彼女の光と声を奪った俺が出来ること

jun

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レオンだけ




レオンは五歳になった。
俺と過ごす時間も変わらないが、王太子としての教育も始まった。

「父様、今日は計算を褒められました!
昨日出来なかった問題も今日は間違えませんでした!」と得意げだ。

「偉いな、レオン。明日はもっと出来るようになる。分からない事は父様に聞きなさい。」

「はい!父様、今日は…夕食を一緒に食べたいです…駄目…ですか?」と不安気に夕食に誘う息子の頭を撫でる。

「大丈夫だ、一緒に食べよう。でも母様達と一緒に食べないのか?」

「お母様は・・・僕とは、食べたくないので・・」
俯き、悲し気に話すレオン。

「今、話せるか?それとも夜父様に話すか?」
と聞くと、
「夜、父様に話します…。父様は食事の後、お仕事ですか?」
俺を見上げ、足に抱きつくレオンに、

「レオンの話しを聞く以上に大切なお仕事はないよ。今日は父様と寝よう。それならゆっくり話せるだろ?」

「やったーーーー!」と喜ぶレオンに目を細める。

レオンが剣の訓練があると部屋を出た後、俺はアネットを執務室に呼び出す。
執務室にはラインハルトだけ。
ギルバートはいない。

しばらくするとアネットとギルバートが一緒に執務室に入ってきた。
「そこで妃殿下に会ったから、一緒に来たが、珍しいな、妃殿下を呼び出すなんて。」
とギルバート。

「レオンの事で話しがある。」
と言うとソファに座ったアネットが、レオンがどうしたのか聞いてきた。

「今日の夕食はレオンと取る。その後俺の部屋に寝かせると約束した。問題ないか?」
と聞くと、
「構いませんが、いつもそんな事を言わないのにどうしたのかしら?王太子教育が始まって我儘になってるのかしら?」
と言った。

「お前はレオンがどれだけ頑張っているのか知らんのか。そしてレオンは今の今まで我儘など言った事はない。
ましてや俺と夕食を取ることの何が我儘なのだ?
お前は幼い頃、忙しくてしばらく会えなかった父親に一緒にいてとねだった事はないのか?」

バツが悪いのか黙り込んだアネットに、

「レオンは、は僕と食事するのが嫌いだからと言っていたが、どういう事だ。」

その言葉にビクッと肩を微かに揺らした。

「ジェラルド、もういいだろ、妃殿下も忙しくてイライラする事もあるんだから、そんなキツく言わなくても良いと思うがな。」
とギルバートがアネットを庇う。

「ギルバート、やめろ。お前が口出すのは間違っている。」とラインハルトが間に入る。

「アネット、ギルバート、お前達は何年ここにいる。
特にギルバート、お前は子供の時からだ。
ここがどれだけの目があり、耳があると思っている。
俺が気付かない訳がないだろ?

俺にお前達をどうこう言う資格はない。
アネットが離縁を求めるなら、離縁しよう。
だが、レオンを蔑ろにしているなら俺は持てる力を全て使ってお前を潰すぞ。」

俺の言葉にアネットの顔色は真っ青になり、ギルバートは下を向く。

「前にも言ったが、俺を気に入らないのなら側近を辞めても構わない。
主をとうに敬えないのだから、何れこうなると思っていた。
だがギルバートは友人だ。
アネットは形だけでも妻だ。
それに俺は王位を継ぐ気はないから、今のうちにリーツか、レオンに付いていた方が良いぞ。」

俺の最後の言葉に三人が息を呑んだ。

「待て、今なんと言ったんだ、ジェラルド⁉︎」
とギルバート。

「お前がそれを聞くのか?妃殿下を寝取って?部下にも友人にも妻にまで裏切られるような人間なんぞ国王になんかなれるわけないだろ?」
淡々と話す俺に、
「ま、待ってくれ、嘘だよな?本気じゃないだろ?」
焦り出したギルバートに、アネットの顔色は青から白に変わった。

「今すぐではない、レオンはまだ小さいのだから。父もまだまだ現役だ。
とにかくお前達が望むように考えよう。
もう俺は疲れた…。
済まない、後は明日やるので今日は皆帰れ。」

俺は執務室を出て、中庭に出た。

レオンが小さい時、よく散歩していた場所だ。

ぼんやり歩いていると、リーツとリーツと少し前に結婚したアーヤが遠くに見えた。
今はあまり誰とも会いたくないので帰ろうとしたら、リーツに見つかった。

「兄上、珍しい散歩ですか?」とアーヤを連れてやって来た。

「ああ、執務室を修羅場にしてきたから逃げてきた。」と言えば、
「「は⁉︎」」と声が重なった。

「俺は確かにアーリアに酷い事をした。
反省も後悔もした。
皆に冷たい目で見られるのにも耐えた。
誰も近寄らず、誰も俺の側にはいなくなった。それでも自分が悪いのだと耐えた。
今はレオンがいてくれる。
レオンだけが俺の側にいてくれた。
そのレオンをお前達は蔑ろにしてるのか⁉︎
お前もレオンを邪魔だとでも思ってるのか⁉︎」

「待って待って、なんなの?何があったの?」
と慌ててるリーツに、

「済まない…何でもない。邪魔して悪かった…。」

アネットとギルバートの事に気付いたのはだいぶ前だ。
レオンが二歳の頃だろう。
俺がアネットに妻とは思えないと言った後からだ。
だから仕方ないと思った。
だがレオンを悲しめているなら話しは別だ。

「お義兄様、リーツも私も可愛いレオンを邪魔などと一度も思った事はございません。
思う事があるのなら、リーツにだけでも話しては頂けませんか?」
とアーヤが言ってくれたが、

「いや、済まなかった、リーツ、アーヤ、父上の所に行かねばならない、じゃあな。」

「兄上!」とリーツが呼び止めるのを無視して父の執務室へ向かう。


急に来た俺に驚く事なくペンを走らせながら座るように言った父に、
「アネットと離縁しようと思います。
こんな結果になり、申し訳ございません。」
と言うと、やっとペンを置いた。

「ギルバートとの事か?」

「はい。好いた者同士一緒にしてやりたいと思います。ギルバートもアネットもこんな私をずっと支えてくれました。
もう私は大丈夫ですので、二人を解放してあげたいです。」

父が俺の向かいのソファに移動し、侍従にお茶を頼み俺を見た。
「ジェラルド、もうお前は充分反省した。お前の幸せを考えても良いのだぞ。」

「私にはレオンがいます。それだけで充分幸せです。俺にはあの子しかいませんから。」

「確かにレオンはお前に懐いている。幼い時からお前を探しては泣いていた。
だが、まだ母親は必要な年齢だ。お前は再婚出来るのか?」

「しません。側近に妻を寝取られる男に誰が嫁いできますか?
そしてその妻は、どうやらレオンが邪魔なようです。

レオンは先程私に言いました。
今日は父様と夕食を食べたいと。
お母様は僕と食事をするのが嫌いだからと。
あの聡い子がそんな事を言うのは、一度や二度、嫌な思いをしたのではないのでしょう。
私からレオンを遠ざけていながら、この有様、もう離縁するしかないでしょう、父上。
二度と結婚など致しません。」

「まさか、アネットがレオンを虐げているとでも言うのか⁉︎」と声を荒げる父に、

「知りません。私は王太子妃宮には未だかつて夫でありながら入れてもらった事がないのですから、
レオンから聞いたのはさっきですし。」

またいつもの顔になり、
「アネットの事は今すぐには対応出来ん。
もうすぐレオンの生誕祭があるからな。
その後病気療養を理由に離縁としよう…。

あの子はあの子で良くやってくれていた…あまり責めてやるな。」

「俺がした事とアネット達がした事は何が違うのでしょう?
俺は城中、国中から嫌われ、あの二人は不貞をしても庇われるのですね。

分かりました、それでは失礼致します。」

誰も彼もが敵に思え、嫌味しか出てこない。

「ジェラルド、待て、待ちなさい!誰もお前を嫌ってなどいない!」

無視して執務室を出た。



目の前には母がいた。
















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