お前が結婚した日、俺も結婚した。

jun

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変わらない顔

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結局なんも今後の話しは出来ないまま今朝も慎吾を仕事に送り出し、マンションにいる俺。

仕事はパソコンがあれば何処でも出来るので構わないが、さすがにそろそろ帰りたい。
友利とも今後の話しをしないといけないし、今夜こそと思いながらも、家事に勤しむ。

そんな午前中、インターフォンがなった。
カメラに映り出された顔は・・・母だった・・。

え…なんで…なんでここに俺がいる事を知ってる…

母は10年以上も会っていない。
親父も会ったなんて聞いた事がなかったから、今母が何処にいて、何をしてるのかなんて知らない。
知りたいとも思わないが。

あの数ヶ月、母は親ではなかった。
ただの女で、俺を案じる事はなかった。

すっかり存在も忘れていた母が今、下でここの部屋番号を押している。

居留守を決め込むが、何故今頃ここに来たのか。

俺は親父に電話した。

「親父、ここに、このマンションにあの人が来てる。」

「あの人?」

「母さん」

「ハア⁉︎何で⁉︎」

「知らない。どうしてここを知ってるのかも分からん。どうすればいい?俺、あの人帰ったら一旦帰るわ、全く慎吾と話せてないけど。」

「え⁉︎まだ話せてないの?二日も?」

「色々あったんだよ!とにかくあの人には会いたくない。」

「分かった。そいつが帰ったら連絡して。迎えに行くから。」


じっとモニターの母を見ていた。
とても10年ぶりに会いに来た母親の顔ではなかった。
あの時と変わらない嫌悪感を露わにした表情。

きっと俺も同じような顔をしている。

身綺麗な母は多分再婚して、良い暮らしをしているんだろう。

俺が慎吾と付き合っていた、または付き合っていると何処かから耳にして、罵りにでも来た、そんなところだろうか。

この人は何も変わらない。
自分の理想を押し付ける傲慢な女。

俺を有名中学に入れたくて毎日同じ事を言っていた。

『貴方はちゃんとしたところに就職して欲しいのよ。蓮は成績は良いんだから受験しなさい。』

『お父さんは良い大学を卒業して、良い会社にも内定もらっていたのよ、なのに作家になっちゃったの。売れたから良いけど、やっぱり普通の会社員が一番よ』

子供の時から何度も聞かされた。

俺は親父の部屋が大好きだった。
本の匂い、沢山の本、それらに囲まれて仕事をしている親父が大好きだった。
それを母は全否定していた。
段々母が嫌いになっていった。
だからと言って何もかも反抗していた訳ではない。
ただ、勝手に決められるのが許せなかったから、中学受験は絶対しないと抵抗した。
親父も間に入ってくれて、やっと母は諦めた。

考えてみたら俺は、両親の仲睦まじい姿なんて見た事がなかった。

ボォーとそんな事を考えていた。
母は諦めたのか、どうやら帰るらしい。

俺はベランダに出た。昨日と同じくこっそり下を覗いた。

ツカツカツカツカ、聞こえもしないけどヒールを鳴らしているのが歩き方で分かる。
イライラしているのだろう。

「とっとと帰れ、クソババア」

母の後ろ姿に呟いた。

ベランダから父に電話をした。

「今帰った。イライラしてるみたいだ。何なの、あの人。」

「分からん…今から行って大丈夫か?」

「うん。また来るかもしれないから。」


俺は慎吾に母親が来た事、また来る可能性がある事、会いたくないから一旦帰る事をメッセージで送った。

『大丈夫か?分かった。また会える時は連絡して欲しい。』と返事が来た。
分かったと返事をして、親父が来るのを待った。
生ゴミと冷蔵庫の中身が気になるが、また近々来れば良いかと、持ち帰る段ボールを玄関に運び、散歩待ちの犬のように玄関で靴を履いて待っていた。

しばらくするとインターフォンがなり、

「あ…」

靴履いてた…

急いで靴を脱いでオートロックを解除した。

すぐに親父が来て、

「済まん、大丈夫か?」と心配気に声をかけてきた。

「うん。会わなかったしね。」

俺は段ボールと手荷物を持って部屋を出た。

駐車場に停めてある親父の車に荷物を積み、助手席に座った。

車が動き出し、しばらく走ってから親父に聞いた。

「なんであの人と結婚したの?」

「慎吾と同じ。」

「え?」

「慎吾と同じだよ、俺もお前の母親にヤラれた。それで出来たのが蓮。」

「マジ?」

「マジ。」

「なんか…ごめん…」

「なんで蓮が謝る。蓮は俺の大事な息子なのに。」

「だって・・・俺がいなかったら…結婚する必要なかった…」

「嫌いだったの、あの人の事。でもしつこくてね。

全く慎吾と同じだよ。飲み会でたっかい精力剤と眠気が出る薬飲まされた。
気付いたら隣りにあの人が寝てた。
妊娠して結婚した。
その後、会社辞めたの。
良い暮らしさせたくなかったから。
なのに結構売れちゃってね、まあ、蓮に苦労かけなくて良かったけど。

だからあの人は俺を憎んでるんだよ。
俺からの愛情を一欠片ももらえなかったから。

抱いたのも、記憶がなかったあの時一回だけ。
でも可愛い蓮が生まれた。
可愛かったなぁ、蓮。

こんな親だけど、俺は蓮を愛してるよ。
だから自分がいなければなんて言っちゃいけないよ。」

考えてもいなかった両親の馴れ初めに驚き過ぎて何も言えなかったが、親父の言葉だけは頭に入った。

「あんな母親はいらないけど、親父が父親で良かった…ありがとう…」

泣きそうになるのを堪える。

「あの人、だいぶ前に再婚したらしいんだけど、やっぱり愛されてはいないみたいだよ。
だから誰かのせいにしたいの。
俺のせい、蓮のせい、隼也のせい。
そういう人なんだよ、あの人は。

でもどうしてあそこが分かったんだろう…」

思いつくのは山口。
でもなんで山口?

「親父、あの人、今の苗字は何?」

「山口。ちょっだけ大きい会社の社長の奥さんだって。」

「山口・・・そこが繋がってんのか…」

「何、知ってるの、社長の事。」

「昨日、中学の同級生が突然マンションに来た。前に隣りに住んでたらしいんだけど、ソイツの名前、山口。」

「あーーーなるほど…。前の奥さんのお子さんいたな…、蓮の同級生だったんだ…。
凄いね、蓮って引きが強いっていうかなんていうか、凄いね。」

「全く嬉しくない引きだけどな。」

新事実に驚きつつ、俺と親父は実家に帰った。
















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