それどころじゃないのに!」
「ごめん…でもとりあえず追っ払えたかな!」
「そうだね、警察呼んだのに、また戻って来たら、もう普通じゃないよ。」
とりあえず良かったと安心していると、陸が帰ってきた。
「姉ちゃん、あの女来たんだって⁉︎」
「うん…さっきまで外にいた…」
「マジか⁉︎頭おかしいやん!」
「警察呼んで、今帰った。」
「それでようやく帰ったんか?怖っ!」
「電話もかけてきた…」
「なんで?着拒したやん!」
「しらん…違う番号やったから出てもうた…」
「貸して!」
陸は着信履歴を見て、
「うわ、えげつな!」
と言って、また着拒した。
「この女、新しい携帯にしたんか、たまたま二つ持ってたんか知らんが、姉ちゃん番号変えるしかないわ。絶対またかけてくる、この女は。」
「私もそう思う…あ、陸、コンビニで荷物出してきて欲しいの。後、白い封筒。結婚式の中止のお詫び状、送るやつ。」
「麻美、封筒はお母さん今度買ってくるから、陸には荷物だけ出してきてもらって、早く帰って来てもらお。」
「そうだね、男が一人でもいたら心強いもんね」
そして、荷物を陸に預けて、無事送る事ができた。
陸はすぐ帰ってきてくれた。
「周り見たけど、いなかった。夜は警察がパトロールしてくれるやろ。
一体、何がしたいん、あの女。」
「知らん、でもああいう女は何するか分からんから、気をつけなあかんよ、麻美も陸も。」
「俺は大丈夫やけど、姉ちゃん、大丈夫?
俺、部屋の前にいよか?一緒に寝る?」
「ありがとう、陸。でも、みんなおるし、大丈夫。流石に二階までよじ登る事はない・・と思いたい。」
あの人の底知れない不気味さに私も母も陸も夜が来るのが少し怖かった。
父が帰ってきて、今日あった事を話した。
「お父さん、今日弁護士さんに会った。
麻美の事を相談したんだ。
お父さんはどうしても二人を許せない。
お金なんていらないが、お父さんは麻美を苦しめた二人を苦しめてやりたい。
そして、ここまで来て麻美を追い詰める、その女を今度はこっちが追い詰めてやる!」
「お父さん…」
「お前は何も心配しなくて良い。お父さんが全部やる。
だから、麻美はゆっくり身体を休めなさい。」
「私、もうあの人達には誰も関わってほしくないよ、特にあの人は何をするか分からないし、昼間お母さん一人なんだよ!
もし、お母さんやお父さん、陸に何かあったら、私、もう耐えられない…」
「そうさせない為に弁護士に相談してるんだ。警察にも相談して、近付かせないようにしてもらおう。」
「今もいるかもと思ったら…私…」
「俺、見てくるよ。」
陸が外に出て行ってしまった。
「麻美、お父さんとお母さんが守るから大丈夫だ。」
「私は良いの、お父さんとお母さんが心配なの…」
お父さんはあの二人を訴えるのを辞めはしない。
全財産をなくさない限り、あの人は私を追い詰めるのをやめないだろう。
どうしてそこまでするんだろう…。
私が何をしたらあんな事されるんだろう…
「見てきたけど、家の周りにはいなかった。」
と陸が言った言葉に、みんながホッとした。
夕食を取り、部屋に戻った私は、
持っていける物をカバンに詰めた。
私は明日、家を出る。
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