Voo Doo Child

夜桜一献

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The killer of paranoid Ⅱ

第十八話

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起きて下さいっす


目を開けてくださーい。


開きませんね。悪戯チャンス到来っすかこれ


「ーーーーー何が来たって?」

目を開けると、顔を覗き込んでいる早苗と、バクの姿が見えた。周囲を伺うと、どこかの建物の中で、電灯も付いている。大きなエスカレーターが稼働しており、先に行ける様になっている。

「ここ本当に夢の中?」

早苗は、巫女の格好をしており、夏樹自身も学生服を着ていて普段と変わらない。

「その通りっす。このエスカレーターを越えて建物の中に入ったら彼女の精神世界が広がってるっすよ」

早苗が、札や自前の刀を確認して問題がないかチェックしている。

「こちらは問題ありません、夏樹さん大丈夫ですか」

「こっちも問題なし。じゃあ、行こうか」

2人はエスカレーターを上って、自動ドアを潜り建物の中へと入る。中は美術館となっており、変わったモチーフの彫像や、絵画が展示してある。しかし、建物全体が植物の根に侵食されており、奇妙な演出となっている。通路の妨げになる程木が肥大化しており、人面樹が通行を妨げている。二人に気づいて、樹の枝を伸ばすと夏樹はハンマーで破砕し、早苗は小太刀で切り刻む。図体の大きい樹木で、早苗は爆札を取り出して放ち、符術で貼り付け起爆し爆散させる。

「急ぎましょう」

小太刀を両手に持って蔓を捌き、奥へと向かう中で壁の絵に夏樹は目を通した。

「ギギ・・・・・・」

「今度はあたしね」

玉ねぎの様な魔物が襲い掛かって来たので、夏樹が銃で対処する。絵は様々なタッチで描かれており、喜怒哀楽を表現豊かに表している。しかし、廊下の角を曲がるに連れて彼女の絵は暗いものとなっていく。植物の魔物が徘徊しており、二人は殲滅しつつ進んでいく。

「廊下の角を曲がる毎に上へと上がっていく仕組みですね。でも段々と絵が暗いイメージに・・・」

「そういえば、小学校高学年までは普通だったって」

子供の時代は終わり、思春期を迎えた頃からテーマは重い。それから先は、彼女の苦しみが表現されている。虐待を受ける彼女の痛み、苦しみ、飢えや、孤独との闘い。強制労働の大変さ、しんどさ、怒り、差別される憎しみ。それらが表現された絵画が中心で、笑顔や幸せといったテーマの絵は皆無だった。途中で現れる魔物に対処しながら二人は大きな大聖堂へと出る。神聖な場所なのか、先程とは違って神々しい絵が壁や天井に描かれている。霞は十字架に張り付けにされて、気絶している様子が見えた。
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