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Revenge tragedy of agent Ⅱ
第八話
しおりを挟む一馬が人数分の缶コーヒーを買ってくるとそれぞれに手渡し、喉を潤した。
「ずっと、自分の頭がおかしいのかもって疑って生きましたが、こうやって他の体験談を聞くと確信が持てます」
「私も同じです」
正志は二人が長年の答え合わせを終えたかのような会話を聞いて疲れた表情を見せた。
(結局、二人とも恐怖による後遺症から抜け出せてないって感じだな)
医者といえど自分の状態には気づかないものなのかと、呆れてしまう。
(映画じゃあるまいし、現実を考えれば恐怖による錯乱だろう。事実のみを考えれば、犯人は別に居るって事は確かだが、その辺の話も含めると大幅カットして編集すりゃ何とかいけるか)
証言さえ取れればどこよりも早く数字が取れる。頭で整えながら、席を立った。
「ちょっと一服してくる」
「俺も行こうかな」
扉を開けようとする前に、誰かが扉を開いた。深い緑と黒い肌をしたマスクの男が部屋から出れないように立ち塞いでいる。男はゆっくりとマスクを外して顔を晒した後、芳しい香りを嗅ぐような仕草を見せた。
「先生の患者さんですか?先生?」
「そんなまさか……ありえる訳が………」
あわわわ、と竜太郎は信じられない思いで、驚愕してゆっくりと後ろへ下がっている。一馬も同様で、パニック障害を引き起こしかねない程に動揺している。大量に汗をかいて、恐怖に怯えて震えている。
「あっあっ・・・ひっ助け・・・わああああああああああああ!!!!」
一馬も塞き止めていた何かを一気に流した。
慌てて部屋の後ろへ走って壁際まで逃げる。
「一馬、一体どうしたんだ。まるで犯人でも見たかのようなーーーーぐっ!!」
(こいつが一連の事件の犯人!?)
正志の首を掴まれ必死の抵抗をしたがどうにも出来ず、放り投げ出されて背中から机にぶつかった。すぐに化け物の顔が正面に映ったが酸素不足で意識が遠退いていき正志の意識が途絶えた。
鎖に繋がれたハイオークが、3人を前にして怒り狂っている。ゴーストとゴブリンの殲滅を行った経験を持っていよいよ最後のハイオーク討伐戦となった。エクレア司祭から一人の修道士であるジョン・ガリアーノを加えて4人編成となり自衛隊と教会による妖怪討伐の狼煙を上げる。ジョンは霊子銃の他に四角い箱を背負っておりそれが教会の標準装備らしい。中には任務を遂行する為の道具等が収納されている。
「皆さん、ヨロシク!!」
「こちらこそ、サポート宜しくお願いします」
「ていうか、早くあの豚殺してシャワー浴びたい」
知佳は心の底から呟く。スーツを着て何時間にもなり汗で中がびしょ濡れになっている。伝説の防具の快適性は一切無い。
「さて、お三方、これで最後のミッションですわ。明日は本番ですので予行演習といきましょうか」
エクレアが銃を構えて、ハイオークの鎖を撃つと鎖が千切れた。鼻息を荒くして3人に真正面から突撃するが、3人とも冷静に散らばって突進を回避する。壁にぶつかった所を射撃を行いハイオークの腹、肩に当たるもダメージ軽微といった様子で効果は薄い。バッテリー切れを起こしていると効果は薄い。
「バッテリーの交換か。少し時間を稼げるか」
「ほな、それまで相手しますわ。かかってこいやぁ!!」
剣に持ち替えて、ハイオークに突っ込んでいく。
「援護するけど、無茶はしないでよ!!」
「オウ、ユウカンね。ハイオークに接近とか」
ジョンは広間に感心したが、それもそのはず。巨体が突進して向かってくるスピードはゴブリンやゴーストとは比較にならぬ程早く重量もある為、対峙すればまず恐怖に駆られる。広間も途中で失速して止まった。知佳の援護だけでは止まらず、ハイオークの突進に弾き飛ばされる。空中で何回転かした後、地面にゴロゴロ転がった。
「広間!!大丈夫か!!」
前田が安否を確認する為に駆け出した。意識もなく、ぐったりしている。銃の乱射でハイオークの接近を阻んで広間を担いで後退を始めた。そうはさせまいとハイオークも後を追う。
「イケマセン、直ぐ様討伐ヲ!!」
「援護します!くたばれ豚野郎!!」
ジョンも手持ちの銃で応戦し背後に回った知佳とのクロスファイアが決まりハイオークは消滅してミッションの達成にエクレアは満足した。
(初歩的なレクチャーはこれで終了、と)
次は難易度最難関、生存率も極めて低い実戦任務。何人生き延びるか、エクレアは冷笑を浮かべた。
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