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陰陽庁怪異対策課京都支部
第十六話
しおりを挟む扉の奥には、初代安倍晴明が作ったと言われる異空間が広がっている。何でも仕事中にこっそり居なくなったり、緊急時用の隠れ蓑に使ったりと使用は様々であったらしいが、代々の晴明も増築を重ねて広い空間を有している。壁には蝋燭が灯り、炎がゆらゆらと揺れ周囲には庭も見え、緑生い茂る木々も見えた。木材で作られた広いお屋敷の中という印象を持ったが少し進むと目の前の光景に二人は目を見開いた。廊下の分岐点には普通右か左かはたまた階段の上下があるかないかだがこれはそのまま上下と左右の両方があるのだ。蝶々は二人に語りかける。
「下の向く風景が通常やと思えばええ」
「って事は道はこの下?」
蝶々は告げる間もなく降りていく。京子はため息を吐いて、仕方なく言われた通りに下へと落ちた。但し、床となる接地面に足を向け天井となる上側に頭を向ける。一瞬の落下が始まったが視界に空間が映りこんだと同時に感覚がその空間に馴染んだ。上から覗く紅葉が不安そうに覗いている。
「大丈夫、多分空間に入っちゃえば重力が自然と入れ替わるんじゃないかな」
「ほんとかしら・・・・・・」
紅葉も下へと落下する。ただし、本当に落下するように落ちた為その空間に入った瞬間、一瞬空中で制止した後、床に背中を打ち付けて落ちた。
「いった!!つつつつ・・・・・・何だってこんな構造にしたのよ!!」
「天才の考える事なんて分からないわ」
同じ頃、晴明と寛治、道満が同じ迷宮を歩き続けている。
「さっきと同じような所をぐるぐるしてる気がするんだけどねえ」
「気のせいやろ。それに後1時間もすれば着くで」
「その言葉を違えるなよ晴明。きっかり1時間、目的地に着かねば呪った者達を皆殺しにする。・・・・・・こいつもそうらしいな」
寛治は試しにゲームを行って呪いが起動した。当然人質の中に含まれる。心臓を握られているかのような感覚に陥り、寛治は冷や汗を浮かべる。
「ほな、きっちり数えとけ。着かんかったら何でもすればええ」
言葉に二言は無いと宣言し、晴明はまたゆっくりと案内を始めた。
2人の女子生徒が談笑しながら歩いている。最近の洋服の流行りについて話をしていると赤い髪の少女の携帯が振動している事に気づいてポケットに手に入れて携帯を取り出す。中身を確認すると、少女はにんまりと笑みを浮かべた。
「何、誰からメール?」
「ううん、お父さんからだよ。今日遅くなるからご飯食べて帰るんだって」
「そういや毎日あんたがご飯作ってるんだよね。毎日大変よね」
「もう慣れたよ。洵ちゃん、悪いけどちょっと寄る所あるから先に帰るね」
「また、変な事に首突っ込んでるんじゃないでしょうね」
「嫌だなぁ、そんな事ないってば」
えへへ、と綾乃と名乗る少女は嬉しそうに駆け出した。電車に乗って乗り継いで、伏見稲荷の半分辺りの鳥居に触れると空間が歪んで異世界へと通じる道が開かれる。闇の世界を抜けるとそこには先程居た世界とは違う空間が目の前に広がる。空には烏天狗が警戒の為に警備している光景が広がり、階段の下には
妖怪達が集まる村落があり活気が溢れている。ろくろ首がおしろいを買って喜び河童やかまいたちが喧嘩をしている光景もこの場所ならではといえる。空から烏天狗が綾乃に気づいて近づいた。
「本日は、玉藻様に呼ばれているのですか?」
「そうだよ?珍しいよね、たまちゃんからメールがあるなんてさ」
「分かりました。綾乃様でしたらお通ししても大丈夫でしょう」
「何かね、巷を騒がしてる呪いのアプリについて情報があるからくれるんだって!!」
烏天狗はそれを聞いて察した。
「成る程、それで綾乃様を呼ばれましたか。合点がいきました」
丁寧に烏天狗が一礼すると、綾乃は大きな日本屋敷を目指して歩み始めた。
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