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俺のせいで
しおりを挟むアルバート視点
エリーと婚約を解消してから、だいぶ経った頃、ラミリア様の婚約者のノア・エリソン侯爵令息と友人のベンダーが俺を訪ねてきた。
突然で驚いたが、聞きたい事があるらしく屋敷に向かい入れた。
応接間に案内し、お茶を出した後、人払いをお願いされた。
え?と思ったが、人払いをした。
「アルバート、突然、済まない。少し聞きたい事があるんだ。
ここにいるノアは俺の同僚で友達なんだ。
ノアはある出来事でラミリア嬢と婚約を解消せざるを得ない事になって、今それをなんとかしようと頑張ってるんだ。
そして、その婚約解消の原因になったのが、アルバートの元婚約者のエリーだ。
だから、言いづらいと思うが、どうしてお前達が婚約解消したのか教えてもらえないだろうか?」
そう言って、ベンダーは頭を下げた。
隣りのノア殿も頭を下げた。
「突然で驚いてるとは思う。だが、どうしても二人の解消に至った経緯を教えてほしい。」
情報過多で、整理がつかない。
「ちょ、ちょっとどういう事?ノア殿とラミリア嬢が婚約解消?その原因がエリー?
一体何がどうなってそんな事になったんですか?」
「それは・・・理由を聞かず教えてもらう事は無理だろうか?
おそらく貴方と彼女が婚約解消になった事が発端だと思うんだ。
そして、ラミリアが目を付けられたと思っている。」
「え⁉︎なんでラミリア嬢?え?ノア殿が何かあったんじゃないんですか?」
「多分ラミリアを貶めるために、俺を嵌めたんだと思う。
会った事もないラミリアに対してだけ、悪意があった。」
「え・・ラミリア嬢に悪意…」
「それで思い出した。アルバート殿は前にラミリアに具合が悪かった時、助けてもらった事があったよね?」
「はい…あります。」
「アルバート、凄く大事なことなんだ!
どうか教えてくれないか、ノアはこのままだとエリー嬢と結婚する事になってしまう。」
「え⁉︎なんで⁉︎」
「・・・媚薬のようなものを飲まされて意識がない時に性交させられた。その時の事で妊娠した。」
「そんな・・・・」
「彼女は俺が襲ったと言ったが、俺が意識を戻しても、俺の身体は自由にならなかった。
彼女は上から退くこともなく腰を振っていたよ…。
済まない…君の元婚約者だったのにこんな言い方酷いな…」
「エリーが・・・」
「俺は襲ってなんかいない。身体が動かなかったんだ、腰の一つも振ってない。
なのに責任取って彼女と結婚するしかなくなった。
ラミリアと最後の話し合いの日に、彼女は今度こそ媚薬を俺に使ってラミリアに見せつけた。
そこまでしたのに、俺には一切興味はない。興味があるのはラミリアにだけだ。
誰にでも優しいラミリアが恨まれる事なんてない。
それで思い出した、君の事。
頼む、教えてくれ。
こんな事誰にも言いたくなんかないけど、言わなきゃ教えないならと、言った。
どうして解消したんだ?」
「・・・・解消した原因は…俺が、エリー以外の人を・・・好きになったからです…」
「まさか、その相手って!」
「そうです…俺が好きになったのはラミリア嬢です。
でも、遠くから見るだけで良かった。
エリーにいうつもりもなかったし、結婚もするつもりだった。
でも、エリーは耐えられなかったんだと思います。俺の視線がどこに向いてるか分かってたから。
貴方達が別れればいいとか思った事なんてないし、気持ちを伝えようとも思ってなかった。
初恋みたいなものに浮ついていました…。
それで、もう別れようと言われ、婚約を解消しました。」
「アルバート!お前、婚約者の前で、そんな浮ついた事してたのか!」
「自分自身、そんなに見ていたなんて気付いてなかった。エリーに言われてそうだったのかと自覚した。
申し訳ない事をしてしまった…」
「そんな…ラミリアには何の非もないのに、あんな傷付けられ方されたのか。
お前がちゃんとアイツに言って寄り添ってやってたら、こんな事になんてならなかったのに!
俺とラミリアは問題なく結婚出来たのに!
なのに…」
俺のせいだ。
俺がラミリア嬢に片想いしなかったら、
エリーに誠心誠意謝って、エリーとの仲をもう一度やり直していたら、ラミリア嬢が傷付くことなんてなかったんだろう。
なんて事を・・。
エリーは大人しくて優しい子だった。
そのエリーをそうさせてしまったのは俺のせいだ。
「申し訳ございませんでした。
俺が、俺が全部、俺が・・・なんて事を…。すみません、すみません…」
俺は涙が止まらなかった。
俺のせいで、あんなに恋焦がれたラミリア嬢を傷付ける事になった。
謝っても謝っても許されることではない。
ベンダーが俺の肩を叩いてから、二人は帰っていった。
俺はこれからどう謝罪していったらいいのか分からない。
エリー・・・・・・お前はそれでスッキリしたのか?
お前はラミリア嬢にではなく、俺に復讐するべきだった。
でも、一番悪いのは・・・俺だ。
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