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しおりを挟む『最愛ならシャルへ
お別れの手紙が届くかもしれない恐怖で何かしていないとおかしくなりそうなので手紙を書き続けています。
シャル…今君はどんな状態なんだろう…。
あの手紙を読んでまた倒れてしまったのではないかと心配しています。
側にいてあげたいです。
泣いているなら怒鳴られたとしても涙を拭いてあげたい。
触るなと言われても抱きしめてあげたい。
嫌いだと言われても手を握っていてあげたい。
殴ってくれても良いからシャルの近くにいたい。
何をしても、何をされても構わないからシャルの側にいたいです。
俺を嫌っても憎んでも良いから側にいたいです。
シャルにされる事ならなんでも受け入れるからどうか、身体だけは壊さないで下さい。
ちゃんと食べていますか?
眠れていますか?
元凶の俺に心配されたくないだろうけど、とても心配です。
ロビンも元気ですか?
会いたいです。
シャルとロビンを抱きしめたいです。
愛しています。
シモン』
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
『最愛なるシャルへ
返事を期待しているわけではないですが、返事がないので、体調を崩しているのではないかと心配です。
俺のせいでシャルを苦しめてしまっている事が辛くて、申し訳なくて、悲しくて、情けなくて仕方ありません。
側にいたいです。
シャルの側にいたいです。
シャルに会いたいです。
ロビンにも会いたいです。
おはようと言いたいです。
おやすみと言いたいです。
愛していると言いたいです。
シャルの声が聞きたいです。
シャルの作ったクッキーが食べたいです。
シャルの淹れてくれたお茶が飲みたいです。
シャルとまた手を繋いで庭を散歩したいです。
シャルとロビンと三人で庭を散歩したいです。
シャル…何を言われたとしても何をされたとしても、会いたいです。
シャルに会いたいです。
愛しています。
シモン』
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
『最愛なるシャルへ
シャル、大丈夫?
とても心配です。
シャルが俺の存在自体が許せないのなら消えます。
だからちゃんと食べてね。
ちゃんと眠ってね。
俺のせいだと分かっているけど、心配で心配でたまりません。
俺には何をしても良いけど、シャル自身の身体をいじめないで。
ロビンの為にも身体を大切にしてね。
俺からの手紙は負担になってるのかな…。
そうだったらごめんなさい。
今回はこれで終わります。
とても心配です。
愛しています。
シモン』
読み始めてすぐに泣き出した私を心配し、アンナが隣りに座り、ずっと背中を撫でてくらていた。
4通目、5通目と読み進めて、読み終わった時はしゃくりあげて泣いていた。
シモンの言葉は嬉しいけど、腹が立った。
“ならどうして”
その思考に戻ってしまう。
シモンが私を愛してくれているのは充分分かっている。
それでもシモンは私を裏切った。
それは変えられない事実なのだ。
シモンの顔を見れば思い出すだろう。
シモンに抱かれたらあの場面を思い出すだろう。
別邸に入っただけであの日を思い出すだろう。
別邸の私のベッドはもう二度と使えない。
その事を叫ぶようにアンナに話した。
泣きながら喚く私をアンナは強く抱きしめて言った。
「その言葉を全部シモンに言ってやりなさい。
多分、シモンもそうして欲しいと思ってるわ。
今、シャルが何を思って、何に怒って、何を不安に思っているのか分からないし、何よりシャルに怒ってもらいたいと思っているわ。
だってシモンはシャルにどんなに嫌われても側にいたいのだもの。
シモンはシャルに捨てられるのが怖くて、今は赤子よりも弱いわ。
今のシャルでもコテンパンにやっつけられるから、徹底的にやってやりなさい。
これからの事を考えるのはそれからよ。
悪いのはシモン。
それは間違いないんだから、シャルが逃げていてはダメ。
真正面から正論を叩きつけてきなさい。」
アンナの胸で泣きじゃくる私はただ頷いていた。
そしてその夜、シモンへの手紙を書いた。
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