信じないだろうが、愛しているのはお前だけだと貴方は言う

jun

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好きでもない女に

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ノア視点


あの日、どうして真っ直ぐ帰らなかったのだろう…。


あの日、同期のベンダーに久しぶりに飲みに行こうと言われて、仕事と結婚式の打ち合わせなどで全く飲みに行ってなかったのもあり、たまには良いかといつもの店に行った。

騎士団行きつけの店で、質より量が重視の店で、安くたくさん飲めるし、女将さんの人柄も良い飲み屋だ。
そこにしばらく前から、借金があるとかでバウンズ男爵家のエリー嬢が働き始めたという。

働いた事などない令嬢は、最初は見ていられないほどオロオロしていたが、最近は慣れてきたのか、失敗も少なくなってきたみたいだとベンダーが教えてくれた。

俺は婚約者のラミリア以外には全く興味もないので、ふぅーんと聞いてからはベンダーと他愛ない話しをしながら酒を飲み、仕事の事やベンダーの失恋話を聞いたり、俺の結婚式の話しなどをして、そろそろ帰るかという時、振り返った拍子に後ろにいたエリー嬢にぶつかってしまった。

別のテーブルを片付けて戻る所だったらしく、汚れた皿や飲みかけのグラスが俺の制服に見事にぶちまけられた。

「申し訳ございません、すぐに拭きます。本当に申し訳ございません。」

そういって、テーブルを拭いたであろう台拭きで制服を拭き始めた。

「エリーちゃん!そんなので拭いちゃダメよ!あーあ、これは早く洗わないとシミになっちゃうわよ。ノア様、ウチの旦那のに着替えて下さいな、軽く洗いますから。」

そう言われて、宿屋としても使っている客間に通され、エリー嬢が着替えを持ってきてくれた。

「ほ、ほんとに、すみませんでした…」

「別にいいですよ、もう戻ってもらっていいですから。」

「あ、あの、これ、お水置いときます…どうぞ…。」

「ありがとう。頂こうかな。」


久しぶりの酒で酔ったのか、やけに喉が渇いたので水を一気に飲んだ。

「だ、大丈夫ですか…」

「あ、ああ、大丈夫だ…着替え…渡してもらえるかな…」

なんだ…急に、眩暈が…。

制服を脱ぎ、シャツに腕を通した所で意識を無くした。

どれくらい時間が経ったのか分からない…
頭が痛い…
なんだ?
揺れてる?
下半身もなんだか…
あ、ヤバい、なんだこれ、出る・・
ウッ・・ハッ・・・


なんだ、ララ?
今日ララに会ったっけ?

え?


ズキズキする頭で考えても何も分からず、何回か瞬きしてようやく視界がハッキリした。


俺が見たのは、俺の上で腰を振っているエリー嬢だった。

「ノア様、お目覚めになられましたか?」

顔を赤くし、息も荒い、今日初めて会った好きでもない女に、俺の初めては奪われていた。














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