Voo Doo Child

夜桜一献

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The killer of paranoid Ⅳ

第七話

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動く度に関節の駆動音が響く。自分の体が重いせいか歩くのも骨が折れる。少年の前に姿を現すと、こちらにも気づいたようで眼鏡をくい、と動かしてじっと眺めている。

「ほう、VR2型インラグム。シリーズ初期型か、中々いいじゃないか」

何の話かさっぱり分からないが誉められた。優理は無視して彼に尋ねる。

「貴方、模型部部長の高瀬君だよね?ここで何してるの?」

「喋った!?・・・まぁいい、見りゃ分かるだろ?俺の作った最強のロボット、カケルスナイダーZで腕試ししてる所だよ。こいつらがてんで弱くて話にもならないけどさ」

「こいつら・・・?あのロボットは何?」

「何って・・・他の連中が作ったロボットだろ?俺は模型コンテストで来年こそ優勝するんだ!!俺の作ったロボットが一番なんだよ!!」

彼のロボットがまた動き出したのを見て、優理は手を交差させて大声で叫んだ。

「ちょっと、タイム!!」

「ああ!?タイム?」

「そうだよ、相手倒れてるじゃない。起こしてあげないといけないでしょ」

「・・・チッ。早くしろよ」

話が見えない上、噛み合わない。模型を作って鑑賞してもらう勝負と実際のロボット対決に何の関係があると言うのか。優理は倒れたロボットの方を見ると一瞬男子生徒が倒れているように見えた。そもそもーー何故自分はここに居るのか。駆け寄って敵のロボットに近づくと、呻き声が聞こえる。

「部長、何で急に・・・酷いよ・・・」

「貴方、模型部の部員なの?」

「そうだよ。さっきまで楽しく模型作ってたのにさ。急に世界が変わって、部長も人が変わったみたいになっちゃって。訳がわからないんだ。夢だと思ってたけど目が覚めないし・・・」

「えぇ・・・じゃあ、そのへんに転がってるロボットって・・・」

優理が周囲を見渡すと、彼と似たようなロボットが2体転がっている。一瞬またロボットから人間の男女に見えた。二人共息も上がって苦しんでいる。暴行を受けてダメージが蓄積されているのは目に見えて明らかだった。

「タイムアップ。終了、もういいだろ。勝負再開といこうじゃないか!!行け!カケルスナイダーZ!!」

彼のロボットが飛翔して、空中から巨大な銃器をこちらに向けてくる。思わず優理は彼の前に立つ。放たれた光線が直撃して爆発が巻き起こった。煙が晴れると、優理も後ろの彼も吹き飛んで、地面に顔を埋めている。

(これ、不味いな・・・意識飛びそう)

高瀬の方を見ると、尚も攻撃の手を休める気配は無い。自分の体はずっしりと重い鉄で出来ていて、先程の攻撃を被弾しあちこち痛んでいる。

「これでフィニッシュ!!食らえーーーーーーーー」

「すっごーい!!ロボットが戦ってる!!何ここ!?」

攻撃を撃つ間際、自分が入って来た入場門と同じ場所から女生徒の姿が見えた。

「何だ!?・・・あんた誰だ!?」

「私?3年の上野っていうんだけど。一体何やってるの?」

その少女は赤毛が特徴的で、目を輝かせながら乱入してきた。

「上級生が何故ここへ?私の模型を絶賛しに来てくれたんですか?」

「んーん。全然。道に迷っただけだよ。青い水が周囲に広がったと思ったらここに辿り着いただけだし。ロボットの観賞会やってんだね、夢の中で」

「ところで、先輩。どうです僕のカケルスナイダーZ。とっても素晴らしいでしょう!!」

カケルスナイダーZは、怪人のメカが合体したかの様なフォルムをしており、独創性は高いものの綾乃には理解出来なかった。

「すっごい変。あっちの白いやつの方がシンプルでカッコイイんじゃないかな」

悪の合体メカのような物よりも、ヒーローの様なスッキリとしたラインが見える機体を綾乃は推した。優理は誉められたが心境は悲鳴を上げている。注意を逸らして逃げる算段がご破算になった。高瀬はわなわなと震えて激昂した。全く別のプラモデル同士の組み立てから、色塗り、ブラッシング、わざと傷を付けて汚くしたり、様々な技術の集合であり、ただただプラモデルを購入して組み立てただけの物が誉められた事に腹が立った。

「あんな素組みのやつが僕のより勝っていると?許せない!!」

「へ?ちょっと・・・私関係ないじゃない!!」

優理の言葉は高瀬には届かない。

「くたばれ!!」

カケルスナイダーZが砲身を優理に向ける。光が収束して閃光が走った。身動きの取れない優理に向かって行く中で、綾乃が彼女の前に立った。

「しょうがないなぁ」

轟音と爆発が巻き起こり、煙が晴れると綾乃が優理の盾になっている。綾乃自身には傷一つ付いていない。

「なんだと!?・・・こうなったら・・・・リンクシステムの発動だ!!」

空中に10体もの別の白いロボットが現れ、輪の様にグルグルと回っている。

「行け、ロボビット達よ!!俺を否定した糞女に目に物見せてやれ!!」

10体ものロボット達が、一斉に綾乃に襲い掛かる。武装はロケットランチャー、ガトリング、ビーム兵装、中、長距離主体の攻撃が主で綾乃は縦横無尽にリングを駆け回って回避した。距離を詰めて近接攻撃に切り替えた瞬間、綾乃はそのロボットの腕を掴んで放り投げた。もう一体に衝突して爆発が起こり8体に減る。更に一体が綾乃にガトリング砲を近距離で放ったが、見えない壁に反射して別のロボットに直撃し破砕する。優理は、目をぱちくりとさせてその光景を眺めていた。何が起こっているのか理解出来ない程に不可思議な光景を目の当たりにしている。なにせ、彼女に攻撃の一切が効いてない。彼女の髪の毛が緑色に染まっていき緑の光の粒子が広がっていく。残り7体のロボットに緑色の光の粒子が広がり、ロボットの大きさが縮小していく。やがて手の平サイズにまで小さくなり、綾乃の前に集められた。きちんと整列してボウリングの駒の様に立ち往生し

「ほい!!」

の掛け声と共に思いきり蹴飛ばして白いロボットは爆発四散する。

「何なんだ、一体何が起こったって言うんだ!!!」

「何だろうねえ」

綾乃は、含んだ笑みを浮かべると彼女の体が空中で浮遊し、カケルスナイダーZの下まで向かった。腕を回して大きく振りかぶり、パンチを繰り出した。当たった箇所から皹が拡大していき、カケルスナイダーZは無惨に崩れ落ちていく。

「カケルスナイダーZおおおおおおおおおおおおおおお!!」

高瀬がムンクの叫びにも似た雄叫びを上げると世界が揺れた。一瞬にして優理は階段を上った先にある廊下に横たわっている。周囲を見かけると、丁度模型部の部室が見えた。扉を開けると、部長が急に目を覚ましたのか机でまじまじと自分の作品を見直している。あの、カケルスナイダーZが見えた。

「寝ていたか。大会も近いのに良くないな・・・こんなんじゃダメだ。もっとスリムにしないと・・・ところで君たち何で床で寝てるんだ?」

部員達は殺気を放って部長の高瀬を睨み付けている。

『あんたがやったんでしょうが!!』

「おわっお前ら何を・・・」

部員全員で部長を囲っていて、揉めている。右を向けば、廊下で先ほどの赤い髪の少女の姿が見えた。

「綾乃!!どこ行ってたのよ、探したのよ!?また変な事に首突っ込んでんじゃないでしょうね!!」

「違うよ、誰かの『夢の中』に巻き込まれただけで・・・」

「嘘仰い!!ほら、さっさと行くわよ、駅前の期間限定のケーキすぐ売り切れちゃうんだから!!」

もう一人の少女に引っ張られるようにして、赤い髪の少女が退場していき優理は何が起こったのか釈然としないまま、一度校舎を離れる事に決めた。




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