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1.暴力の対義語

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 25年間、暴力の世界で生きてきた。殴る、蹴る、殴る、蹴る。その繰り返し、それしか生きる手段が無かった、なんてことは無い。ただ好きだった。喧嘩が。
 タイマンも対多人数も、負けたことは無い。ただ結局この日本ではそんな生き方は認められない。当たり前だけど、人を殴ったり蹴ったりすると、それなりの罪に問われる。
 かと言って、この才能を格闘技に活かそうと思ったことも無い。俺は制限された暴力じゃなくて、自由で、危うさ全開の暴力が好きだった。

 25年間、喧嘩無敗。「生きる伝説」とか「不敗神話」とか「暴君」とか、呼ばれるようになった。
 二ノ瀬 巡の名を界隈で知らない人はいなくなった。
 だが虚無だった。暴力を極めても、その先に何も無かった。
 そんな当たり前の事に気付くのに25年間かかった。そして2年前ある事件をきっかけに喧嘩を引退して今はバイトで何とか食い繋いでる。そんな抜け殻みたいな男の話だ。







***
 今日の残業は流石に疲れたな。新人が覚えてくれるまでずっとこの調子かよ……。明日は朝からスーパーの品出しで夜は居酒屋……。こんな生活してるといつかぶっ壊れるな。
 そろそろちゃんとした就職先探すか……。あー酒飲みてーな。コンビニ行くか。

 そうしてコンビニへ歩く道中巡はなんとなく気配を感じ、後ろに振り向く。グサッという、鈍い音と共に、脇腹に包丁が刺さっていた。
「お、お前が悪いんだ。お前が、お前がお前がよォ?????」
 そう言いながら目の前のやせ細った死んだ目をしている男は、包丁を引き抜いた。

「お前、あん時のクズか。弱いものいじめしてた」
 巡は、意識が遠くなるのを感じながら、声を発した。この男は以前巡の知り合いにストーカーをしていた男だ。

「お、お前のお前のせいで、俺の人生めちゃくちゃになった!!!!!責任を取れ!!!!!」

「……なぁ、そういうの、なんて言うか知ってるか?こう言うんだよってな」

「う、うるせぇえええぇぇえええ!!!!!お前を殺したら、次はあの女だ。俺をストーカー呼ばわりしやがって……殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す…………で、でもなぁそこに包丁が刺さったら人は死ぬんだよ!!!!はははははは!!!!!」

 巡は遠のく意識の中、最後の力を振り絞って虚勢を張る。
「あーこんなんじゃ俺は死なねぇぞ、精々入院ぐらいだろうよ。」

「は?は???は?????は?…………
 そそそ、そんな訳あるか!!!!!」

「伊達に25年間喧嘩してる俺がこの程度の傷で死ぬと思うか?俺が死ななかったらお前は警察に捕まる。もう一度、な」

「だったら確実に殺す、ころしてやるぅううううぉおおぅううぅ!!!!!」

 男は病的に細い腕で包丁を高く上げ、走りながら全力で振り下ろす。包丁が巡の首に触れる1歩手前のその瞬間。巡のハイキックが男のこめかみにクリーンヒットしていた。

「ぅぅうう……」

 男は声にならない声を上げ、悶絶していた。そして、再び顔を上げた先には、巡の人生最後にして、「生きる伝説」と言われた黄金の全力左ストレートが待ち構えていた。
 巡の左は顔面にめり込み、男を5メートルほど先のゴミ捨て場に吹っ飛ばした。

 二ノ瀬 巡、喧嘩生涯無敗。







 ……ふぅ。
 …っはぁ、流石に…やべぇな。この出血は……三途の川案件だわ……。
 ……て、店長に連絡しないと。明日は休む……って……。
 っ……。最後にし…ては…結構面白かったな…。もう1回、もう1回…人生があるなら……好きなだけ……闘いた…い。自由…に。暴……力の限りを尽……くしたい……。はは……っ。悪くな……い人生だっ……た。
 あ…やべ…も…う、マジ……で…しんど……………。











***
 ん?
 眩しい。
 朝、朝?
 ヤバいバイトに遅れる!!!急いで着替えを……って。
 ここ、どこだ。辺りを見回しても草、木、草、大木。わぁ、美しい花。
 って、どこの草原だ。俺、こんな寝相悪かったか。
 いや、草原ってレベルじゃねぇな、ここ。めっちゃめちゃ森の中だわ。そしてなんだこの有り余る元気は、熱情は、渇望は。


 あれ、俺昨日腹刺されたよな。……ん?あれか、つまり天国か?いや違う落ち着け、俺は天国に行けるような人間じゃないし、天国にしては森過ぎる。

 腹の傷は……って、なんだ?これ、この指、ほっそ!!!骨と皮しかないぞ……。  待て、腕もだ。足も???身体中から筋肉という筋肉が消えてやがる。

 ちょっと待て、アレの感覚が無い。無いぞ。待て、それだけは無理だ。想像したくない。


 …………5秒数えて確認しよう。
 すぅーーー1、2、3、4、5!
 いや、無理だ。そもそもこれ誰の体なんだよ。


 覚悟を決めろ、巡、893の事務所に突撃した時は、こんなビビってなかっただろ。肩書きに意味なんて感じねーが「生きる伝説」「不敗神話」「暴君」と呼ばれた人間が、ここで立ち止まってていいのか?いやダメだ。


 行くぞ!
 





 無い。どこにも無い。やはり無い。そんな訳が無い。男の象徴たるものが。


 どうやら俺は本当に、女になってしまったみたいだ。それも、小学生ぐらいに。いや別にわざわざ確認しなくても銀髪ロングヘアが見えた時点で俺の体じゃねぇなって分かってたけど。
 なんでこんな暴力の対義語みたいな体に……。

 確かに死に際もう一度人生を願ったような気もしないがこれはちょっと……。女装趣味は無いからなぁ……。
 とにかく、こんな森に1人で居るよりか、他の人に話を聞こう。まだここが日本か海外のどこなのかも分からねぇ。おい、これ本当にヤバいんじゃないか?



 歩き始めて1時間で足に乳酸が溜まってやがる。どんだけ貧弱なんだ。仕方ない、一旦休憩を挟もう。
 近くに座れそうな何か……ん?ちょっと待て、あれは看板か?
 見た事ない文字だが、なんとなく読める……どうやら海外っぽいな、こっちに進めばいいのか……?って見た事無い文字が読めるってそんな事果たしてあるのか?いやわからん、謎は深まるばっかりだ。とりあえず人に会って話を聞かないと何も分からない。1人で生きていける程サバイバルに自信は無い。







***
「カーミラ隊長!至急報告したい事案があります!」

「何だ。このクソ忙しい会議中に!」
 黒髪長髪で、如何にも厳しい表情をした女性が荒々しく返事をする。

「西の森に、エルダーオークが確認されました!」

「監視に付け、動向を見守れ。落ち着いたら向かう。くれぐれも私抜きで戦う…
「えと、大変申し上げにくいのですが……現在の西の森は、姫様が家出中でございます」

「何だと!姫様が又厄介な事を……会議は一旦中断だ、東の戦線をゆるやかに最終防衛ラインまで下げつつ、アレの準備を整えろ。それと、カーミラ隊は至急準備をしろ、姫様を救出する」

「「「「はっ!!!」」」」








 あれから30分ぐらい歩いてるが風景に何も変化が無いな。本当にこっちで合ってるのか?
 それにしても本当に見た事ないキノコとか花ばっかりだな、虫もデカいし、どこの国のどこに居るんだ。つか、薄々思ってたんだがこれ地球か?ピンクのアリとか流石に見た事ないぞ。

 何となく捕まえてゴクリと唾を飲む。
 これ、もしかして食えるか……?

「こんにちは」

 前には金髪ショートの美少女が居た。

「うわぁあ!!!」

 思わずアリを投げ捨てる。

「い、いやそのアリ、毒があったから、食べちゃいそうな顔してたから……」

「へっ?ちょっ、ちょっと待て、どうして俺と会話が出来てるんだ?」

 小さい脳みそをフル回転させて状況を呑み込む。どうやら食べてはいけないタイプのアリだったらしい。警戒色だしね。

「会話出来るといけないの?」

 そうして金髪の彼女は純粋な眼差しで首を傾げる。

「いやそんな事は無いが……」

「ところで、何をしてたの?私には森のど真ん中で毒アリを食べそうに見えたんだけど……」

「……それはすぐに忘れてくれ、とりあえず人が多い所に行きたいんだ。訳あって訳が分からないんだ。色々な人の話を聞きたい」

「じゃあ王都までだね!」

「王都?アラビア系の国か?」

「あ、あらびあ?よく分からないけどこの先にあるのはステラ王国の王都だよ!」

「質問させてくれ、日本って知ってるか?」

「にほん?よく分からないや、決して、決して私が勉強をサボってる訳じゃないよ!」

 ステラ王国?聞いた事がない。そして日本語を喋っているのに日本を知らない。そんな事はありえない。
 思えばおかしい事だらけだ。見た事ない色の植物、昆虫。知らない文字の看板、そして日本を知らない日本語話者。これってもしかして……。
 巡はとある結論へと辿り着いた。 
 確信が欲しい、この結論が合っているのか。

「この世界、もしかして魔法とかって……」

「あはは、面白い事言うのね、貴方エルフなのに」

 数刻の沈黙が流れる。いや、相手が何を言ってるかよく分からないから許して欲しい。

「え?え?エルフ?」

「あれ?違った、その尖った耳、雪のように白い肌、スノーエルフでしょ?」
 

 有り得ない。そんなことあるのか、触るしかない……。

「ホントだ……尖ってる……」

「あはは、そんなエルフである事を初めて知覚したみたいな……」


「え、割と本当にそうだったり……するの?」

「あ、あはははは~」

 本当に乾いた笑いが出た。どうやらここはマジで異世界みたいだ。


 数秒の間が流れ、大きく息を吸って、吐く。

「……自己紹介お願いしていいか?」

「私の事知らないんだ、この国に居るのに、君はさっきから不思議だね」

「記憶喪失、みたいな感じと思ってくれ。色々と混乱してるんだ…」

「分かったよ。私はフィロローナ・ステラ、この国のプリンセス、かっこ現在家出中だけどね」

「プ、プリンセス?」

「もう、驚いてばっかりだよ、貴方も自己紹介して」

 名前、どうしよう、そういや巡は女の子みたいってよく弄られてたな。

「メグリだ。」

「ふーん、それだけ?」

「うーん余り俺の話をしても理解出来るとは思えないんだけどな」

「エルフの話はいつだって難解、だからこそ面白いんだよ!話してくれるまで引き留めちゃう!」

 そうして姫はメグリをジッと見つめる。

 不味いな、凄くいい笑顔だ。やめて、それ以上俺をその笑顔で見つめないで……。

「分かったよ、話す」

 こんな女の子に根負けするとは随分優しくなったな俺も。

「話半分に聞いて欲しいんだが、多分俺はこの世界じゃない世界から来た」

「ど、どんな世界?」
「箱庭だ。常に誰かの意思や思惑が交錯していて、弱者は強者に縛られ続ける世界だ。俺はそんな世界が嫌いで嫌いで仕方なかった。だから色々間違えて、最終的にここに来た。」

「なぁーんだ。どの世界も案外そんなもんなんだね」

「え?」

「同じだよ、この世界も箱庭だよ、神様のね」

 何だよその目付き、全てを知って全てを諦めたようなその目は。

「この世界に来たからには俺は何かするぜ。元より死んでた筈なんだ。言われりゃ神だって殺すさ」

「ふふっ……うん!うん、じゃあ期待して待ってるね」






 何だ、背後から枝が折れる音がする。それに、邪悪なオーラを放っている。この気配は殺気に近い、いやそれよりもっと本能に訴え掛けてくる。

 メグリはそっと背後を確認する。

「えっ、なになに?どうしたの?」

「シッ、何かいる。後ろ」

「うーんあの影、もしかしてエルダーオークかな、おかしいなこんな所に居るっけ」

「エルダーオーク?とにかくここは危険だ。早急に逃げ
 ドォンと雷が落ちたような巨大な轟音が森の中に響き渡る。

 見渡すとオークの立つ場所からメグリ達までの木が全て、折れ、無惨な状態になっていた。

「おいおい、なんだそりゃ、どれだけ化け物なんだよ。」

 やべぇぜあの怪物、こっちを睨んでやがる。なんだあれ、例えるならそう、ヒグマとブタを足してイノシシの牙を付けて超デカくしたみたいな、手には巨大な棍棒、創作生物にしてもやりすぎだな。流石異世界だわ。……あっ、姫は
「うぅ……」

 轟音と風圧でやられたか、しばらく動けなさそうだ。この体じゃ運べないし、あいつとタイマンして、時間稼ぐしか無いのか。

「グゥゥゥゥ」

 オークは低く唸って期を待つ、どの瞬間でもお前を殺せるぞ、と言わんばかりに。俺には分かる、奴にとって殺しは権利ではなく、義務だ。最悪逃げてもいいが、姫は確実に死ぬ。姫には借りがある。この世界を教えてくれた大きな借りが。

 借りは、すぐに返せそうだ。

 とは言えこの体じゃ流石に勝ち目が無いな。相手は多分3mもあって、めちゃくちゃデカい棍棒を持ってる。

 だからどうした。二ノ瀬 巡、ビビってんのか?あんなデカブツに。ここで退くのか?あんな奴に、あんな奴に無敗記録を破られていいのか?
 ダメだよな。なら、戦い抜いてやる。この体で、全力の暴力を体現する。
 それに、ここは異世界だ、地球と違って、法律も緩い、好き勝手やってやるよ。


 距離、約25メートル、まずはこれを詰めないと話にならない。

 前に!

 オークは巨大な棍棒を振り上げ、自らに近付いてくる不届き者目掛けて、全力で振り下ろした。
 再び轟音が響くが、エルフはミンチにはなっていない。

「こっちだ、ウスノロ」

 なんとか横に転がって避けられたけど、やべぇな。当たったらミンチだ。鼓膜がちぎれそうだ。

 オークは棍棒をさっきと違った形で構える、さっきは斧や刀の構えだったが、次は野球のような構え。全力で振り絞り、中央にエルフの姿を捉える。先程とは違う、超広範囲攻撃。

 力みが、開放される。

 メグリは、飛び上がった。棍棒より高く。もうオークの目の前に来ていた。

「そうだよな、俺の体は小さい、なら必然的に地面スレスレを狙うよな?」

 メグリの右腕がオークの左眼を突き刺した。

「グゥオオオオオウォオオオゥゥゥオオ!!!!!」

 オークは棍棒も何もかも手放し、叫び暴れる。その地響きだけで、木々や大地が崩れていく。

 メグリはすぐさま後ろに飛び、回避体制を取る。

「ははは、効くだろ、目潰しは。悪く思うなよ。こんな戦法、相手が超格上で人間じゃない時しか取らねーから」

「グゥゥゥゥ!!!」

 メグリは感じていた。昂りを。2年前に捨てたはずのあの高揚感を。
 左眼の視力と棍棒というリーチを失った野生の獣が凄まじい勢いで飛びかかる。

「な、言ったろってよ。」

 メグリが横に躱すと、空中で軌道変更出来ないオークは、木に突き刺さった。叫び狂い身をよじればよじるほど深く、深く突き刺さる。
 皮肉にも自らが壊した自然に牙を剥かれた。

「グゥアアォアゥア!!!!!」

「いくら叫んでも、もう終わりなんだよお前。」

 メグリは血の雨と耳を劈くような叫び声の中をゆっくり歩きながら考える。自然と高笑いしてしまう。

「そうだ、この世界の魔物、1匹残らず狩っちゃおう。狩って狩って狩り尽くす。最後に何が残るかな?」

 やっぱり、喧嘩って、暴力って、堪らなく楽しい。

 メグリはその誓いを胸に1度再び自分を押し殺し、姫の元へ向かった。







「……様、……様!」

「ん、何……」

「姫様、目が覚めたのですね」

「…おはよ、そして久しぶり、カーミラ」

 知ってるベッド、知ってる空気、知ってる人。戻ってきちゃった、王城に。

「色々言いたいことはありますが……」

 また説教ルートだよこれ、そんなんだから家出してたのに。

「まずは無事で本当に良かったです……」

「そ、そんな泣かなくても」

「今回は本当に心配したんですよ?」
 他の隊員からの視線が、ちょっと冷たい。まぁ毎回迷惑かけてるとこうなるか。

「あ、そう言えばあのオークは?」

「その件ですが、確認したいことが御座いまして……」

「メグリと名乗るひ弱なスノーエルフのメスとお知り合いですか?」

「……うん!」

「はぁ……いつエルフなんかとお知り合いに……」

「彼女は私の客人です。丁重に扱いなさい」

「分かりました」

「そして、あんまり色々聞かないであげてね。混乱してるみたいだから」

「はっ。それと、姫様……お力添えをお願い出来ますでしょうか……」

「いつ?」

「今です。姫様の家出を狙われまして……」

「はぁ……だから嫌なんだよね……」

「これ以上は戦線が……」

「分かったもう、すぐ行くから馬車出して!」

 馬車に乗り込む。嫌いなんだよね。馬車って、乗り心地悪いから。でもいいよ。会えたから。鍵に。


 


 申し訳ないけど、カーミラや他の人に教える訳にはいかない。あれだけ心の中が真っ黒な人、真っ黒というか、純粋に黒、色んな色が混ざってるんじゃなくて、巨大な1つの暴力によって塗り潰されてる。初めて見た。




 あれが、かぁ。神様もワクワクするのを連れてきたね。彼女ならいつか本当に、神様の首を取るかもよ。
 なぁ、聞こえてんだろ?クソ野郎が。

 



「姫様、着きました。」

「うん、ありがとう!じゃあ、頑張るね」

「ご武運を」

 フィロローナは用意された階段を1歩ずつ踏みしめていき、ステージの上に立つ。自らの1歩1歩が人の命を握り潰すのを知っているかのように。
 今から開催されるのはそう、悪魔のライブだ。

「神器錬成、絶対女神の御声アブソリュートルイン

 そうしてこの文明には到底似合わないようなマイクを取り出す。


「アルバレフ共和国のみんなー!」

 フィロローナがステージに上がった瞬間、凄まじい量の矢や攻撃魔法が飛んでくる。
 だが全て、防御魔法によってカットされる。そして彼女は、マイクを持つ。

「ふふ、血の気が多いね!」

 彼女には砲弾でさえも届かない。

「そんなんじゃ彼女出来ないぞー!」

 どこぞの大魔法士の大魔法さえも。

「それじゃあ行くよー!」
 



 敵国の叫びさえも。

「これ以上、戦争するんだったら

 その声はアルバレフ共和国の全土に響き渡った。
 そして、この無意味な戦争は終了した。
 正確には、この声を聞いたアルバレフ共和国の人間全てがステラ王国に攻撃出来なくなった。この声を聴き、国の大義を背負い、攻撃した瞬間死ぬようになったのだ。



 フィロローナ・ステラ、第2王女、通称、傾縛姫。

 彼女がマイクで伝える事は、絶対の縛りを生む。どんな化け物であっても、犯罪者でも、一国の王でも、神さえも。
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