17 / 29
17
「おーっほっほっほ! 見ていなさいセバス! 今日こそは、この国の最高権力者の一人、王妃様に引導を渡して差し上げますわ!」
リペは、王宮の奥深くにある「薔薇の間」の前で、深呼吸をして胸を張った。
「お嬢様。王妃様はカイル殿下の実の母上。あの方に嫌われれば、いかに殿下が粘ろうとも、婚約解消への道は一気に開けるでしょうね。……まあ、難易度は過去最高ですが」
「覚悟の上ですわ! あえて無作法に振る舞い、王妃様の差し出すお茶を『ぬるいですわ!』と突き返す……これぞ究極の不敬!」
リペは意を決して、豪華な扉を潜った。
部屋の主、エレノア王妃は、優雅にソファに腰掛けてリペを待っていた。その美しさと威厳は、まさに「王国の母」そのものだ。
「リペ、よく来てくれたわね。さあ、楽にしてちょうだい」
「失礼いたしますわ、王妃様! ……ふん、この部屋、少々バラの香りが鼻につきませんこと!?」
リペは鼻を摘み、傲慢な態度でソファにドカッと座った。
(よし、初手で王宮のセンスを否定! 不敬ポイント、一気に加算ですわ!)
しかし、王妃は怒るどころか、扇子で口元を隠してクスクスと笑い出した。
「あら、正直な子ね。実は私も、夫が選ぶこの部屋の香料は少し強すぎると思っていたの。カイルの言う通り、貴女は本当に裏表がないのね」
「……は?」
嫌な予感がリペの背中を走る。
「さあ、リペ。このお茶を飲んでみて。東方の国から届いたばかりの、最高級の茶葉よ」
「……頂きますわ。……っ、なんですかこれ! 色が薄いですわ! もっと濃くて、ガツンと渋いお茶を持ってきなさいな!」
リペはお茶を一口飲むなり、カップをガチャンと机に置いた。
(これですわ! 王妃様のこだわりを否定! さあ、今すぐ『下品な娘は出ていきなさい!』と仰って!)
エレノア王妃は、驚いたように目を見開いた後、感動したようにリペの手を取った。
「……リペ、貴女、私の体調を気遣ってくれたのね?」
「……はい?」
「実は、最近少し胃が荒れていてね。濃いお茶を控えるように医者に言われていたのだけれど、王妃としての意地で飲み続けていたの。……貴女はそれを察して、あえて『下品』を装いながら、私に休憩を促してくれたのね?」
「違いますわ! ただの文句ですわ!」
「いいえ、隠さなくてもいいのよ。カイルから聞いていたわ。『リペの言葉は、氷のように冷たく聞こえても、その芯には太陽のような暖かさが詰まっている』とね。……本当、カイルには勿体ないくらいの良い嫁だわ!」
王妃はリペを抱き寄せ、その頬に優しくキスをした。
そこへ、絶妙なタイミングでカイル殿下が「母上、僕のリペを独占しないでください」と現れた。
「やあ、リペ。母上と意気投合しているようだね。君なら、母上の気難しい性格も一瞬で解きほぐすと信じていたよ」
「殿下! 私は今、王妃様に不敬を働いていたところですのよ!」
「不敬? ……ああ、なるほど。リペ、君は『王族といえども一人の人間である』という真理を、あえて対等な態度を取ることで母上に思い出させたんだね。その真っ直ぐな瞳……僕もまた惚れ直してしまったよ」
(もう、この親子、思考回路がコピペですの……!?)
リペは王妃に「今夜は泊まっていきなさい」と手を握られ、カイルに「明日の朝まで愛を語り合おう」と肩を抱かれ、完全に詰んだ。
「お嬢様。王妃様を『お義母様』と呼ぶ準備、始めましょうか」
セバスの無慈悲な声が、豪華な部屋に虚しく響いた。
「自由が……私の自由なパン生活が、王冠という名の重石で消えていく……っ!」
リペの悪役令嬢への挑戦は、ついに王室全体の「お気に入り」として認定されるという、取り返しのつかない事態に発展してしまったのである。
リペは、王宮の奥深くにある「薔薇の間」の前で、深呼吸をして胸を張った。
「お嬢様。王妃様はカイル殿下の実の母上。あの方に嫌われれば、いかに殿下が粘ろうとも、婚約解消への道は一気に開けるでしょうね。……まあ、難易度は過去最高ですが」
「覚悟の上ですわ! あえて無作法に振る舞い、王妃様の差し出すお茶を『ぬるいですわ!』と突き返す……これぞ究極の不敬!」
リペは意を決して、豪華な扉を潜った。
部屋の主、エレノア王妃は、優雅にソファに腰掛けてリペを待っていた。その美しさと威厳は、まさに「王国の母」そのものだ。
「リペ、よく来てくれたわね。さあ、楽にしてちょうだい」
「失礼いたしますわ、王妃様! ……ふん、この部屋、少々バラの香りが鼻につきませんこと!?」
リペは鼻を摘み、傲慢な態度でソファにドカッと座った。
(よし、初手で王宮のセンスを否定! 不敬ポイント、一気に加算ですわ!)
しかし、王妃は怒るどころか、扇子で口元を隠してクスクスと笑い出した。
「あら、正直な子ね。実は私も、夫が選ぶこの部屋の香料は少し強すぎると思っていたの。カイルの言う通り、貴女は本当に裏表がないのね」
「……は?」
嫌な予感がリペの背中を走る。
「さあ、リペ。このお茶を飲んでみて。東方の国から届いたばかりの、最高級の茶葉よ」
「……頂きますわ。……っ、なんですかこれ! 色が薄いですわ! もっと濃くて、ガツンと渋いお茶を持ってきなさいな!」
リペはお茶を一口飲むなり、カップをガチャンと机に置いた。
(これですわ! 王妃様のこだわりを否定! さあ、今すぐ『下品な娘は出ていきなさい!』と仰って!)
エレノア王妃は、驚いたように目を見開いた後、感動したようにリペの手を取った。
「……リペ、貴女、私の体調を気遣ってくれたのね?」
「……はい?」
「実は、最近少し胃が荒れていてね。濃いお茶を控えるように医者に言われていたのだけれど、王妃としての意地で飲み続けていたの。……貴女はそれを察して、あえて『下品』を装いながら、私に休憩を促してくれたのね?」
「違いますわ! ただの文句ですわ!」
「いいえ、隠さなくてもいいのよ。カイルから聞いていたわ。『リペの言葉は、氷のように冷たく聞こえても、その芯には太陽のような暖かさが詰まっている』とね。……本当、カイルには勿体ないくらいの良い嫁だわ!」
王妃はリペを抱き寄せ、その頬に優しくキスをした。
そこへ、絶妙なタイミングでカイル殿下が「母上、僕のリペを独占しないでください」と現れた。
「やあ、リペ。母上と意気投合しているようだね。君なら、母上の気難しい性格も一瞬で解きほぐすと信じていたよ」
「殿下! 私は今、王妃様に不敬を働いていたところですのよ!」
「不敬? ……ああ、なるほど。リペ、君は『王族といえども一人の人間である』という真理を、あえて対等な態度を取ることで母上に思い出させたんだね。その真っ直ぐな瞳……僕もまた惚れ直してしまったよ」
(もう、この親子、思考回路がコピペですの……!?)
リペは王妃に「今夜は泊まっていきなさい」と手を握られ、カイルに「明日の朝まで愛を語り合おう」と肩を抱かれ、完全に詰んだ。
「お嬢様。王妃様を『お義母様』と呼ぶ準備、始めましょうか」
セバスの無慈悲な声が、豪華な部屋に虚しく響いた。
「自由が……私の自由なパン生活が、王冠という名の重石で消えていく……っ!」
リペの悪役令嬢への挑戦は、ついに王室全体の「お気に入り」として認定されるという、取り返しのつかない事態に発展してしまったのである。
あなたにおすすめの小説
「親友の兄と結婚したら、親友に夫を取られました。離婚します」
柴田はつみ
恋愛
誰も、悪くない。
だから三年間、笑っていた。
親友の兄と結婚したエルミラ。
でも夫が振り向くのは、いつも親友が夫を呼ぶときだけ
「離婚しましょう、シオン様」
「絶対に、ダメです」
逃げようとするたびに、距離が縮まる。
知るほどに、好きになってしまう。
この男を捨てるには、もう少しだけ時間が必要みたいです。
断罪中、味方が多すぎて王子が孤立している件について
夏乃みのり
恋愛
バーンスタイン伯爵家の令嬢ラミリアは、魔力も剣の才能もない「ごく普通」の地味な女性。
ある日のパーティーで、婚約者であるジェラルド第二王子から「地味で無能で嫉妬深い」と罵られ、身に覚えのない罪で婚約破棄を突きつけられてしまう。
しかし、断罪劇は予想外の展開へ。
悪役令嬢は反省しない!
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢リディス・アマリア・フォンテーヌは18歳の時に婚約者である王太子に婚約破棄を告げられる。その後馬車が事故に遭い、気づいたら神様を名乗る少年に16歳まで時を戻されていた。
性格を変えてまで王太子に気に入られようとは思わない。同じことを繰り返すのも馬鹿らしい。それならいっそ魔界で頂点に君臨し全ての国を支配下に置くというのが、良いかもしれない。リディスは決意する。魔界の皇子を私の美貌で虜にしてやろうと。
婚約破棄された悪役令嬢ですが、面倒なので全部放置します
かきんとう
恋愛
王都の大広間に、どよめきが広がった。
天井から吊るされた巨大なシャンデリアが、何百もの蝋燭の光を反射し、きらきらと輝いている。その光の中心に立つ私は、妙に他人事のような気分で、その場の空気を眺めていた。
「エレノア・フォン・リーベルト! 私は貴様との婚約をここに破棄する!」
高らかに宣言したのは、第一王子であり私の婚約者でもあったアルベルト殿下だった。
周囲の貴族たちが一斉に息を呑み、次の瞬間には小声のざわめきが連鎖のように広がっていく。
――ああ、ついに来たのね。
悪役令嬢のはずですが、年上王子が幼い頃から私を甘やかす気でいました
ria_alphapolis
恋愛
私は、悪役令嬢なのかもしれない。
王子の婚約者としては少し我儘で、周囲からは気が強いと思われている――
そんな自分に気づいた日から、私は“断罪される未来”を恐れるようになった。
婚約者である年上の王子は、今日も変わらず優しい。
けれどその優しさが、義務なのか、同情なのか、私にはわからない。
距離を取ろうとする私と、何も言わずに見守る王子。
両思いなのに、想いはすれ違っていく。
けれど彼は知っている。
五歳下の婚約者が「我儘だ」と言われていた幼い頃から、
そのすべてが可愛くて仕方なかったことを。
――我儘でいい。
そう決めたのは、ずっと昔のことだった。
悪役令嬢だと勘違いしている少女と、
溺愛を隠し続ける年上王子の、すれ違い恋愛ファンタジー。
※溺愛保証/王子視点あり/幼少期エピソードあり
断罪の準備は完璧です!国外追放が楽しみすぎてボロが出る
黒猫かの
恋愛
「ミモリ・フォン・ラングレイ! 貴様との婚約を破棄し、国外追放に処す!」
パルマ王国の卒業パーティー。第一王子アリオスから突きつけられた非情な断罪に、公爵令嬢ミモリは……内心でガッツポーズを決めていた。
(ついにきたわ! これで堅苦しい王妃教育も、無能な婚約者の世話も、全部おさらばですわ!)
婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた
夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。
そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。
婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。
『お前が運命の番だなんて最悪だ』と言われたので、魔女に愛を消してもらいました
志熊みゅう
恋愛
竜族の王子フェリクスの成人の儀で、侯爵令嬢クロエに現れたのは運命の番紋。けれど彼が放ったのは「お前が番だなんて最悪だ」という残酷な言葉だった。
異母妹ばかりを愛する王子、家族に疎まれる日々に耐えきれなくなったクロエは、半地下に住む魔女へ願う。「この愛を消してください」と。
恋も嫉妬も失い、辺境で静かに生き直そうとした彼女のもとに、三年後、王宮から使者が現れる。異母妹の魅了が暴かれ、王子は今さら真実の愛を誓うが、クロエの心にはもう何も響かない。愛されなかった令嬢と、愛を取り戻したい竜王子。番たちの行く末は――。