Voo Doo Child

夜桜一献

文字の大きさ
上 下
171 / 246
The killer of paranoid Ⅴ

第七話

しおりを挟む
考えるより早く、令二は式神に御酒とワンの周囲に結界を発動させる。3対1からの構図を崩すと共に、化け物をこちらではなく二人の解放に使わせるのも目的としていた。ワンが舌打ちをして、御酒に結界の破壊を促した。

「こレを壊せるカ、アイツノ存在維持二力を使ってイル分私では壊せるダケの力が無い」

「あの化け物なら、軽く壊せそうだがな」

「否、隙をツカレる可能性が高イ。あいつもそレを狙っての事ト見た」

「分かった、やってみよう」

 御酒は地面に五芒星を描き、親指を噛んで血を流して悪魔を召喚する。巨大な角を持つ下級の悪魔が姿を現す。赤い肌に背中に羽が生えており、近接主体の悪魔かその手には大きな斧を持っている。悪魔が結界に振り下ろし、攻撃した箇所に小さいながら亀裂が入る。令二は化け物が襲い掛かってくるので、逃げ回る様に、移動を続けながら射撃する。途中、鎖を発生させて進行の邪魔をしながら迎撃する。化け物は邪魔な鎖ではあるが、糸の様に簡単に引きちぎっていく。天井を壊す程の力の持ち主に接近戦が出来る程の力はこちらにはない。式神に対応させるのが常だが、結界の維持に使用している以上激しい動きは難しい。鎖を発生させるのが精々で現状は時間稼ぎにしかなっていない。札を空中に散布して爆札を化け物に多数貼り付ける。爆発させると肉片が飛び散り、悲鳴を上げて化け物の動きが鈍る。銀弾を撃ち、弾も補充してありったけを頭部に当てて距離を取る。多少は効いたかと思ったものの、煙が晴れると、爆札の効果もあってかダメージは通っている。怒り狂ったかの様にこちらに突進してきたので、歪んだ空間に無数の小さな鎖を放出し、足場とするべく横に出す。跳躍して足場を踏んで化け物の頭上を飛び越える。静止が効かない化け物はそのまま壁にぶつかった。壁が少し壊れて崩れる。基本ゾンビなので知能は低い。好機とみて攻撃しようと刀を構えたが、同時に結界の割れる音も響いた。斧を持つ悪魔が突進してきたので、回避しようとしたが炎の弾が後方から放たれる。瞬時に式神を呼び寄せて、斧と剣がぶつかり、御酒が放った炎の弾を半円だけを作って式と自分を防御する。爆発が起こって煙が起こると今度はその煙の中から、ワンの特別製が現れ、結界を壊して拳を付きだしてきたので刀で防ぐ。衝撃は防ぎ切れず、後ろへ吹きとばされる。何とか耐えて体制を維持し、式神に悪魔を鎖で拘束させて、チェーンブレードで腹に当てて血祭りにあげる。悪魔は肉を抉られながら断末魔を上げて消滅した。状況は好転していない。ワン、御酒、化け物が近づき、令二と式神が互いに背を預けて固まる。危機的状況の最中で、エレーベーターが稼働し、扉の開く音が聞こえた。エレベーターから降りて、現れたのは白崎千鶴だった。それを見て、令二は式神と共に化け物へと踏み出す。千鶴は白いコートを脱いで、動き易い格好になった後、拳銃を発砲して二人に結界を張らせた。二人は救援に驚きつつ、少しずつ下がっている。撃ち終わった後も弾を装填して直ぐに射撃を開始する。令二も化け物を式神と2対1で対処していた。鎖で動き難くしつつ、令二が鎖で踏み台を作成して跳躍する。首を跳ねる直前、令二は舌打ちして絶好の機会を見送り、刀を納める。次いで、式神が化け物に襲われ、組み付かれるとその大きな顎で噛みつかれ破壊された。元々、ゾンビを相手にした際片腕を犠牲にしていた為、組まれては為す術もない。令二は体に顔が浮かび上がるのを見た。段々とより鮮明になっていく、生きた人質。

「気ヅいたヨウダな?人質ヲ化け物に組ミコンデイる事に!!今度こそ終ワリだ!!」

「令二!!言ってなかったけど、解呪終わってないから!!時間ないし無理って思ったから放置してこっち優先しに来たから時間は20分もないよ!!」

「分かってる」

人質が2択を迫ってくる。考えを巡らせる余裕もない。

令二がそう言うと、通常の式札とは違う別の札を取り出した。

「出でよ、玄武」

四聖獣を呼び出す召喚の札を手にして、令二は玄武を召喚する。少し大きめの亀が出現すると、令二の意図を汲んだのか、すぐ様巨大な黒い猫へと姿を変えた。
しおりを挟む

処理中です...