信じないだろうが、愛しているのはお前だけだと貴方は言う

jun

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アルバス伯爵の秘密

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ルカリオ視点


続々入る新情報も、アルバス伯爵本人については何も入って来ない。
そこへフィリア嬢が5年前に伯爵が変わったという情報が入った。

5年前なら伯爵は王宮で優秀な文官としてバリバリ働いていた。
それが急に辞職した。
あの時、皆が引き留めたが惜しまれて辞めていった。
そんな伯爵に何があったのか…。

すぐに王宮の古株の文官に何か知らないかを聞いて回った。
5年前に何かあったかは分からないが、ある日から急に何かを調べていたようだというのは何人かが言っていた。
後は結婚して数年経ってからなかなか子供が出来ない事を悩んでいた位しか出て来なかった。

では何を必死に調べていたのか。
閲覧記録が残っている書類を徹底的に調べた。
それと同時に何の仕事をその時していたのかも調べた。
やっていた仕事自体は何も変わっていない。
でも短期間だが、古い書類を整理する為に保管庫の手伝いをした事があったようだ。
その時何を見たのか。
廃棄分と保管分とに分けた書類のどちらかに伯爵にとって重大な何かを見つけたのだろう。
保管庫に保存されている書類には多分今は何もない。
あったとしても手元に置いているだろう。

それはなんだ。
何故自国を裏切ってまでの事をする。

とにかく保管庫にある書類を見てみることにした。
保管庫には古い王宮内職員の20年前以降の医療記録、辞職した職員の辞職記録、備品の購入記録、慶弔記録、訪問者記録など重要書類以外のものが保管されていた。

この書類の種類で国を裏切るほどの物なんかあるか?

医療記録、辞職記録、備品の購入記録、慶弔記録、訪問記録。

自分だったらこの中の何の書類を思わず見てしまうか・・・

自分の名前が載っていたら見る。
家族や友人の名前を見つけても見るな、きっと。

それを見たとして、何に驚く?

辞職記録で知った名前があったとして、へぇとは思うが、驚く事はないな。

備品…ないな。備品購入に名前があったとしてビックリする事なんてないな。

慶弔記録は…あいつとあの子が結婚したのかぁとかあの人亡くなってたのかとか…あそこの家に子供が生まれていたのかとか…。
驚くけど人が変わるほどか?

医療記録…これは内容によるかもしれない。
先ずは自分の記録、友人、家族がいたら家族…。
俺が驚くなら出生の秘密とかがあったら驚くな。
出生か…でもこの王宮で出産しなければ記録は残らない。
なんだ…何に驚いた…

伯爵は不妊で悩んでいた。
診療してもらったのか?
夫人も。いや、夫人はここではしないだろう。
自分のは自分で知ってるはずだ。
知らなかったと仮定して、一番衝撃を受けるのは?
俺だったら子種が無い、だな。
子種が無いのに子供がいたらそりゃあ驚くだろうが、そんな事ってあるだろうか?
検査したのなら結果は本人に伝えられるだろう。伝えられない場合なんてあるのか?

医者が本人より誰かに先に伝えた場合。
本人よりも上の立場の人間。
親か。
前アルバス伯爵。厳しい人だったらしい。子供に容赦なく手をあげるような父親だったらしい。
その厳しい父親が手を回した?
何故?
自分もそうだから…。

まさかぁ~

・・・・・・・・・・・マジか⁉︎
もしそうなら?
父親も無精子症だったら…息子もそうだと思ったのなら伝えるのは止めるだろう。

息子と血が繋がっていない事がバレてしまうから。

アルバス伯爵を診察したのは今の医者ではない、前の老医師だ。
その医者が前伯爵を診察したのなら前伯爵に伝えてしまうのではないか?


「・・・リオ、ルカリオ!聞いてるか?」

「へ⁉︎」

「ハァ~お前ずっとブツブツ言ってるぞ!」
とジョシュアが心配気に俺を見ていた。

「悪い。アルバス伯爵がどうして変わってしまったのか考えていた。」

「で、分かったのか?」

「さっき保管庫行ってきただろ?それでそこの何を見たら驚くかを考えていた。」

「あんな左程重要でもない書類、驚く事なんか書いてないだろ。」

「そう思ってた。でも、もし自分の秘密を知ってしまったら?」

「どこの書類にそんなもん載ってるんだよ。そんな重要な事書いてある書類、あんなとこ置かないだろ。」

「俺はあったんだと思う。確かめたい。王宮医師の診察記録はどれくらい古いのが残ってる?」

「さあ、なんで?」

「行くぞ。」

王宮医師の診療所にジョシュアと行くと、ちょうど患者は誰もいない。

「ん?ルカリオ様とジョシュア様⁉︎どうなさいました?体調でも崩しましたか?」

「いや、体調が悪いんじゃないんだ。少し聞きたい事があるんだが、今大丈夫だろうか?」

「ええ、大丈夫ですよ。」

「診察記録ってどれくらい古くまであるんだろうか。」

「今現在ご存命の方の診察記録は残ってますよ。
記録なので極力は残してはいますが、軽症のものしかない方のは亡くなれば廃棄します。
それ以外は大量ですが、残っていますよ。」

「それは家名毎に載っているんだろうか。それとも年数毎?」

「家名で纏めています。遺伝的な事を調べる事もありますから。」

「その記録を見せて頂くことは出来るだろうか。」

「別に良いですが、個人情報ですから他言無き様お願い致します。
では、ご案内致します。」

そう言って、医師は少し離れた部屋に連れて行ってくれた。

「この部屋にあるものは全て診察記録です。
一応、すぐ見れるようにはしてありますが、見つけられなければ言って下さい。」

「ありがとう。では見せてもらう。」

医師が出て行ってから、

「おい、ルカリオ、何を探すんだ。」

「前アルバス伯爵の記録と現アルバス伯爵のだ。今のアルバス伯爵のは職員の方にもあったんだ、きっと。
そして何かを見てしまった。
その何かを探す。」

「とにかくアルバス家のを見つければいいんだな?」

「ああ、探すぞ。」

そして俺達はアルバス家の診察記録を探した。
爵位ごとに纏めて置いてあったので、意外と簡単に見つけた。

そしてアルバス家の診察記録を見ると、

前アルバス伯爵のウィリアム・アルバスは、
幼少期の高熱により『無精子症』。

現アルバス伯爵、テレンス・アルバスは、
原因不明による『無精子症』。

「これだ。伯爵が気付いたのはこれだ。
多分、前伯爵に隠されてたんだ。
夫人とどんな取り引きをしたのか分からないが、伯爵だけ知らなかったんだ。
そして、父親の事も調べたら父親も無精子症だった。
父親とも子供とも血が繋がっていない事が分かったんだ・・・。」

「でもそれで国を売ろうとするか?」

「もっと何かあるのかもしれない。でも、考えてみろ、これまで厳しい親父に逆らう事も出来ず、政略結婚させられて、なかなか出来ない子供、やっと授かった子供、それも2人もだ。
伯爵は無口だが、子供は可愛がっていたそうだ。なのに、子供は自分の子供でもないし、誰の子供かも知らない。
自分も誰が父親かも知らない。
血の繋がった人間が誰もいない。
こんなに必死に家族の為に仕事してきて、妻には裏切られ、父親に裏切られ、もうこんな国って思ってもおかしくない。
俺だったら許さない。
復讐するだろうな、舐めんなってな。」

「だな…もしそれが本当なら…なんか何て言っていいのか…分からん。」

「こればっかりは本人に聞いてみないとわからんな。さて、父上に報告してみるか。
マスナルダの事もあるだろうから、伯爵の事は早く処分したいだろうから。」


ジョシュアと診療所に行き、お礼を言って、俺は父上の所に向かった。
ジョシュアは、エリソン侯爵に報告しに行ってしまった。

うげぇ~1人で行くのは憂鬱だ。
同じ男としてこんな事他人に言いたくないだろうし、知られたくない。
それを大勢の前で暴かれ、断罪される。

ハァ~やだなぁ…

ジャニスに来てもらおうかな…俺にもカウンセリングして欲しい…















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