27 / 78
ベンダーの話
ノア視点
今日は団長に復帰すると挨拶に来ているが、俺の状況を説明し、薬の使用履歴がないかを調べさせて欲しいとお願いするつもりだ。
団長の執務室に入り、挨拶した後、休んでいた理由を説明したいので、時間を頂けないかと聞いた。
「ノア、何があった。そんなに痩せて大丈夫なのか?」
「実は・・・女に嵌められました…」
団長に全てを話し、薬に違法性がないかを調べたいと言うと、
「そんな薬は一度も聞いた記憶がないが、ないのであれば国の許可を取っていないという事だ。その薬の現物があるなら早かったんだが…。」
「念の為に調べてもよろしいでしょうか?
やれる事は全部やりたいんです。」
「それは構わないが、婚約者の彼女は大丈夫なのか?」
「最初は俺に裏切られたと思って領地で静養してましたが、今は俺を信じてくれています。最後まで俺は諦めたくないんです。」
「私も出来る事は協力しよう。犯罪紛いの行為など許せるものではないからな。
でも、無理はするなよ。」
「はい、ありがとうございます。」
団長の執務室を出て、詰所に寄ると、ベンダーが駆け寄ってきた。
「ノア、大丈夫か?何があった?」
「お前は何も聞いていないのか?」
「何も聞いてない。飲みに行った後から休んでただろ、俺もあの時は酔っ払ってて、お前が着替えに行ったってとこまでは覚えてる。しばらくかかるから先に帰った方がいいんじゃないかって言われて帰ったんだと思う。気付けば自分の部屋だったから。」
「そうか…覚えてないか…。」
「何だよ、何があったんだよ!そんなに痩せてるし、俺が飲みに誘ってからだから、心配したんだよ。」
「ここでは言えない…。でも他言しないならお前を信用して、話してもいいが、極力話したくない…。」
「ごめん、俺が誘わなかったら…」
「ベンダーが悪いわけじゃないから、気にしないでほしい。」
「ありがとう。それで、話しはどこでする?飲みに行くのは嫌だろ?」
「うちに来て欲しいんだ。今、安心出来るのは自分の部屋だけだから…。」
「分かった。仕事終わったらノアんち行くよ。」
「済まない。協力してほしい事があるんだ。」
「分かった。今日はもう帰るんだろ?明日に備えて今日は帰れ。後で行くから。」
ベンダーが心配気に見送ってくれた。
俺ってそんなに見た目変わったのか?
家に帰り、父に団長には全て話し協力を仰いだと報告した。
パトリックの事を聞くと、
「パトリックはバレずに上手くやっているようだ。エリーには今日から護衛とメイドが付くと伝えたが、何の反応もなかった。
何というか、お前と何としても一緒になりたいという熱を全く感じない。
お腹の子の事も大事にしている様子もないらしい。酒まで飲んでるからな。
あの子は何をしたいんだろうか…。」
「あまり考えたくなかったので今までは考えた事がなかったんですが、俺かラミリアに恨みでもあるんでしょうか。」
「結婚にも子供にも執着がないならお前達を別れさせるのが目的だったのかもしれないな…。」
「それが本当なら、あの女、絶対許さない!」
「例えそうだったとしても結果は変わらん…。籍を入れなくてはならない事は変えられない、犯罪者でもなければな。」
「これから調べます。団長は現物がないと難しいと言っていました。
あの時、俺が冷静だったら薬の現物を見つける事が出来たかもしれなかったのに…。」
「あの時は仕方なかった。とにかく何か手がかりを見つけよう。」
パトリックは夕食後に交代らしく、俺は自室に戻り、ベンダーが来るのを待った。
そしてベンダーがやってきた。
部屋に通すと、
「なんか屋敷の雰囲気変わったか?誰か偉い人でも滞在してるか?」
「いや、偉い人はいないが一人滞在している。」
「遠目にしか見えなかったが護衛がドアの前に立っていたのが見えた。」
「…ベンダーと飲みに行った時、俺はエリーに薬を盛られた。その間に俺は襲われた。
意識を失くしてる時にな。目が覚めても身体が動かせなくて抵抗も出来なかった。
あの女は俺が襲ったと言っている。
でも媚薬を飲まされた感じではなかったのに、身体は反応していた。
だから否定したくても証拠がない。」
「じゃああの部屋にはエリーがいるのか?
あの子がお前を襲ったと?」
「俺はララしか興味がないのは知ってるだろう?俺が襲うことなんてあり得ない。」
「じゃあラミリア嬢はどうするんだ?」
「婚約は解消された。そしてエリーは妊娠した。」
「嘘…だろ、冗談だろ?そんな…お前、だから休んでたのか⁉︎」
「ああ、あの女ララの家に行って妊娠してるって態々言いに行きやがった。
それでもララは俺と話そうとしてくれてたんだ。なのにあの女は今度こそ媚薬使って俺とアイツがベッドにいる所をララに見せつけやがった…。
それで完全に解消になった…。」
「そんな・・・」
「自暴自棄になってた俺を救ってくれたのはララだ。
だから俺は諦めない。必ずあの女の尻尾を掴んでやる!」
「あのさ、お腹の子は本当にお前の子なのか?」
「間違いないと思う…破瓜の印もあったし、医師にも見せた。」
「じゃあ見間違いか…男と宿屋に腕組んで入って行くとこ見た事があるけど、人間違いだったみたいだ。」
「それはいつ頃だ!誰と一緒だった?」
「あの店で働きだす少し前だったと思う。
だからあの店で見た時、感じが違うから驚いたんだ。宿屋に入った相手は見た事があるような…でも知り合いではなかったのは確かだ。
茶髪で薄い緑の瞳の男だ。年齢は30代くらいだったと思う。」
「ここに来てすぐ医者に見せた。
その時にはまだ妊娠の兆候がなかった。
だから1カ月以上ここで保護してた。
もし、その男と身体の関係があったとしたらその男の子供と言えるが、シーツに血の後もあったし、医者も膣から出血と確認してる。やっぱりどう足掻いても俺の子供なのは確実だ…」
「あの子、確か婚約者が前はいたんだ。
その時聞いてた印象と全然違うんだよな~。だから男と宿屋に入るのを見て驚いたから覚えてた。」
「お前エリーと知り合いだったのか?
婚約者って誰だ?」
「エリーには昔チラッと見た事があるだけだ。俺の友人が婚約者と友達だったんだ。
街でたまたま会った時にチラッと見ただけで、話した事はない。
その婚約者、シルバー子爵の嫡男のアルバートとエリーは仲が良かったらしい。
でも、いつの間にか婚約は解消してた。
理由は知らないが。」
「シルバー子爵のアルバート…。なんかその名前聞いた事があるような気がする…。」
「アルバートは真面目で良い奴だぞ。裏で何かする奴ではないと思う。」
「エリーは俺を好きだとか、俺の子供が欲しかったからとかでこんな事したわけじゃない。俺に興味もない。
だから、俺かララに恨みがあるんじゃないかと思っている。」
「好きでもないのに、子供出来るような事するか?」
「分からない…でも好きでもないのにここまでするのなら、相当恨んでるって事だ。」
「だって二人ともエリーに会った事ないんだろ?」
「ない。婚約者にも会った事はない。でも、どこで名前を聞いたんだろう…」
「お前とラミリア嬢は有名だから向こうは知っててもお前らは知らないだろうな。
俺が何か聞いとくか?何を知りたい?」
「アルバート殿に婚約解消の理由と俺達に会った事があるかを知りたい。」
「俺があの店に連れて行かなかったら、こんな事にはならなかった。
だから、出来るだけ協力する。
アルバートに聞いてみる。お前の事は言わないから安心しろ。」
「よろしく頼む。ほんの少しでも良いから何か手掛かりがほしい。」
「分かった。すぐ動く。お前は身体休めろよ。」
そう言ってベンダーは帰って行った。
ベンダーから聞いた話しは気になる所が多々あった。
エリーには男がいた?
宿屋に入ったのに本当に肉体関係はないのか?
本当に処女だったのか?
そして何故以前と今とでは変わってしまったのか?
その辺から調べていこう。
アルバート殿に話しを聞こう。
宿屋の使用者リストを見せてもらい、エリーだったのか、その相手が誰か。
ハァ…ため息が出る。
疲れたのか、気付けば眠ってしまった俺を起こしたのはパトリックだった。
あなたにおすすめの小説
あなただけが私を信じてくれたから
樹里
恋愛
王太子殿下の婚約者であるアリシア・トラヴィス侯爵令嬢は、茶会において王女殺害を企てたとして冤罪で投獄される。それは王太子殿下と恋仲であるアリシアの妹が彼女を排除するために計画した犯行だと思われた。
一方、自分を信じてくれるシメオン・バーナード卿の調査の甲斐もなく、アリシアは結局そのまま断罪されてしまう。
しかし彼女が次に目を覚ますと、茶会の日に戻っていた。その日を境に、冤罪をかけられ、断罪されるたびに茶会前に回帰するようになってしまった。
処刑を免れようとそのたびに違った行動を起こしてきたアリシアが、最後に下した決断は。
婚約者の私を見捨てたあなた、もう二度と関わらないので安心して下さい
神崎 ルナ
恋愛
第三王女ロクサーヌには婚約者がいた。騎士団でも有望株のナイシス・ガラット侯爵令息。その美貌もあって人気がある彼との婚約が決められたのは幼いとき。彼には他に優先する幼なじみがいたが、政略結婚だからある程度は仕方ない、と思っていた。だが、王宮が魔導師に襲われ、魔術により天井の一部がロクサーヌへ落ちてきたとき、彼が真っ先に助けに行ったのは幼馴染だという女性だった。その後もロクサーヌのことは見えていないのか、完全にスルーして彼女を抱きかかえて去って行くナイシス。
嘘でしょう。
その後ロクサーヌは一月、目が覚めなかった。
そして目覚めたとき、おとなしやかと言われていたロクサーヌの姿はどこにもなかった。
「ガラット侯爵令息とは婚約破棄? 当然でしょう。それとね私、力が欲しいの」
もう誰かが護ってくれるなんて思わない。
ロクサーヌは力をつけてひとりで生きていこうと誓った。
だがそこへクスコ辺境伯がロクサーヌへ求婚する。
「ぜひ辺境へ来て欲しい」
※時代考証がゆるゆるですm(__)m ご注意くださいm(__)m
総合・恋愛ランキング1位(2025.8.4)hotランキング1位(2025.8.5)になりましたΣ(・ω・ノ)ノ ありがとうございます<(_ _)>
婚約破棄を申し入れたのは、父です ― 王子様、あなたの企みはお見通しです!
みかぼう。
恋愛
公爵令嬢クラリッサ・エインズワースは、王太子ルーファスの婚約者。
幼い日に「共に国を守ろう」と誓い合ったはずの彼は、
いま、別の令嬢マリアンヌに微笑んでいた。
そして――年末の舞踏会の夜。
「――この婚約、我らエインズワース家の名において、破棄させていただきます!」
エインズワース公爵が力強く宣言した瞬間、
王国の均衡は揺らぎ始める。
誇りを捨てず、誠実を貫く娘。
政の闇に挑む父。
陰謀を暴かんと手を伸ばす宰相の子。
そして――再び立ち上がる若き王女。
――沈黙は逃げではなく、力の証。
公爵令嬢の誇りが、王国の未来を変える。
――荘厳で静謐な政略ロマンス。
(本作品は小説家になろう、カクヨムにも掲載中です)
あなたの破滅のはじまり
nanahi
恋愛
家同士の契約で結婚した私。夫は男爵令嬢を愛人にし、私の事は放ったらかし。でも我慢も今日まで。あなたとの婚姻契約は今日で終わるのですから。
え?離縁をやめる?今更何を慌てているのです?契約条件に目を通していなかったんですか?
あなたを待っているのは破滅ですよ。
※Ep.2 追加しました。
マルグリッタの魔女の血を色濃く受け継ぐ娘ヴィヴィアン。そんなヴィヴィアンの元に隣の大陸の王ジェハスより婚姻の話が舞い込む。
子爵の五男アレクに淡い恋心を抱くも、行き違いから失恋したと思い込んでいるヴィヴィアン。アレクのことが忘れられずにいたヴィヴィアンは婚姻話を断るつもりだったが、王命により強制的に婚姻させられてしまう。
だが、ジェハス王はゴールダー家の巨万の富が目的だった。王妃として迎えられたヴィヴィアンだったが、お飾りの王妃として扱われて冷遇される。しかも、ジェハスには側妃がすでに5人もいた。
偽りの愛の終焉〜サレ妻アイナの冷徹な断罪〜
紅葉山参
恋愛
貧しいけれど、愛と笑顔に満ちた生活。それが、私(アイナ)が夫と築き上げた全てだと思っていた。築40年のボロアパートの一室。安いスーパーの食材。それでも、あの人の「愛してる」の言葉一つで、アイナは満たされていた。
しかし、些細な変化が、穏やかな日々にヒビを入れる。
私の配偶者の帰宅時間が遅くなった。仕事のメールだと誤魔化す、頻繁に確認されるスマートフォン。その違和感の正体が、アイナのすぐそばにいた。
近所に住むシンママのユリエ。彼女の愛らしい笑顔の裏に、私の全てを奪う魔女の顔が隠されていた。夫とユリエの、不貞の証拠を握ったアイナの心は、凍てつく怒りに支配される。
泣き崩れるだけの弱々しい妻は、もういない。
私は、彼と彼女が築いた「偽りの愛」を、社会的な地獄へと突き落とす、冷徹な復讐を誓う。一歩ずつ、緻密に、二人からすべてを奪い尽くす、断罪の物語。
【完結済】次こそは愛されるかもしれないと、期待した私が愚かでした。
こゆき
恋愛
リーゼッヒ王国、王太子アレン。
彼の婚約者として、清く正しく生きてきたヴィオラ・ライラック。
皆に祝福されたその婚約は、とてもとても幸せなものだった。
だが、学園にとあるご令嬢が転入してきたことにより、彼女の生活は一変してしまう。
何もしていないのに、『ヴィオラがそのご令嬢をいじめている』とみんなが言うのだ。
どれだけ違うと訴えても、誰も信じてはくれなかった。
絶望と悲しみにくれるヴィオラは、そのまま隣国の王太子──ハイル帝国の王太子、レオへと『同盟の証』という名の厄介払いとして嫁がされてしまう。
聡明な王子としてリーゼッヒ王国でも有名だったレオならば、己の無罪を信じてくれるかと期待したヴィオラだったが──……
※在り来りなご都合主義設定です
※『悪役令嬢は自分磨きに忙しい!』の合間の息抜き小説です
※つまりは行き当たりばったり
※不定期掲載な上に雰囲気小説です。ご了承ください
4/1 HOT女性向け2位に入りました。ありがとうございます!
君を幸せにする、そんな言葉を信じた私が馬鹿だった
白羽天使
恋愛
学園生活も残りわずかとなったある日、アリスは婚約者のフロイドに中庭へと呼び出される。そこで彼が告げたのは、「君に愛はないんだ」という残酷な一言だった。幼いころから将来を約束されていた二人。家同士の結びつきの中で育まれたその関係は、アリスにとって大切な生きる希望だった。フロイドもまた、「君を幸せにする」と繰り返し口にしてくれていたはずだったのに――。
【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド