Voo Doo Child

夜桜一献

文字の大きさ
上 下
71 / 246
Revenge tragedy of agent Ⅲ

第四話

しおりを挟む
「生粋の妖怪は人の心より生まれ出づる。現世とは別の空間で形作られ、形が定まると現世へと降ろされる事もあれば、生きた人の心や魂がその場で化ける場合もある。より強力で強い妖怪は前者にて生まれ、弱い妖怪は後者にて生まれる事が一般的なんじゃが今回は珍しい死後の魂が思念の集合により力が凄まじくなっておる。故に、討伐をしたければ先ずは思念の集合から切り離さねば無理じゃな」

「・・・具体的には?」

「あやつを知る者全ての“認知”を変えよ。

さすれば道も開けよう」

そう言われて謁見は終了し、京子は再び夜も濃くなった伏見稲荷の場所に戻ってきた。結局、打つ手がない事の再確認になった事で京子の足取りは重く、 気も滅入る。封印という手段もあるが、いつまで持つか不明だ。すぐに戻って作戦を立案せねばならない。少数精鋭による人員の選別も。

(紅葉は怒るよね・・・うん、100%そうなるか)

気が重い話が重なり、京子は支部へと足を運んだ。夜遅くまで本部の人とも相談し、討伐から封印へと足向きを変える。戦闘開始から封印のある場所まで誘導し閉じ込める手筈となったが並の者では途中で殺されてしまう為、大人組と子供の少数精鋭がバックアップ。自分と社長、そして浦美と真義が化け物と相対する。残りは全て待機となる。翌朝、支部に集まって貰った者達の前で作戦の概要を伝えると納得のいかぬ者も居たが九尾の狐に聞かされた事を伝えるとすぐに納得した。

「それで10年毎なのね」

浦美は興味深く聞いている。

「過去に滅する事が出来ない強力な妖怪を相手にしてきた事例は何度もあります。ですが殺せぬ相手となれば真正面からは避けます。討伐から封印に切り替え文字通りの鬼ごっことなります」

捕まれば死ぬかもしれない。相手に逃げさせず、殺させず、気づかせず誘導を行い封印を施す。弔い合戦を誓う者もいるようだがこれ以上の死者は避けたい。参加メンバーの名前を言い連ねると紅葉が京子に怒りを露にしているが京子は淡々と続けた。会議が終わり皆それぞれ散っていく中で紅葉は残っていた。

「どうして私を外したのか聞かせてくれる?」

京子は今回参列した葬式を思い出し、それが紅葉で無かった事に不謹慎ではあったが安堵した。自分の一言で組織は回る事の怖さを覚え勝つ算段のない戦に親友を送る程冷静でもいられない。若干13歳の少女の至った結論は一つしかなかった。少し演技臭く振る舞う。

「紅葉が居ても役に立たないから。前の件だって結局最後は足引っ張られたし?実力不足は明白でしょ」

「ーーーーーーーーーーーー!!」

前の件で共に背中を預けた相棒であるが故に紅葉の中で今回も共に立つと思っていたに違いない。弔い合戦の意味でも張り切っていたのだろう。紅葉の髪の毛が逆立つ。震えて更に怒りを出してどこかへ出て行ってしまった。これが関係がこじれた決定的瞬間になり暫く会話もしてくれなくなるとは思わなかったが。

本当は共に戦場に立ちたい思いの方が強い。

でも万が一にも紅葉に死んで欲しくない。

京子の思いも揺るぎなく、後悔もない。

いや、否。後々たっぷりと後悔する事になるが

それはまだ先の話である。
しおりを挟む

処理中です...