私は貴方から逃げたかっただけ

jun

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振り返ろう、一人で

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「ハア、疲れた。お昼は朝の残り食べよか。」

そう言いながら、瑞希が部屋から出てきた。

「うん、あっためるよ。待ってて。」

おかずを温めてテーブルに並べる。

二人でお昼ご飯を食べながら、

「瑞希、私高知に行こうと思うの。瑞希の仕事の邪魔しちゃうし、だから住所教えてくれるかな。」

「決めた?良かった!待って今、送る!」

「新しい携帯の方?」

「うん、麻美のはもう使わないでしょ?」

「お母さんとかの移したいから、私の貸して。」

「うん、分かった。急がなくていいよ、落ち着いたらあたしも行くよ。」

「ううん、一人で行けるから。のんびり行くし。」

「大丈夫?」

「大丈夫だよ。瑞希は仕事して。」

「うーん、着いたらちゃんと連絡してよ!」

「分かってる。チケット取れたら行くよ。」

「飛行機、大丈夫?妊婦さんにはあかんのちゃう?」

「そうだね、でも、長時間バスはキツイな…」

「じゃあ電車かぁ~結構乗り換えあるけど、どうする?」

「逆に気分悪くなったらすぐ降りれるから電車にしようかな。」

「じゃあ、切符予約しよう!」

「大丈夫、それくらい自分で出来るし、のんびり行くから、予約はやめとくよ。」

「いいの?大丈夫?」

「うん、大丈夫。」


明日の朝、出発する事になった。


そして、朝6時に瑞希の家を出た。


瑞希は、何回も一緒に行くと言ってくれたが、大丈夫だからと断り続けた。

「ごめん、子供じゃないから大丈夫だとは思うけど、なんか心配だから…。とにかく着いたら電話してね、絶対だよ!」

と何度も念を押した。


瑞希のマンションを出た後、新大阪までタクシーで行き、新幹線で岡山まで行って、高松行きの快速に乗ったら、あっという間に高松に着いた。

意外と早い…。

お昼には早いが、何も食べていない。
駅の近くのファストフード店に入り、飲み物とポテトを頼み、スマホの電源を入れた。

瑞希からのメッセージがたくさん来ていた。

最近の癖でつい電源を切ってしまっていた。

急いで返信すると、すぐメッセージが来た。

“携帯電話の意味ないし!心配した!”

と短いけど、心配してくれているのが分かる。

ごめんと謝り、今、休憩中だと送ると、
そこからまた電車に乗るけど気をつけてとすぐ返事がきた。

では行くかと、店を出て駅に戻り、目的地までの切符を買い、途中で乗り換え、瑞希の家に着いたのは、お昼もとっくに過ぎた頃だった。

大きくはないが今どきの家だった。
庭もあり、一人で住むには大きすぎるほどだ。
家の鍵を開け、中に入ると、家具には布がかけられ、使っていない事が分かる。
とりあえず、リビングに行き、窓を開け、空気を入れ替えた。
布を外し、ソファに座って、ようやく一息つけた。

あ、瑞希に連絡しないと!

スマホを出し、瑞希に電話をした。

「麻美、着いた?」

「今着いた。高松からが長かったね。」

「そやね、でも良かった、ちゃんと着いたんやね。」

「うん、こんな綺麗な家、汚すん勿体無いわ」

「ええよ、そんなん、勝手にあるもん、使って。」

「ありがとう、少し、疲れたから、また後で連絡する。」

「分かった~」


ホントに休もうと、ソファに横になると、すぐに眠ってしまった。

1時間ほど眠った後は、自分が寝る部屋の換気をし、カバーを外した。
それ以外の部屋は使わないので。

台所に行き、冷蔵庫を見ると、水とビールは入っているが、その他は何もはいっていないので、食料を買いに外に出た。

少し歩けば、スーパーもあるし、コンビニもある。

確かに便利だ。駅からも遠くない。
小学校や公園もある。
子供を育てるには向いてるだろう。

それでも、ここには住めない。


スーパーに入り、飲み物と食べられそうな物を買った。


周りの景色を見ながら、ゆっくり帰り、荷物をしまった後、お風呂に入った。

お風呂を出ても、外の音以外、何も音がしない一人きりの空間にホッとした。

あの日から今日まで、一人になる事がなかった。

側にお母さんや陸、瑞希がいてくれて、安心出来たが、やっぱり一人になりたかったんだと実感した。

いろんな事があり過ぎて、整理がついていなくて、どこから考えればいいのか分からなくなっていたが、ようやく一人でじっくり考えられる。

みんなに心配かけているのに、一人になり、ホッとしている自分は、我儘で勝手な人間なんだなぁと思う。

でも自分で決めたかった。
子供の事も、これからの事も、あの二人の事も。




今夜はあの日の事から考えよう、誰にも頼らず、一人で耐えよう。
でないと、ここから逃げ出せないから。















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