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The killer of paranoid Ⅷ
第二十八話
しおりを挟む葵は地面にうつ伏せで倒れている少年に駆け寄り、安否を確かめる。気を失ってはいるが命に別状はなさそうだ。
「あのアヤノって奴が邪神を説き伏せたって事だよな」
「多分違うと思うけど、邪神の力を強制的に返還するなんてあり得ないワン」
「とりあえず、こいつを連れて移動するか。帰りはどうすりゃいいんだろうな」
綾乃に貼られた札をポケットから取り出すと札が光り始めて地面に魔法陣が描かれる。瞬時に元に居た場所まで戻って来ると、未だ多くの人がその場所で救護活動を行っていた。
「君、その子も倒れたんだろう?こっちに連れて来なさい!!」
「わかりました。お願いします!!」
後は周囲の大人に任せてようやく葵は一息着く。
「じゃあな主。次呼ぶ時はビーフジャーキー持参で宜しく。寧ろそれ以外は拒否する」
「解った、用意しとくって」
綾乃は邪神が完全に消え去った事を確認すると葵達を探し始めた。ところが空から探しても、降りて声を掛けても居ないので途方に暮れる。
あの巨大な悪魔に殺さた可能性も出てきた。
何かが頭を過ぎり、彼と別の誰かが重なる。
そこで後ろから綾乃に抱きつく九尾の狐が姿を見せた。
「たまちゃん!!どうしてここに?」
「何、久しぶりに綾乃に会おうと思うての。探して居るのは小僧と犬コロじゃろう?そやつらなら先程お主を置いて、救助した者と共に先に帰ったぞ」
「えぇ!!ホントに!?・・・そっか。良かったぁ」
「どうした、気になる事でもあるのか」
「気になるっていうか・・・何だろう。懐かしくて、悲しくて胸が締め付けられてて。でも生きてるってわかって凄く嬉しいの」
良く解らない感情が綾乃の中を駆け巡る。九尾の狐は目に涙を見せる綾乃に寄り添った。
葵は空を見上げると、あれだけいた式神が影の形も見当たらない事に気付く。自分が成し得た成果ではないにせよ尽力して防いだ実感が湧く。
「ああ、そういえばあいつに御礼言わなきゃな」
ふと彼女の顔が、何かと重なる。
遠い昔の光景の
誰かも解らぬ少女の面影。
気付けば葵は一筋の涙が頬を伝う。
「変だな、何で急に涙なんか」
涙を拭って、葵は彼女を探し始めた。
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