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The killer of paranoid Ⅶ
第十四話
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浦美が袖から鈴を取り出して、病室で眠る海人の妹の姫の前でちりんと鳴らす。その場には京子、夏樹、霞、優理、そして兄である海人が同席している。海人は結晶の返還を死神の宣告の除去と引き換えにする事を望んだ。不要になったのであれば返還するのに理由は不要。周囲が変化して一同息を飲む。暗い闇の中へ引きずりこまれたかのように、風景が真っ暗になった。青い光を放つ火の玉がぼうと付き、骸骨の顔を持つ死神が5人へ近づいた。冷たい息を吐き、ゾッとするかのような畏怖を浦美を除く4人は感じ取る。
「はあい。ちょっと貴方に用事があるんだけどいいかしら?」
「何ノ用ダ 呪イノ化身」
「この病院の姫って子に死の宣告したと思うんだけど、取り消しに出来ない?」
「・・・取リ消ス理由ハナンダ」
「個人的な希望かしら」
「無理ダ。死ノ宣告ハ規約ノトオリ履行サレル。ソモ姫ト呼ブ幼子ニハ生キル意思ハナイ。生キル意思ナキ者ノ死ノ宣告ヲ取リ消ス事ハデキン」
「嘘だ!!」
海人が大声を張り上げる。
「嘘デハナイ 彼ノ者ニ聞クガイイ」
死神が、その場に姫の魂を召喚する。黒い球体に包まれたものが、姫の頭上から割れて溢れて姫に纏わりつき、黒いドレスを身に纏って現れた。お世辞にも似合っているとは言い難い化粧もしている。
その頭上の球体が割れたのを見て、夏樹は少し目を大きく見開いた。
「姫!?どうしたんだその恰好は」
「・・・私も聞きたいんだけど、これどういう状況なの?私化粧してるし」
姫が呆れた表情で兄を見る。
「お前は今、死神に自分の命日を決められてしまっているんだ。今僕たちはそれを無かった事にして貰おうとしてる。だから姫、この死神に言ってくれ。お前はまだ生きたいんだって」
「ふーん・・・そういう事。お兄ちゃん、ハクちゃんや優理ちゃんと一緒に人の心を集めてくれたんだよね?そんな事しなくてもいいのに」
「ちょっと、随分達観してない?死ぬかもしれないのに」
「様子が変だよね。恰好もそうだし」
「姫ちゃんと何度か話をした事あるけど、こんなにサバサバしてない気がする」
夏樹、霞、優理が小さく会話する。
「何でそれを知って・・・?」
「ハクちゃんから聞いたんだ。けど、残念だけど私もう“次”に行きたくて仕方ないの」
「次?」
「死んだら、神様からギフトを貰って異世界へ行くの!チートな能力を使って大冒険するんだ!!」
それを聞いて全員が口を開けて絶句する。
「・・・姫ちゃん、ひょっとして私が貸した本読んでくれた?」
優理が恐る恐る口にすると姫は笑顔で答えた。
「うん!!すっごく面白かった!!私も早く異世界へ行ってみたいって思ったよ!!だからもう私は生きる必要が無いんだよね。死ねば異世界に行けるんだから!!」
聞いた瞬間、優理が頭を抱え、死神も目を丸くして表情を見せた。
「何を言ってるんだ、姫!!死んでも異世界なんかに行ける訳無いだろ!!」
目を覚ませ、と海人が言うが
「行けるもん!!お兄ちゃんの嘘付き!!もう良いよ、気分悪いから帰る!!」
「おい、ちょっと待て姫!!、死神に生きたいって言ってくれよ!!」
「ヤダ!!私はもう“死にたい”の!!邪魔しないでよね!!」
兄の言う事等聞かずに、姫はこの場から消えてしまった。
途方に暮れる海人に何と声を掛けたらいいかわからない。
「面白い子ね。死が終わりじゃなくて、先へと続く道だと思ってるなんて」
浦美がクスクス笑う。何せ死にたいのに希望を見いだして生きる事へのの活力を得ているのだ。
「欲望ガ肥大シテ何ヤラ特殊ナ状況下ニアルトミエル。“死”ガ“生キル希望”トイウ、極メテ特殊ナ状況下デノ履行ニモ不安ガノコル・・・カ。呪イノ化身ヨイイダロウ、コノ者ガ“死”以外デノ生キル希望ヲ見イダセタナラ宣告ハ無効トシヨウ」
「気前が良いわね・・・まぁお役所仕事に万が一ミスでもあれば貴方は大目玉だものね?」
「煩イ」
「バク、あの状態って・・・」
夏樹が恐る恐る尋ねると、バクも震えた声で返した。
「察しの通り、姫さんへハクが種を撒いた可能性があるっすわ」
夏樹、優理、海人それぞれ三人が頭を抱える事なった。
「はあい。ちょっと貴方に用事があるんだけどいいかしら?」
「何ノ用ダ 呪イノ化身」
「この病院の姫って子に死の宣告したと思うんだけど、取り消しに出来ない?」
「・・・取リ消ス理由ハナンダ」
「個人的な希望かしら」
「無理ダ。死ノ宣告ハ規約ノトオリ履行サレル。ソモ姫ト呼ブ幼子ニハ生キル意思ハナイ。生キル意思ナキ者ノ死ノ宣告ヲ取リ消ス事ハデキン」
「嘘だ!!」
海人が大声を張り上げる。
「嘘デハナイ 彼ノ者ニ聞クガイイ」
死神が、その場に姫の魂を召喚する。黒い球体に包まれたものが、姫の頭上から割れて溢れて姫に纏わりつき、黒いドレスを身に纏って現れた。お世辞にも似合っているとは言い難い化粧もしている。
その頭上の球体が割れたのを見て、夏樹は少し目を大きく見開いた。
「姫!?どうしたんだその恰好は」
「・・・私も聞きたいんだけど、これどういう状況なの?私化粧してるし」
姫が呆れた表情で兄を見る。
「お前は今、死神に自分の命日を決められてしまっているんだ。今僕たちはそれを無かった事にして貰おうとしてる。だから姫、この死神に言ってくれ。お前はまだ生きたいんだって」
「ふーん・・・そういう事。お兄ちゃん、ハクちゃんや優理ちゃんと一緒に人の心を集めてくれたんだよね?そんな事しなくてもいいのに」
「ちょっと、随分達観してない?死ぬかもしれないのに」
「様子が変だよね。恰好もそうだし」
「姫ちゃんと何度か話をした事あるけど、こんなにサバサバしてない気がする」
夏樹、霞、優理が小さく会話する。
「何でそれを知って・・・?」
「ハクちゃんから聞いたんだ。けど、残念だけど私もう“次”に行きたくて仕方ないの」
「次?」
「死んだら、神様からギフトを貰って異世界へ行くの!チートな能力を使って大冒険するんだ!!」
それを聞いて全員が口を開けて絶句する。
「・・・姫ちゃん、ひょっとして私が貸した本読んでくれた?」
優理が恐る恐る口にすると姫は笑顔で答えた。
「うん!!すっごく面白かった!!私も早く異世界へ行ってみたいって思ったよ!!だからもう私は生きる必要が無いんだよね。死ねば異世界に行けるんだから!!」
聞いた瞬間、優理が頭を抱え、死神も目を丸くして表情を見せた。
「何を言ってるんだ、姫!!死んでも異世界なんかに行ける訳無いだろ!!」
目を覚ませ、と海人が言うが
「行けるもん!!お兄ちゃんの嘘付き!!もう良いよ、気分悪いから帰る!!」
「おい、ちょっと待て姫!!、死神に生きたいって言ってくれよ!!」
「ヤダ!!私はもう“死にたい”の!!邪魔しないでよね!!」
兄の言う事等聞かずに、姫はこの場から消えてしまった。
途方に暮れる海人に何と声を掛けたらいいかわからない。
「面白い子ね。死が終わりじゃなくて、先へと続く道だと思ってるなんて」
浦美がクスクス笑う。何せ死にたいのに希望を見いだして生きる事へのの活力を得ているのだ。
「欲望ガ肥大シテ何ヤラ特殊ナ状況下ニアルトミエル。“死”ガ“生キル希望”トイウ、極メテ特殊ナ状況下デノ履行ニモ不安ガノコル・・・カ。呪イノ化身ヨイイダロウ、コノ者ガ“死”以外デノ生キル希望ヲ見イダセタナラ宣告ハ無効トシヨウ」
「気前が良いわね・・・まぁお役所仕事に万が一ミスでもあれば貴方は大目玉だものね?」
「煩イ」
「バク、あの状態って・・・」
夏樹が恐る恐る尋ねると、バクも震えた声で返した。
「察しの通り、姫さんへハクが種を撒いた可能性があるっすわ」
夏樹、優理、海人それぞれ三人が頭を抱える事なった。
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