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The killer of paranoid Ⅱ
第十一話
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夏樹は学校のホームルームに出ると、教師が開口一番に生徒に告げた。
「今、話題になっている事件がこの学校の生徒に関わりがあると分かりました。昨夜からどこにも居なくなっており、現在警察が捜索してくれています。情報はネット等に拡散しない事、もし生徒の知り合いが居て何か情報を知っている場合警察や先生達に知らせる事、興味本意でこの事件を調べない事以上を踏まえていつもの日常を送って下さい」
一瞬がやがやと騒ぎ無茶言うな、と全員が口に出さずに突っ込む。
(下手に突っ込んだ結果っすねぇ)
(あんたの話に乗ったあたしがバカだったわ。とりあえず“あの人”が居るか一応確認しないと)
夏樹は、先生が去った後、気分が悪いと保健室に行く振りをして教室から外に出る。廊下を移動して食堂に行くと、厨房で下ごしらえと準備をしているおばちゃんの姿が見えた。3人の中から、一人の小柄なおばちゃんに声を掛けた。
「おはようございます!!ちょっと話いいですか!?」
「まだ10時くらいだよ?ちょっと早弁になりすぎない?」
おばちゃんは、きょとんとしている。
「平久霞さんのお母さんですよね?」
おばちゃんは吃驚して声に出した。
「誰からそれを?」
「お子さん、コンクールで金賞取ったんですよね?あの日賞を貰ってたの複数人居ましたけど、金賞を取ったの平久霞さんだけでした。霞さんのお母さんかなって。お子さんとか旦那さん今入院やら行方不明やらで大変じゃないですか。お母さんは無事だったんですね。霞さん心配じゃありませんか?」
心底ビックリした様子で尋ね返して来た。
「何それ、どういう事かしら?」
他のおばちゃんが声を掛ける。
「え、一家暴行事件でニュースになってたの知らないの?麻衣子さん」
「ちょっと、この子の話を聞いてくるわ。貴方、こっちへ追いて来て頂戴」
夏樹は言われるままに、食堂から裏に回って外へ出る。
「えーっと、今ニュースで話題のやつなんですがご存じありません?」
スマホを見せて拡散されている映像を見せると、怯えた様子で不安になっている。
「今、警察は動いてくれているのよね」
「知らなかったんですか?・・・別居中とか・・・あれ、それだと変か」
彼女の話によれば家に帰らないのは父親の方だと聞いた。ばつが悪そうにしながらも、彼女は意を決した様に語り始める。
「私は、あの子の母親だけど、親として彼女と面識はないのよ。あの子が3才の頃に離婚してそれきりだから」
「・・・・・・・・え?」
「子供は私が育てるって言ったんだけど、話し合いで決着が着かなくて結局裁判までもつれてね。勝てるって思ってたけど、あろう事かありもしない夫や子供へのDVをでっちあげられてね。不倫相手を証言台に立たせて裁判官に不審に思われた挙げ句、当時私も働かなきゃいけなかったから母に任せて子供に構う時間が格段に減ってたのも突かれて経済面での不安や愛情が足りてないって判決下ってね。悔しくて何日泣いたか分からないわ」
こういう裁判だと9割母親が親権を獲得する。1割のケースに自分が入った時の絶望に震える事となった。結局、娘にたまに会える権利も奪われ、近い場所で彼女の成長を見守って来た。
「・・・ええ・・と」
彼女の境遇が重すぎて、夏樹の表情も暗くなる。初めにある程度知っていれば、自分ごときが相談に乗ろうなんてまず思わなかっただろう。バクに言われるまま彼女に話しかけたのが間違いだった。
「すみません、こうなったのも、私のせいかもしれないんです」
「え?どういう事?」
夏樹は包み隠さず、全てを話すと麻衣子の表情も険しくなる。
「そう、そういう事。道理で時折悲しそうな顔すると思ってたら・・・もし、貴方に責任を感じてるのなら、あの子を探すのに協力してくれないかしら。私も今さら母親面なんておこがましいかも知れないけどこの状況で何もせずに動かないなんて出来ないわ」
「分かりました。というか今から探しに行こうと思ってた所です。一応彼女の近親者にも話を聞こうと思ってるんで、いらっしゃる病院とか見当付きます?」
二人は連絡を交換して、夏樹は自転車を漕いで教えて貰った病院へと自転車を走らせた。
「今、話題になっている事件がこの学校の生徒に関わりがあると分かりました。昨夜からどこにも居なくなっており、現在警察が捜索してくれています。情報はネット等に拡散しない事、もし生徒の知り合いが居て何か情報を知っている場合警察や先生達に知らせる事、興味本意でこの事件を調べない事以上を踏まえていつもの日常を送って下さい」
一瞬がやがやと騒ぎ無茶言うな、と全員が口に出さずに突っ込む。
(下手に突っ込んだ結果っすねぇ)
(あんたの話に乗ったあたしがバカだったわ。とりあえず“あの人”が居るか一応確認しないと)
夏樹は、先生が去った後、気分が悪いと保健室に行く振りをして教室から外に出る。廊下を移動して食堂に行くと、厨房で下ごしらえと準備をしているおばちゃんの姿が見えた。3人の中から、一人の小柄なおばちゃんに声を掛けた。
「おはようございます!!ちょっと話いいですか!?」
「まだ10時くらいだよ?ちょっと早弁になりすぎない?」
おばちゃんは、きょとんとしている。
「平久霞さんのお母さんですよね?」
おばちゃんは吃驚して声に出した。
「誰からそれを?」
「お子さん、コンクールで金賞取ったんですよね?あの日賞を貰ってたの複数人居ましたけど、金賞を取ったの平久霞さんだけでした。霞さんのお母さんかなって。お子さんとか旦那さん今入院やら行方不明やらで大変じゃないですか。お母さんは無事だったんですね。霞さん心配じゃありませんか?」
心底ビックリした様子で尋ね返して来た。
「何それ、どういう事かしら?」
他のおばちゃんが声を掛ける。
「え、一家暴行事件でニュースになってたの知らないの?麻衣子さん」
「ちょっと、この子の話を聞いてくるわ。貴方、こっちへ追いて来て頂戴」
夏樹は言われるままに、食堂から裏に回って外へ出る。
「えーっと、今ニュースで話題のやつなんですがご存じありません?」
スマホを見せて拡散されている映像を見せると、怯えた様子で不安になっている。
「今、警察は動いてくれているのよね」
「知らなかったんですか?・・・別居中とか・・・あれ、それだと変か」
彼女の話によれば家に帰らないのは父親の方だと聞いた。ばつが悪そうにしながらも、彼女は意を決した様に語り始める。
「私は、あの子の母親だけど、親として彼女と面識はないのよ。あの子が3才の頃に離婚してそれきりだから」
「・・・・・・・・え?」
「子供は私が育てるって言ったんだけど、話し合いで決着が着かなくて結局裁判までもつれてね。勝てるって思ってたけど、あろう事かありもしない夫や子供へのDVをでっちあげられてね。不倫相手を証言台に立たせて裁判官に不審に思われた挙げ句、当時私も働かなきゃいけなかったから母に任せて子供に構う時間が格段に減ってたのも突かれて経済面での不安や愛情が足りてないって判決下ってね。悔しくて何日泣いたか分からないわ」
こういう裁判だと9割母親が親権を獲得する。1割のケースに自分が入った時の絶望に震える事となった。結局、娘にたまに会える権利も奪われ、近い場所で彼女の成長を見守って来た。
「・・・ええ・・と」
彼女の境遇が重すぎて、夏樹の表情も暗くなる。初めにある程度知っていれば、自分ごときが相談に乗ろうなんてまず思わなかっただろう。バクに言われるまま彼女に話しかけたのが間違いだった。
「すみません、こうなったのも、私のせいかもしれないんです」
「え?どういう事?」
夏樹は包み隠さず、全てを話すと麻衣子の表情も険しくなる。
「そう、そういう事。道理で時折悲しそうな顔すると思ってたら・・・もし、貴方に責任を感じてるのなら、あの子を探すのに協力してくれないかしら。私も今さら母親面なんておこがましいかも知れないけどこの状況で何もせずに動かないなんて出来ないわ」
「分かりました。というか今から探しに行こうと思ってた所です。一応彼女の近親者にも話を聞こうと思ってるんで、いらっしゃる病院とか見当付きます?」
二人は連絡を交換して、夏樹は自転車を漕いで教えて貰った病院へと自転車を走らせた。
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