7 / 17
生徒会、ケイトに目をつける
しおりを挟む俺はずっと一つ下のザイルとサミーユ達を見ていた。
「おい、今の見たか、あのザイルの妹は入学式でもピンクに絡まれてたぞ。
よくピンク達が言う“悪役令嬢”はあの子じゃないか?」と会長アクセルが言うと、
「いやいや、悪役令嬢は絡まれないでしょ!」
と会計キーガン。
「違うわよ、キーガン。会長が言いたい悪役令嬢は、自称ヒロインを断罪する役の悪役令嬢の事よ。」と書記デボラ。
「なるほど、そっちか。」
そうなのだ、あのザイルの妹ケイトという子の立ち位置を決められずにいた。
「お!タイラーがあの子に興味を持ったぞ!
さてはお前がヒーローだな。」
「アクセル、止めろ!“ヒーロー”なんて言葉を出しただけで楽しみが半減する!」
「あら、楽しみって、何を楽しんでいたのかしら、タイラー。」
もう一人の副会長コリンナは面白そうに俺に言う。
「まあ!副会長に春がとうとう到来したのですか⁉︎」デボラが手を合わせ、タイラーを見て目をキラキラさせている。
「マジすか、副会長⁉︎言われて見ればあの子黒髪、赤眼でそれっぽいかも!副会長は銀髪、紫眼だから並んだらお似合いかも!」
キーガンがニヤニヤしながら言うので、何故凝視していたのか教えてやった。
「お前達は本当に好きだな、この手の話しが。俺はあの子とサミーユを見ていた。
あの子、ケイトと呼ばれていた子とサミーユがくっ付く、と想像してただけだ。
そして、ドリーと呼ばれている女子はサミーユが好きだけれど、サミーユはケイトが好きだからその気持ちをひた隠している、“見た目はクールビューティー、中身は乙女”だな、と思って見ていただけだ。」
「何それ、タイラー、妄想してたの!
じゃああのピンクの女の子は?」
アクセルが面白がって続きをせがむ。
「ピンク嬢はザイルだな。いつも一緒にいる優しい先輩、でもザイルはケイトの友達を全員“妹”として見ている。が、気付けばピンクを好きになっていたってパターンが良いと思う。」
「じゃあ副会長、ピンク君は?」キーガンも気になったようだ。
「ピンクは、マレーヌと呼ばれていた食欲旺盛な女子だ。
あの見事な食べっぷりと自然な毒舌に惹かれ始めていると見た。
マレーヌは卒業間近になって、やっと自分の気持ちに気付くな、多分。」
「どんだけ観察してたんだよ、タイラー。
じゃあ、ケイトは?」
「そこが決められなかった…。ずっと見ていたが、サミーユとも言い切れないし、ピンクではない。これからに期待、ではないだろうか?」
「タイラー、生徒会メンバーではどうなる?」
「喧嘩になるから言わない。」
「あら、聞きたいわ。私の相手は誰?」
「コリンナはアクセルと一緒になれば良いと思っている。シャルロットは視野が狭い。前しか見ないから、ああしてすぐよく知りもしないのに絡んでいる。
自分では良かれと思って注意しているつもりなのに、周りはそうは思わない。
横からも後ろからも見ていれば気付くのに、真ん前しか見えない。
そんな見方しか出来ない王太子妃などいらん。だから俺はコリンナの方が向いていると常々思っている。
でも、これを言った所で変わらないものは変わらないし、嫌な空気になるから言わない。」
「そう思っているのに言っちゃうところがタイラーだよね~。だそうだよ、コリンナ。」とアクセル。
「そんな事言われても、“じゃあ私が王太子妃やります”って立候補出来る訳ないじゃないの、バカなんですの、タイラー!」
憤慨しているコリンナだが、顔が真っ赤だ。
「じゃあじゃあデボラは?」
真っ赤な顔でキーガンが聞いてきた。
「言って良いのか、キーガン?」
「あーやっぱり良いです・・・」
「え、なんでよ!教えて下さい、副会長!」
デボラが食い付いた。
「・・・・・よく…分からないが…デボラとキーガンがくっ付けば良いなとは思っている。」
「「ハア~⁉︎」」
デボラとキーガンが同時に憤慨しているが、
デボラは真顔、キーガンは真っ赤な顔なので心の内が丸見えで、二人以外全員がキーガンを憐れんで見た。
「勘弁して下さい、副会長!どうして私がキーガンとなんて!」と怒っているが、私は絶対二人はくっ付くと思う。婚約者もいないし。
キーガンは誠実にデボラへ愛情を向けているのが分かるから。
そしてデボラも気付き始めている事も皆んな知っている。
うん、多分当たる。
「で、自分は?」
「は?」
「だからタイラーは?どうなるの?」とアクセルが問う。
「それが全く分からん。想像つかないな。」
「ふぅ~ん、“これからに期待”って事だね、タイラー。」
何故か嬉しそうに言うアクセル。
コリンナもニヤニヤしている。
デボラとキーガンは未だに騒いでいる。
「まあ、そういう事だな。」
ま、自分の事を妄想なんて出来ないし、なるようになるだけだ。
乞うご期待、だな。
「よし、今日の昼休みは面白かったな!」
アクセルが立ち上がったので全員食堂を出た。
チラッと振り返り、ザイル達を見るとケイトが目に入った。
「タイラー?どうした?」とアクセルに声をかけられたので、
「なんでもない。」と答え教室へ向かった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
449
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる