お前が結婚した日、俺も結婚した。

jun

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親父の逆襲

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お疲れ様会から数日後、我が家にはお客さんが毎日来る。
それも出版社の人。
出版社の人と言っても、昔からよく来てた人だけど、随分真面目な顔で毎回帰って行く。
その人、草野さんは親父の友達らしく、毎回楽し気に話して、俺にも気さくに話しかけてくれる明るい人なのだが…。
草野さんと一緒に出掛けることもあった。

今度の作品は大作なのか?と思っていた。

そんな事を思っていた二週間後、親父に言われた。

「来週、俺の記事出るから。
先に謝っとくね。俺、隼也の持ち家のマンション行くから、蓮はマンション戻った方がいいよ。
多分、ここに記者さんやらなんやら押しかけてくるから。」

「え、え、どゆこと?何、何の記事出るの?
何やらかしたの⁉︎」

動揺する俺に親父は言った。

「雅の悪事をぜーんぶ言っちゃった。」

あっけらかんと言った親父を、俺は口をポカーンと開けて見つめてしまった。

「なんかどうやるのが、一番あの人にダメージ大きいかなぁと思ったら、これかなと思って。
調べようと思ったら俺の元奥さんが雅って分かるでしょ? 

有名週刊誌の表紙にババーンと出ちゃったら、どんなに否定しても追いつかない。
第二弾が出るから、一カ月は騒がしくなるよね。
でも本当の事だから訴えも出来ない。
例え訴えられても俺に非は無いんだから出るとこ出たっていい。

全力で雅を潰す。

ごめんね、蓮の母親なのに。」


「俺は良いよ、あの人の事、もう母親とも思ってないから。
それより親父は大丈夫なの?
隼ちゃんだって騒がれるんじゃないの?
俺のせいだよね、なんか…ごめん…」

申し訳なかった。
俺さえいなければ親父はこんなに苦労する事もなかった。

「そんな顔しない、蓮。
前にも言ったよね、俺は蓮が何より大事なの。
蓮を傷付ける輩は父親として退治しないとね。
ほらほら、荷造りして。さっさと逃げるよ。」

それから俺と親父は生ゴミ系を片付けて、食材は俺のマンションに親父が荷物と一緒に車で運んでくれた。

久しぶり帰ってきたマンションの空気を入れ替えて、慎吾や西山達にしばらく実家には近寄らないように伝えた。
詳しくは直に会って伝えると送ると、今日来るとなり、住所を送った。


掃除をした後は何もする気がなくて、飲み物も食べ物も全部デリバリーで届けてもらった。
ついでに、今日は何もしたくないから自分で適当に持ってこいとメッセージを送った。


一番早く到着したのは西山。
「何、何があったの?」
ビールとつまみと途中で買ってきたらしいTシャツを取り出し、さっさとスーツを脱いでTシャツとパンツ一丁になった。
「お前、聞く気満々だな。」

「まあな、なんかやり始めたのは分かったから、大人組は何をやったのか気になって仕事が捗らなかった。」

次に慎吾と雄大が到着した。
パンツ一丁の西山に、

「あ、俺もそれが良い!」と言い、二人ともスーツを脱いでインナーとパンツだけになった。

「なんか服着てる俺が恥ずかしいから、俺もパンツになる。」

「ダメだ!蓮はダメだ!」と慎吾に止められたのでやめた。


テーブルに各々買ってきたものを出して、てかとに摘みながら、週刊誌に親父の記事が出る事を話した。

「記事って何の?親父さん何やったの?」

「何もやってない。あの人の事、全部話したらしい。」

「「「え⁉︎」」」

「俺がどうやって生まれたのかを赤裸々に語ったんだとさ。」

「「「マジで⁉︎」」」

「マジで」

「そりゃあ実家にはいれんわな。」

「やるときゃやるなぁ、さすが親父さん。
覚悟を決めた男はかっけーー!」
と雄大。

「こんな手使われたら、あのサイコパスママも手出しできねえな」
と慎吾。

「うん。絶対ネットで顔バレするだろうし、これから追いかけ回されるだろうな、ざまあみろ、粘着母。」
と西山。

「俺…あの人と顔同じなんだけど…」

「「「あ・・・」」」

「お前とサイコパスは似てない。お前の方が美人だ!」
慎吾が叫ぶと、

「うん、それは間違いない。どちらかと言うと隼也さんに似てる。」
雄大は素っ頓狂な事を言う。

「確かに。隼也さんに似てる。ま、隼也さんも親父さんも美形だからな。」
西山が雄大に同意してるが、似てるかな。

「俺はあの人の事、美人だなんて思ったことねえよ。よっぽど遠藤の母ちゃんの方が美人だった。」

「また遠藤!蓮は遠藤思い出さないで!」
慎吾はどんだけ遠藤嫌いなんだよ。

「蓮は美形に囲まれてたからな、慎吾も男前だし。」

「そういう雄大も西山も俺は美形だと思うが。だってお前ら他校の女子にチョコ貰ってんの見たもん。
俺は友利からの義理チョコしか貰った事ないし。」

「今度は友利!許さん、友利!」

「お前に友利を怒る資格はない。本命チョコ、たくさん貰ってたくせに。」
と言ってやった。

「蓮はさ、美人過ぎて、女の子は友利くらい神経図太くないと近付けなかったんだよ、きっと。

そういやさ、高校ん時、お前から飴貰えると彼女出来るって噂あったの知ってる?」
と雄大。

なんじゃそりゃ⁉︎

「知らん。俺、そんなに飴なんか配ってないけど。」

「だから貴重なんだよ。蓮からいちごの飴貰えたら彼女出来るって皆んな騒いでたぞ。
俺はいつもレモンだったが。」

確かに雄大にはレモンをあげていた。
雄大は爽やか青年だったから。

「え?俺いつもミントだったけど。」

「あ、俺なんでお前がミントなのか知ってる。蓮に教えてもらったから。」

なんで渡してた本人が忘れてんのに西山が覚えてるんだよ。

「え、俺なんか言ったっけ?」

「慎吾はいつも女とチュウするからミントなんだってさ!」
ゲラゲラ笑う西山。
そう言われてみればそんな事言ったような気がする。

「ハア⁉︎」と慎吾が慌てている。

「じゃあ、蓮はその人見て、飴渡してたの?」

「んーー無意識?」

「え?俺にはいつも黒飴だったけど⁉︎」

「西山はいつも頭使って疲れてるだろうからって黒飴を渡していたのは覚えてる。」

「お前、黒飴だったの⁉︎ださッ!」
と慎吾。

「お前はミント飴を渡されているくせに、浮気者!」
西山に言い負かされている慎吾。

「じゃあなんか特別な飴とかあったの?」

と何故か飴の話題になっているが、確かに高校時代、大阪のおばちゃんのように飴を持っていた。

「特別かどうかは知らんが、キャラメルをあげる場合もあった。冬限定だったが。」

「「「キャラメル⁉︎」」」

「そんなの貰った事ない!」と抗議する慎吾。

「キャラメルは頑張ってる奴とか、良い事した奴にあげていた。夏は黒飴だ。」

慎吾と雄大は西山を見た。

「フフーン、どうだ、羨ましいだろう!」
西山がパンツ一丁で胸を張っている。

「西山はあのクラスをまとめあげていた。一番頑張っていたのは西山だ。
ただ、キャラメルをたまたま持っていなかったから、西山は黒飴に固定しただけ。」

「俺もキャラメル欲しかった!俺も頑張ってたのに!」と雄大と慎吾。

「雄大も頑張っていたが、雄大を見るとレモンを渡していた。それほどお前は爽やかだった。」

「なんか褒められた。嬉しい。嫁さんに報告する、蓮に褒められたって。」

雄大はいつも眩しかった。
優しくて爽やかで明るかった。


「俺は?蓮、俺も頑張ってたのに…」
一人拗ねている慎吾。

「慎吾はポケットに女の子から貰った飴やお菓子が入ってたから俺があげるほどでもないと思ってた。」

落ち込む慎吾。

「そういうところが蓮の信頼を勝ち取れないところだよな。」
と雄大。

そう、そういうところ。

「勝手に知らない女子が渡してくるんだから仕方ないのに…。」

「無意識のモテ発言だ…サイテー」
西山が突っ込む。


こうして親父の話しではなく、飴玉の話しでその夜は盛り上がって終わった。


次の週、週刊誌が発売された。
















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