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「……おーっほっほっほ! ついに、ついにこの時が来ましたわ、セバス! 見てごらんなさい、この殺風景な馬車の窓を!」
リペは、王都から遠く離れた山中を走る馬車の中で、狂喜乱舞していた。
先ほど、カイル殿下から「リペ、君をしばらく王都から離れた別邸へ移そうと思う」と告げられたのだ。
それはつまり、社交界からの追放! 実質的な監禁!
「殿下もようやく、私の悪女ぶりに愛想を尽かしたのですわ! あぁ、夢にまで見た『塔に閉じ込められる薄幸の悪女』ライフの始まりですわ!」
「お嬢様。その割には、馬車のサスペンションが最高級で全く揺れませんし、おやつに用意されたマカロンが王宮御用達のものですが……」
「そんなの、最後の晩餐に決まっていますわ! 監禁場所は、きっとジメジメした地下室か、風が吹き荒れる断崖絶壁の塔に違いありませんわ!」
期待に胸を膨らませること数時間。
馬車が止まった先にあったのは、エメラルドグリーンの湖畔に佇む、宝石を散りばめたような白亜の離宮だった。
「……セバス。あの、ものすごく豪華な建物は何かしら?」
「お嬢様の『監禁場所』、湖畔の離宮『レーヴ・ド・ラ・メール』でございます。ちなみに、庭園には世界中の珍しい花が咲き誇り、地下には最高級のワインセラーがあるとか」
リペが絶望(?)しながら馬車を降りると、そこには既にカイル殿下が、優雅にテラスで紅茶を飲んで待っていた。
「やあ、リペ。長旅でお疲れだろう? さあ、ここが今日から君の……いや、僕たちの『二人だけの城』だ」
「殿下! 話が違いますわ! 監禁というのは、もっとこう、鉄格子があって、食事は硬いパン一切れと水だけというのが相場ですわよ!」
リペはテラスに駆け上がり、カイルに詰め寄った。
カイルは微笑み、リペの腰をそっと引き寄せた。
「鉄格子? ああ、なるほど。君は外部の雑音から守られたいんだね? 安心して。この離宮は僕の精鋭近衛兵が三重に包囲している。君を連れ去ろうとする不届き者は、羽虫一匹通さないよ」
「それは守っているんじゃなくて、逃がさないってことですわよね!? これこそ監禁ですわ!」
「そうだよ、リペ。君を僕の愛という名の監獄に閉じ込める。……どうだい? 最高の贅沢だろう?」
カイルはリペの指先に口付けをし、熱烈な瞳で見つめてきた。
「食事も君の望み通りにしよう。……料理長! 今日から食事は『パンと水』だけだ! ただし、パンは今朝焼き上げた最高級小麦のクロワッサン。水は北の聖山から汲み上げた、美容成分たっぷりの炭酸水を用意してくれ」
「違いますわ! そういう贅沢なパンではありませんわ!」
「わかっているよ。君は『シンプルこそ究極の贅沢』と言いたいんだろう? 君のストイックな姿勢、本当に尊敬するよ。……さあ、リペ。夜は冷える。僕の部屋で、暖炉の火を見ながら温まろうじゃないか」
カイルはリペを抱き上げ、豪華な寝室へと運んでいった。
「あーっ! 降ろしてくださいまし! 私は罪人ですのよ! もっと冷たく扱ってくださいましーっ!」
「冷たく? ……そうか、君は『冷たい態度で焦らされる』のが好みなのかな。……難しい注文だけど、君のためなら努力してみるよ」
カイルはベッドにリペを優しく横たえ、耳元で囁いた。
「……リペ。君を、一生ここから出さない。……これで満足かな?」
「顔が! 殿下の顔が近すぎますわ! 全然冷たくありませんわよ!」
リペの叫びは、豪華な離宮の壁に虚しく反射した。
「お嬢様、お疲れ様です。監禁という名の『超豪華ハネムーン下見ツアー』、存分に楽しんでくださいね」
セバスはテラスから、幸せそう(?)な二人を眺めながら、自分用の極上ワインを注いだ。
リペの「悪役令嬢として罰を受ける」という野望は、カイルの「リペを独占して甘やかす」という欲望の前に、またしても完膚なきまでに叩き潰されたのである。
リペは、王都から遠く離れた山中を走る馬車の中で、狂喜乱舞していた。
先ほど、カイル殿下から「リペ、君をしばらく王都から離れた別邸へ移そうと思う」と告げられたのだ。
それはつまり、社交界からの追放! 実質的な監禁!
「殿下もようやく、私の悪女ぶりに愛想を尽かしたのですわ! あぁ、夢にまで見た『塔に閉じ込められる薄幸の悪女』ライフの始まりですわ!」
「お嬢様。その割には、馬車のサスペンションが最高級で全く揺れませんし、おやつに用意されたマカロンが王宮御用達のものですが……」
「そんなの、最後の晩餐に決まっていますわ! 監禁場所は、きっとジメジメした地下室か、風が吹き荒れる断崖絶壁の塔に違いありませんわ!」
期待に胸を膨らませること数時間。
馬車が止まった先にあったのは、エメラルドグリーンの湖畔に佇む、宝石を散りばめたような白亜の離宮だった。
「……セバス。あの、ものすごく豪華な建物は何かしら?」
「お嬢様の『監禁場所』、湖畔の離宮『レーヴ・ド・ラ・メール』でございます。ちなみに、庭園には世界中の珍しい花が咲き誇り、地下には最高級のワインセラーがあるとか」
リペが絶望(?)しながら馬車を降りると、そこには既にカイル殿下が、優雅にテラスで紅茶を飲んで待っていた。
「やあ、リペ。長旅でお疲れだろう? さあ、ここが今日から君の……いや、僕たちの『二人だけの城』だ」
「殿下! 話が違いますわ! 監禁というのは、もっとこう、鉄格子があって、食事は硬いパン一切れと水だけというのが相場ですわよ!」
リペはテラスに駆け上がり、カイルに詰め寄った。
カイルは微笑み、リペの腰をそっと引き寄せた。
「鉄格子? ああ、なるほど。君は外部の雑音から守られたいんだね? 安心して。この離宮は僕の精鋭近衛兵が三重に包囲している。君を連れ去ろうとする不届き者は、羽虫一匹通さないよ」
「それは守っているんじゃなくて、逃がさないってことですわよね!? これこそ監禁ですわ!」
「そうだよ、リペ。君を僕の愛という名の監獄に閉じ込める。……どうだい? 最高の贅沢だろう?」
カイルはリペの指先に口付けをし、熱烈な瞳で見つめてきた。
「食事も君の望み通りにしよう。……料理長! 今日から食事は『パンと水』だけだ! ただし、パンは今朝焼き上げた最高級小麦のクロワッサン。水は北の聖山から汲み上げた、美容成分たっぷりの炭酸水を用意してくれ」
「違いますわ! そういう贅沢なパンではありませんわ!」
「わかっているよ。君は『シンプルこそ究極の贅沢』と言いたいんだろう? 君のストイックな姿勢、本当に尊敬するよ。……さあ、リペ。夜は冷える。僕の部屋で、暖炉の火を見ながら温まろうじゃないか」
カイルはリペを抱き上げ、豪華な寝室へと運んでいった。
「あーっ! 降ろしてくださいまし! 私は罪人ですのよ! もっと冷たく扱ってくださいましーっ!」
「冷たく? ……そうか、君は『冷たい態度で焦らされる』のが好みなのかな。……難しい注文だけど、君のためなら努力してみるよ」
カイルはベッドにリペを優しく横たえ、耳元で囁いた。
「……リペ。君を、一生ここから出さない。……これで満足かな?」
「顔が! 殿下の顔が近すぎますわ! 全然冷たくありませんわよ!」
リペの叫びは、豪華な離宮の壁に虚しく反射した。
「お嬢様、お疲れ様です。監禁という名の『超豪華ハネムーン下見ツアー』、存分に楽しんでくださいね」
セバスはテラスから、幸せそう(?)な二人を眺めながら、自分用の極上ワインを注いだ。
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