Voo Doo Child

夜桜一献

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The killer of paranoid Ⅱ

第二十話

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妖精というべき可愛さや愛くるしさは感じない。蛾の様な羽と触覚を持つ女型の魔物という造形をしており

色彩は薄い緑と白色で構成され、植物を思わせる。羽を広げて飛び始めると、旋風を巻き起こす。

「鬱陶しいヤツが増えたようだなァ。テメーか、精神を蝕んで来てる糞はよ!!」

黒い剣を幾つも空中で出現させて放り投げる。妖精はさも苦にせず空中を回避した。そのスピードは凄まじく早く生き霊の背後をとって風を巻き起こした。地面に叩きつけられ、霞が苦痛に顔が歪む。

「ぶち殺す!!」

「そうよ・・・あんたが討つべきはあっち!!お願い、私の願いの化身なら何とかして!!」

再度生き霊が蛾の妖精に殴り掛かる。その隙に夏樹と早苗は霞の所まで走ると、夏樹は絡み付いている樹木の枝と拘束具をハンマーで叩き壊した。霞が自由になると、早苗が肩を貸す。妖精が幾つも竜巻を巻き起こし、早苗が結界を張って防ぐ。生き霊も巻き込まれまいと空中を泳いだ。その隙に蛾の妖精に攻撃され、霞の顔がまたも苦痛に歪んだ。

「霞さん、あの生き霊引っ込められませんか。このまま出してたらダメージが直接生死に関わりますよ!!」

「どうやって仕舞えばいいかなんて私にも」

「バク、あの木から出てきてたけど、どっちが本体?」

「妖精すね。樹木のエネルギーがあの化け物に流れてるっすよ」

「じゃあ、また空中戦やるしかないか。バク」

「りょ」

「早苗ちゃんは霞さんを守ってて」

「分かりました。ご武運を」

バクが箒になって、夏樹が空を飛んで戦いの中に飛び込んでいく。ハンマーを消して今度は銃を構えて発砲した。妖精に被弾して動きを止めると、霞の生き霊が重い一撃を腹に加える。妖精が怒りを露にした瞬間、生き霊と夏樹を手から伸ばした蔦で絡めて地面に放り投げる。夏樹はバクがクッションになってくれたが、霞の受けたダメージは大きい。生き霊も先程とは変わって反応が鈍っていて動けていない。早苗が動けぬ生き霊の側に駆け寄り結界を施した。これ以上のダメージは霞の死に繋がる。

「ヤツの注意を引き付けますので、後はお願いします!!」

符術で何十枚もの札を空中に散布し奴の周辺まで浮かせて爆発を起こす。何が起こっているのか周囲を警戒しており、その場から動いていない。動いた方向から札を爆発させて行動範囲を絞らせた。夏樹はバクと共に再び空中に上がり、夏樹は中型のハンマーを手にして、準備する。妖精の死角に回って、夏樹は叫んだ。

「バク!!」

「了解っす!!」

言葉はなかったが、バクは夏樹が何をしたかったのかその意思を汲み取った。巨大な正方形の塊となって足場を形成すると、足場を駆けて跳躍する。ハンマーを振り下ろして重い一撃を妖精に与えた。急降下して、地面にぶつかり衝撃が走る。夏樹が落ちる地点にバクが足場となって、夏樹は着地する。先程の一撃で妖精はまだ動けていない。

「これで、ようやく終わりだけどさ。バク」

「何すか」

「あんたの妹見つけたらあんた100回これで叩かせて貰うわ!!」

再度ジャンプして、真下にいる妖精に落ちていく。

よろよろと、起き上がろうとしているが、その前に巨大ハンマーを叩きつけた。


「ーーーーーーー消えてなくなれ!!!!!!」


断末魔の様な悲鳴が聞こえると、後ろにある樹木が消滅して、世界に広がっていた樹木の根が消えていく。世界が崩れていく感覚を感じて、目の前が白くなっていく。気づけば、また霞と向かい合っていた。

「ありがとう、助けてくれて」

「まだだよ。何にも返せてない」

「つくづく、不器用な性格してるわね。私の事はもういいってば。目が覚めたら警察に自首して、何だろう少年院とか行かされるのかな。両親は私とは距離を置くだろうし、私も学校辞めてどこかで住み込みで働くしかないし。家族を失って一人で生きていく未來が私を待ってる」

「それなんだけど、霞さん」

「何?」

「一人、貴方をずっと思ってる人が居るんだけどさ。今も貴方の側で無事を祈ってくれてる」

「・・・・・?」

世界が、急に変わって病院の中になる。生まれたばかりの赤ん坊を抱いて喜ぶ母親の姿が二人に見えた。霞は何が何だか分からなかったが、赤ん坊の成長と共に信じられない思いでそれを見る。3歳の頃に離婚して裁判になり、裁判官が父親の知り合いで親権を奪われる母親の泣き崩れる背中を見る。会えない中で母親は少しでも赤ん坊の近くで成長を見守ろうと陰ながら近くで見守っていた。小学校の運動会のレースで転けた時は、慌てた様子で心配もした。中学、高校と側で成長を見守り、彼女は高校の食堂で彼女の姿を見つめていた。

霞が目を覚ました時、見に覚えのない天井が目に入る。

次に横に夏樹と早苗がベッドで寝息を立てている。

霞の手に温かさを感じてそちらを向くと

先程の女性が祈るように手を繋いでくれている。

霞も見覚えがある女性だった。

小柄で愛想の良い女性なのは知っていた。

それが、霞の産みの親とは知らなかったが。

自然と霞の頬に涙が溢れる。

何を言えば良いのか、伝えればいいのか

今の霞に上手く言葉にする事が出来ず、ただただ泣き崩れた。



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