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「セバス、もう王宮も社交界も敵ばかりですわ。こうなったら、最後の砦……お父様に泣きつくしかありませんわ!」
リペは鼻息も荒く、実家であるブランシュ公爵邸の門を潜った。
「お嬢様。旦那様は溺愛の権化のような方ですよ。お嬢様の『悪行』をどう受け止めるか、想像に難くありませんが」
「いいえ! 公爵家当主として、王家との不和は何より恐ろしいはず。私が『殿下に嫌われるような振る舞いをしている』と正直に話せば、家の存続のために婚約解消を主導してくれるはずですわ!」
リペは自信満々で、公爵の執務室のドアを力いっぱい開けた。
「お父様! 大変ですわ! このリペ、殿下に対して数々の不敬を働き、もはや次期王妃としての資質はゼロに等しい不適合者ですの!」
デスクに座っていたブランシュ公爵は、娘の姿を見るなり、破顔した。
「おお、リペ! よく帰ってきたな。まあ、そこに座りなさい。不適合者? はっはっは、相変わらず冗談が上手い子だ」
「冗談ではありませんわ! 私は昨日、殿下の前でマリアンヌ様を罵倒し、さらに殿下のことを『暑苦しい』とまで言ったのですわよ! これはもう、国際問題ですわ!」
リペは身を乗り出し、いかに自分が「救いようのない悪女」であるかを必死に説いた。
公爵は満足げに頷きながら、机の上に山積みになった手紙の束を指し示した。
「リペ、そんなに謙遜しなくていいんだぞ。カイル殿下からは、毎日三通、君を称える報告書が届いているからな」
「報告書……?」
「ああ。昨日の報告書にはこうあった。『リペはマリアンヌ嬢を慈しみ、彼女に淑女としての自覚を持たせるために、あえて厳しい指導を行っている。その姿は、まるで迷える子羊を導く女神のようだ』とな」
「……女神?」
「さらに、君が殿下を『暑苦しい』と言った件についてはこうだ。『リペは僕の情熱が強すぎることを案じ、僕の健康のためにあえて距離を置くよう忠告してくれた。彼女の深い思慮には、ただただ涙が出るばかりだ』」
公爵は感極まった様子で、リペの手を握った。
「カイル殿下は仰っていたよ。『ブランシュ公爵、リペをこれほど立派な女性に育ててくれた貴殿に、叙勲を検討している』とね! リペ、お前は我が公爵家の誇りだ!」
「違うんですの! 殿下が勝手に良いように解釈して、それを広めているだけですのよ!」
「はっはっは! 照れなくていい。殿下からは、さらに『リペが実家で婚約解消を言い出したら、それは彼女が僕を愛しすぎて不安になっている証拠だから、全力で抱きしめてやってほしい』と頼まれているんだ」
公爵は立ち上がると、リペを力強く抱きしめた。
「安心しろ、リペ。お前がどんなに『自分はダメな女だ』と言っても、父さんは騙されないぞ。お前と殿下の仲を引き裂こうとする者は、この私が許さん!」
「お父様まで……! 私の味方は、この世にいないのですか!?」
リペは公爵の広い胸の中で、絶望の声を上げた。
「お嬢様、残念でしたね。殿下はすでに、お嬢様の逃げ道をコンクリートで固めて、その上に金粉を撒いて飾っている状態です」
セバスの冷静な言葉が、リペの心にトドメを刺した。
「……セバス。私、もう家出したいですわ。誰も私のことを知らない、遠い異国へ……」
「お嬢様、その件についても殿下から通達が。『リペが旅行に行きたがったら、僕が王軍を動員して、世界中の観光地を貸し切りにする』とのことです」
「自由が……私の自由が、愛の重さで押し潰されていく……っ!」
リペはガックリと項垂れ、公爵邸を後にした。
実家への根回しという名の「救援要請」は、殿下による「完璧な包囲網」の確認作業に終わったのである。
一方、その報告を受けたカイル殿下は、王宮の自室で満足げにワインを傾けていた。
「リペ……。君が実家で僕の悪口を言えば言うほど、お義父上との絆が深まっていくよ。君は本当に、周囲を幸せにする天才だね」
カイルの瞳は、さらなる「外堀」を埋めるための次なる一手を見据えていた。
リペは鼻息も荒く、実家であるブランシュ公爵邸の門を潜った。
「お嬢様。旦那様は溺愛の権化のような方ですよ。お嬢様の『悪行』をどう受け止めるか、想像に難くありませんが」
「いいえ! 公爵家当主として、王家との不和は何より恐ろしいはず。私が『殿下に嫌われるような振る舞いをしている』と正直に話せば、家の存続のために婚約解消を主導してくれるはずですわ!」
リペは自信満々で、公爵の執務室のドアを力いっぱい開けた。
「お父様! 大変ですわ! このリペ、殿下に対して数々の不敬を働き、もはや次期王妃としての資質はゼロに等しい不適合者ですの!」
デスクに座っていたブランシュ公爵は、娘の姿を見るなり、破顔した。
「おお、リペ! よく帰ってきたな。まあ、そこに座りなさい。不適合者? はっはっは、相変わらず冗談が上手い子だ」
「冗談ではありませんわ! 私は昨日、殿下の前でマリアンヌ様を罵倒し、さらに殿下のことを『暑苦しい』とまで言ったのですわよ! これはもう、国際問題ですわ!」
リペは身を乗り出し、いかに自分が「救いようのない悪女」であるかを必死に説いた。
公爵は満足げに頷きながら、机の上に山積みになった手紙の束を指し示した。
「リペ、そんなに謙遜しなくていいんだぞ。カイル殿下からは、毎日三通、君を称える報告書が届いているからな」
「報告書……?」
「ああ。昨日の報告書にはこうあった。『リペはマリアンヌ嬢を慈しみ、彼女に淑女としての自覚を持たせるために、あえて厳しい指導を行っている。その姿は、まるで迷える子羊を導く女神のようだ』とな」
「……女神?」
「さらに、君が殿下を『暑苦しい』と言った件についてはこうだ。『リペは僕の情熱が強すぎることを案じ、僕の健康のためにあえて距離を置くよう忠告してくれた。彼女の深い思慮には、ただただ涙が出るばかりだ』」
公爵は感極まった様子で、リペの手を握った。
「カイル殿下は仰っていたよ。『ブランシュ公爵、リペをこれほど立派な女性に育ててくれた貴殿に、叙勲を検討している』とね! リペ、お前は我が公爵家の誇りだ!」
「違うんですの! 殿下が勝手に良いように解釈して、それを広めているだけですのよ!」
「はっはっは! 照れなくていい。殿下からは、さらに『リペが実家で婚約解消を言い出したら、それは彼女が僕を愛しすぎて不安になっている証拠だから、全力で抱きしめてやってほしい』と頼まれているんだ」
公爵は立ち上がると、リペを力強く抱きしめた。
「安心しろ、リペ。お前がどんなに『自分はダメな女だ』と言っても、父さんは騙されないぞ。お前と殿下の仲を引き裂こうとする者は、この私が許さん!」
「お父様まで……! 私の味方は、この世にいないのですか!?」
リペは公爵の広い胸の中で、絶望の声を上げた。
「お嬢様、残念でしたね。殿下はすでに、お嬢様の逃げ道をコンクリートで固めて、その上に金粉を撒いて飾っている状態です」
セバスの冷静な言葉が、リペの心にトドメを刺した。
「……セバス。私、もう家出したいですわ。誰も私のことを知らない、遠い異国へ……」
「お嬢様、その件についても殿下から通達が。『リペが旅行に行きたがったら、僕が王軍を動員して、世界中の観光地を貸し切りにする』とのことです」
「自由が……私の自由が、愛の重さで押し潰されていく……っ!」
リペはガックリと項垂れ、公爵邸を後にした。
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一方、その報告を受けたカイル殿下は、王宮の自室で満足げにワインを傾けていた。
「リペ……。君が実家で僕の悪口を言えば言うほど、お義父上との絆が深まっていくよ。君は本当に、周囲を幸せにする天才だね」
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